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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」地球温暖化の専門家・江守正多さんが解説 #前編

ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」地球温暖化の専門家・江守正多さんが解説 #前編

#RADIO

今年4月から新内眞衣さんがパーソナリティを務めるニッポン放送のSDGs 啓発番組 『SDGs MAGAZINE』。8月14日の放送は、目標13「気候変動に具体的な対策を」をテーマに、東京大学未来ビジョン研究センター教授で国立環境研究所上級主席研究員の江守正多さんをゲストに招いて、地球温暖化について深く掘り下げた。番組の前半ではSDGsとパリ協定の関係などについて解説してもらった。

エネルギーではなく知恵を使う

出演していたラジオを題材とした舞台「ON AIR ~この音をキミに~」の千秋楽を迎えた新内さんは、この舞台のワンシーンにもSDGsを感じる場面があったという。

「我が家の夏の過ごし方みたいなものをメールで募集するところがあって、そこで風鈴を使って涼をとるとか、昔からの知恵、風習の大事さを改めて感じることがありました」

散歩が好きで、普段から街中を歩くという新内さんは「打ち水をやっているところが多いなあと思ったんです。道が濡れていて、雨が降ったのかなと思ったら打ち水だったということがあったり、打ち水されているところを通ったりすると全然気温が違っていてびっくりします。エネルギーではなく知恵を使うというのも一つの手かなと思いました」とも。番組のパーソナリティに就いて4カ月。SDGsを身近に感じる場面が増えている様子だ。

江守正多さんに学ぶ気候変動の基本

そして、今回の放送でテーマとなったのが、そんな体験にも直結する目標13「気候変動に具体的な対策を」。この問題について深掘りするべく、江守さんをゲストに迎え、地球に今何が起きているのか、そもそも『気候変動』『温暖化』とは何なのか、話を聞いた。

【江守正多さん・プロフィール】
1970年神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院・総合文化研究科 博士課程修了。
97年から国立環境研究所に勤務し、現在は東京大学未来ビジョン研究センター教授、国立環境研究所地球システム領域上級主席研究員を務める。
専門はコンピューターシミュレーションによる地球温暖化の予測で、テレビ番組『世界一受けたい授業』などにも出演。国立環境研究所のYouTubeでは地球温暖化の現状の講義などを配信している。

新内 「よろしくお願いします。まず率直にお聞きしたいのですが、今年はとにかく暑いということと、雨も結構降っているなという印象なのですが、これは温暖化の影響と見ていいんですか」

江守 「ある年がすごく暑かったり、大雨が降ったりするのは、言ってみればたまたまです。昔から、たまに起きることですよね。だけど、世界的に温度が段々と上がってきているので、たまたま温度が高くなった時に、そのベースが上がっている分だけ余計高くなる。だから、記録的な暑さとか、記録的な大雨というのは、その背景に温暖化でベースが上がっていることがあると思っていいと思います」

新内 「確かに、昔から酷暑とか大雨などのニュースはありました。でも、温暖化がベースにあるからこそ、一番の頂点が高くなるということですね」

江守 「そう、頂点が高くなる。良い言い方ですね」

新内 「江守さんとしては、今の状況をどう感じていますか」

江守 「まあ、起きるはずのことがどんどん起きているなという感じです」

新内 「昔から予想されていたということですか」

江守 「基本的には平均気温が上がっていけば、暑い夏は記録的に暑くなる。簡単なことです。大雨に関して言うと、気温が上がると大気中の水蒸気が増えるので、水蒸気が多い分だけたくさん雨が降ってしまう。それで、記録的な大雨が起こってしまうということです」

新内 「暑さと雨もつながっている」

江守 「そうです。つながっています」

怖いほど一致する予測と現実

国立環境研究所に入って25年ほど地球温暖化の研究をしている江守さん。その研究分野は、2021年にノーベル物理学賞を受賞した米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員が始めたものだという。

江守 「国立環境研究所では、いろいろな研究をやっているのですが、僕自身はずっと地球温暖化の研究をしてきています。最初のうちはコンピューターシミュレーションです。コンピューターの中に地球の気候を再現して、いろいろ実験するんですけど、これは去年のノーベル賞を受賞された真鍋先生が始めた研究分野なんですね」

