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夏のボーナスが生活必需品に消える?「良くないインフレ」で貧困は進むのか


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1 貧困をなくそう
夏のボーナスが生活必需品に消える?「良くないインフレ」で貧困は進むのか

会社員の人にとって、夏は待ちに待ったボーナスの時期。株式会社ライボが実施した「2022年 夏ボーナス実態調査」によると、今夏のボーナス支給有無について、全体の70.0%が「支給あり」と回答しています。
本来であれば、普段はなかなか手が届かないものを買ってみたり、旅行をしてみたりなど、少し贅沢に使いたいボーナスですが、今の日本ではそうはいかないかもしれない事情が。今回は、日本が直面している“良くないインフレ”について見ていきましょう。

インフレとSDGsの関係って何?富裕国の中でも異常な日本

気候変動や、コロナウイルスによるパンデミック、ロシア・ウクライナ問題など、世界規模で起きた事象により、モノやサービスの価格が上がっています。このように、物価が上がるのがいわゆるインフレですが、この影響を受け、現在日本でもインフレ化が進んでいます。
インフレはモノやサービスの値段が上がると同時に、その貨幣の価値が下がることを意味します。例えば、100円で変えたおにぎりが200円になった場合、おにぎりを買うには2倍のお金が必要ということ。1円の価値が下がった=円安になったということになります。

インフレとSDGsの関係とは?

インフレが続いて価格が高騰すれば、生活必需品を買うのも厳しくなり、暮らしが苦しくなることは容易に想像できるでしょう。となれば、SDGs目標1「貧困をなくそう」の達成が脅かされます。
また、目標8「働きがいも経済成長も」は、「良くないインフレ」の影響を大きく受けます。かつては「デフレ大国」だった日本。デフレとは、モノやサービスの値段が下がり、貨幣の価値が上がることです。物価の下落によって企業の収益が下がるため、倒産する企業が出てきます。日本は長らくデフレによる不況に悩まされてきました。しかしそんなデフレ不況が、今回のインフレによって好転するのかと言われると、そうとは言い難いのが現状。その理由は、「賃金」にあります。

実は日本は、インフレにより物価が上がっても賃金が上がっていません。富裕国の中で、賃金の上昇率が上がっていない国は他にもあります。しかし、賃金自体が下がっているのは日本だけという衝撃的な事実。
現在、アメリカでも記録的なインフレが起こっていますが、同時に労働者の賃金も着実に上がっていっています。日本は、インフレによる物価上昇が起こっても、賃金が上がらないため、貧困がより加速していってしまう恐れがあるのです。

加速するこどもの貧困と格差

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本の子どもの貧困率(2018年)は13.5%。さらにひとり親家庭の貧困率は48.1%と、先進国の中でも最悪な水準だと言われています。今後、インフレによる影響と賃金の停滞により、家庭の貧困、子供の貧困の水準がさらに低下してしまう可能性があります。
一方で富裕層は、コロナ禍による娯楽支出の低下、株式市場や仮想通貨などの資産運用による貯蓄の増加により、インフレの影響はさほど受けないとされています。こういった現状により、経済格差がより広がっていくことも懸念されているのです。

サイボウズで「インフレ特別手当」が支給

良くないインフレの影響による人々の暮らしの負担が問題視される中、2022年7月にはクラウドベースのグループウェアや業務改善サービスを手がけるサイボウズ株式会社が、社員に「インフレ特別手当」を支給する取り組みを始めることを発表。国内勤務者には、なんと最大15万円が支給されるとのこと。

他にも、システム開発会社・ジョイゾーでは、は若い社員を中心に月1万円の「インフレ手当」を給与に上乗せして支給しているそう。給料のアップは簡単ではないが、できる限りのことはしたいという経営者の思いから実施されているようです。

サイバーエージェント新卒初任給を42万円に引き上げ

また、一時的な手当という形ではなく、賃上げに取り組んでいる企業も出てきています。2022年7月、サイバーエージェントは、2023年度の新入社員の初任給を42万円に引き上げることを発表。現在、大卒の平均初任給は約22万円程といわれているので、これはかなり高い水準です。不況の中でのこういった取り組みは、優秀な人材を集める大きなフックになり得ます。

海外では当たり前?アメリカ・フランスのインフレ給付金政策

日本においてはこれらはまだ珍しい取り組みであるように感じてしまうかもしれませんが、実は世界では珍しいことではなく、企業ベースではなく行政ベースでも対策が実施されている国もあるのです。2022年7月、アメリカのカリフォルニア州が、一世代最大1050ドル(約14万2000円)のインフレ給付金を承認。フランス政府では、2021年10月、2022年7月に、税・社会保険料を引いた手取りの月収が2,000ユーロ未満の国民に対し、一律100ユーロの「インフレ給付金」が支給を決定しています。

日本政府も新型コロナウイルス感染症を受けた経済支援策としては、住民基本台帳に記載されている者を対象に、1人あたり10万円を支給しました。先の参議院選挙では、インフレ手当を公約として掲げる政党も。インフレ対策は給付金のみで解決するとは言えず、懸念点もあるのが事実。しかし、インフレの影響やSDGsとの関係から目を背けず、声を上げられるときには上げることが、SDGs目標1「貧困をなくそう」、目標8「働きがいも経済成長も」などの達成にもつながっていくと言えます。

日本は現在、「良くないインフレ」の真っ只中にいます。ボーナスがすべて生活必需品への費用に消えてしまうかもしれない状況で、政府や企業、経済の動きから目をそらせないでしょう。過度に心配しすぎず、問題意識は常にもっていたいですね。

企画・編集/森川
ライター/継田