新内 「そうなんですね。実際にお会いされたこともあるのですか」

江守 「はい、お会いしたこともあるし、『おめでとうございます』と、メールもしました。その分野の研究をしばらくしていて、最近はそこから広がり、気候変動の話だったり、何かいろいろ首を突っ込んだりしています」

新内 「環境問題に興味を持ったきっかけは、何かあったのでしょうか」

江守 「環境問題というか、こうした地球規模の問題に最初に興味を持ったのは、高校生の時にあったチェルノブイリの原発事故ですね。その事故を見て、じゃあ日本の原発は安全なのか、危険なのかという議論が、その頃に起こったんです。ただ、それをテレビで見ていて、どっちが正しいか分からなかった。自分が専門家になって、分かるようになりたいと思って、大学に入って、研究テーマを探しているうちに地球温暖化と出会って、それでたまたま原発ではなく、地球温暖化の研究をやるようになったんです」

新内 「専攻も、その分野だったんですか」

江守 「教養学部の理科系の学科で、いろいろなことを勉強して総合的なことを考えられるような学科に行きました」

新内 「25年前から温暖化のことや環境のことを研究されていると、今と違うなと思いますか」

江守 「始めた当初から考えると、一つ違うのは温暖化自体がどんどん実際に進んで、世界中のみんなが分かるようになったということですよね」

新内 「研究した内容がどんどん現実になっていく・・・」

江守 「例えば30年前に真鍋さんが初めて本格的な予測をして論文を書いているんです。温暖化したら、こんなふうに温度が上がるという世界地図などを書いているのですが、30年間を経て実際のデータと予測を比べると、結構合っているんです」

新内 「それは怖いですね。予測されていることが本当に現実化されていってしまう未来が見えるということですよね」

江守 「そうですね」

新内 「個人的には温度もそうですけど、紫外線もどんどん強くなっている気がするんです。太陽が近くなっているわけでは・・・」

江守 「それはないですね(笑)。暑いから、そう感じるところがあるんだと思います。僕なんかも、最近は日傘をさすようになりましたから」

新内 「男性でも増えましたよね。街中でも結構見ます」

江守 「これから、それが当たり前になってくると思いますよ」

目標13とセットの「パリ協定」

その地球温暖化に関するSDGsの目標は、13「気候変動に具体的な対策を」。まずはこのターゲットを詳しく見てみる。

13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。

13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。

画像出典:SDGs CLUB

新内 「江守さん的には、この目標13をはじめ、SDGsについて思うことはありますか」

江守 「気候変動に関しては、この13とセットで、パリ協定というものを理解する必要があるんです」

パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み。1997年に定められた「京都議定書」の後継として、2015年にパリで開かれた、温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意された。これには、主要排出国を含む多くの国が参加。締結国だけで、世界の温室効果ガス排出量の約86%、159か国・地域をカバーするものとなっている。

江守 「SDGsは2015年に国連で決まったものですが、同じ2015年にパリ協定というルールが合意されたんです。SDGsの13.2には、それぞれの国が政策や計画を立てるとありますが、その中身はここに書いていないじゃないですか。それは、SDGsの後に決まったパリ協定に丸投げされているというか、そっちとリンクしているんです。その中身はパリ協定に任せるよ、という感じでSDGsの方は書かれていますね」

新内 「知らなかったです」

江守 「ですので、気候変動の話の場合はぜひパリ協定をSDGsとリンクさせて意識していただきたいんです」

パリ協定で、特に大事なものとして挙げられるのが、次のような世界共通の長期目標が掲げられている点だ。

※世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする

新内 「これって、難しいんですか」

江守 「まあ、簡単ではないですね。今、世界平均気温は既に1.1度くらい上がっているんです」

新内 「ということは、猶予は0.4度ということですか」

江守 「そうですね、1.5度まで0.4度です」

新内 「それはまずいですよね」

江守 「はい。で、1.5度というのはあと20年くらいで到達してしまうだろうと」

新内 「わりと、すぐですね」

江守 「これを止めないように、大変革を起こさなくちゃいけないというのがパリ協定なんです」

新内 「そもそも気候変動とか温暖化って、いつから問題視されるようになってきたんですか」

江守 「世界的な大問題だと認識されたのが30年前。1992年に気候変動枠組条約というのが国連でできた時です。研究者は、それより前から関心を持っていて、調べたりしていたんですけど、1988年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)という地球温暖化、気候変動に関して科学的な基礎を与え、世界中で書かれている論文を基にして今何が分かっているかということを世界の共通認識にする仕組みができたんです。言ってみれば、世界中の論文を全部読んで、全体として言えることを報告する。それができたのは1988年。その最初の報告書が出たのが1990年。そして、条約ができたのが1992年。その頃が、世界的に地球温暖化への認識が高まっていった時期ですね」

新内 「30年前くらいから問題視されているということですよね。そこから2015年にパリ協定ができて、さらに7年経っている。そこから、確実に温暖化は進んでいますが、これからどうしたらいいんでしょう」

江守 「温暖化が何で進むのかというと、温室効果ガスが大気中に増えているから。その一番、主なものがCO2(二酸化炭素)。そして、それが主にどこから出るかというとエネルギーから出るわけです。つまり、石炭・石油・天然ガスを燃やして、火力発電所とか、ガソリンエンジンの自動車だとか、家でガスを使うだとか、そうすると出てくるCO2が温暖化をさせています。先進国とかは温室効果ガスの排出が減り始めているんです。だけど、やっぱり新興国・発展途上国、まだ人口が増えている国では、これから工業化して、豊かになって、発電所が増えて、車が増えていく。そういう国は、どんどんエネルギーを使う量が増えているので、それを賄うために特に石油と天然ガスの消費が増えざるを得ないんです」

画像出典:IDE-JETORO コラム「第15回 地球温暖化をめぐり途上国は先進国と対立しているのですか?」

化石燃料の枯渇を心配する以前の問題に

新内 「石油や天然ガスも限りがある。それをどう使って、どう保存していけばいいかという問題もあると思うんです」

江守 「少し前まで、化石燃料は有限な資源なので無くなることを心配していたんです。しかしながら、パリ協定に合意して、1.5度に止めないといけないとなると、そのためには無くなるよりずっと手前で化石燃料を使うのを止めることを目指す必要があるんです」

新内 「ここ数年で、ガラッと考え方が変わったということですか」

江守 「パリ協定ができて、合意して、その意味を考えたときに、これは今まで化石燃料が無くなるのを心配していたけど、それよりずっと手前で使うのを止めないと、1.5度で温暖化は止まらないぞ、というのがみんな分かったということです」

新内 「ただ、使わないで良い方法なんてあるんですか」

江守 「CO2を出さないエネルギーに全部変えていくことですね。エネルギーの脱炭素化というのが、この気候変動問題の一番根本的な対策なんです」

新内 「この『SDGs MAGAZINE』をやり始めて凄く思うんですけど、本当に全部がつながっていますね。7月の放送では地熱エネルギーや風力、太陽光といったCO2を出さない再生エネルギーの話をしたのですが、それをちゃんと普及していく、広めていかなくてはいけないということなんですね」

江守 「基本的に全部それにしないといけないということです」

新内 「それは、何年後くらいに実現できるんでしょう」

江守 「あと30年です」

新内 「待ってください! 20年後に0.4度上がってしまうんですよね」

江守 「そうです。それだと1.5度にいったん達してしまうかもしれない。可能性は、どんなに頑張っても五分五分くらいなんですけど、あと30年ほどの間に世界中で化石燃料から全部を再生可能エネルギーや、一部原子力を使う国もあるかもしれないんですけど、そういうのに替えていって、大気からCO2を吸収していって、1.5度までもう一度下げていくということになります」

新内 「なるほど。段階を踏みつつ、良い方向にしていかないといけないんですね。ちなみに、プラス2度に達してしまうと、どうなっていくんですか」

江守 「2度を超えた途端に何かやばいことが起きて人類が絶滅するとか、そういう話ではなくて、1.9度だったら安全というわけでもない。1.5度という、その手前を目指しているわけですけれども、1.5度を超えたらゲームオーバーでもない。既に1.1度温暖化した現段階で、世界中で大変なことが起きているんです。日本にいると、まだ暑くてもエアコンがついているところにいればいいやと思うかもしれないし、大雨も自分が住んでいるところで降らなければいいかもしれないですけど、世界的に見ると直撃したところは本当に大変な思いをしているんです」

新内 「そうですよね」

江守 「これが0.1度上がるごとに、さらに深刻化していく。本当は0.1度でも低く止めたいんです。だけど、すぐには止められないので、1.5度という目標を設定したわけです。気温が上がっていくと、そういったさまざまな被害が徐々に深刻化していきます。それに加えて、例えばある温度を超えると南極の氷が不安定化してガラガラ崩れ始めて海面上昇が加速するとか、アマゾンの熱帯雨林が枯れるのが止まらなくなってしまうとか、ある温度を超えるとそれが始まるという閾値、スイッチみたいなものがあって、押したら止まらなくなると言われています」

新内 「えっ! 戻らなくなっちゃうということですか」

江守 「戻らなくなってしまうんです。そういうスイッチが地球上にはいくつかあって、ピッタリ何度かを超えると、どのスイッチが入るか、今の科学では分からない。だけど、温度が上がれば上がるほど、どれかのスイッチに確実に近づいていく。なので、それを考えても、できるだけ低い方が良いんです」

新内 「映画とかでそういうの、あるじゃないですか。それが現実化されるということですね」

江守 「そうなんです」

新内 「いやあ、怖いですね。今、ボタンを私たちが押すか否かの瀬戸際にいるということですか」

江守 「そうです」

懐疑論はなぜ起こるのか

ここで、新内さんが気になる話題として挙げたのが、温暖化への“懐疑論”。2017年6月、米国のドナルド・トランプ大統領がパリ協定からの脱退を表明した際に注目されたものでもある。

江守 「懐疑論・・・何か見かけるのはありますか」

新内 「『温暖化は地球のサイクル。今は気温が高いだけで、寒い時期が来る』みたいのは見かけたことがあります」

江守 「はいはい。ネットだと、それを当たり前に思っている人たちが結構いるんです。ネットって、自分と意見や認識が近い人とばかりつながりやすいじゃないですか。そうすると、あるグループの中では温暖化は人間のせいじゃないというのが常識になっているというような現象が起こりやすいんです」

新内 「でも、ちゃんと調べると温暖化は進んでいるんですよね」

江守 「温暖化は進んでいて、人間のせいであるということです。懐疑論にもいろいろなレベルがあるんですけど、分かりやすいのがトランプさんですね。トランプさんは、気候変動はフェイクニュースだとか言っていたんですけど、アメリカには組織的にそういう情報を出している人たちがいるんですよ。ビジネス上、温暖化対策をしてほしくない人たちがいて、そういう人たちは、みんなが温暖化は嘘だと思ってくれるような情報を、ものすごいお金をかけて発信しているんです」

新内 「いろんな情報があるからこそ、自分で取捨選択しないといけない」

江守 「そうですね。信用していただきたいのが、先ほども話したIPCCという国連の報告書です。この報告書は去年から今年にかけて一番新しいものが出て、僕もその執筆に参加しているのですが、そこには人間活動で温暖化しているのは疑う余地がないと書かれています。これは世界中の論文を基にして世界中の科学者が集まってコメントをもらって書かれた報告書です。そこに、そう書かれています」

新内 「では、懐疑論は嘘だということですね」

江守 「まあ、嘘ですね。モノによっては良いところをついているやつもあるかもしれないですけど(笑)」

新内 「基本ですけど、物事は両方の面を見ていかなくてはいけないということですね」

江守 「そうですね。あとは、どういう情報を信用するかという基準みたいなものを自分の中につくっていかなくちゃいけないですね」

パリ協定から懐疑論まで、幅広い話題で盛り上がった今回の放送。後半では、江守さんが監修に入っている『2100年の天気予報』や気候変動対策に取り組む上での考え方などに話が及んだ。

後編に続く


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