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レギュラー番組にリニューアルした『SDGs MAGAZINE』新内眞衣と学ぶ「ウェディングケーキモデル」視点からのSDGs①生物圏の課題


レギュラー番組にリニューアルした『SDGs MAGAZINE』新内眞衣と学ぶ「ウェディングケーキモデル」視点からのSDGs①生物圏の課題

新内眞衣さんがパーソナリティを務めるSDGsを楽しく、分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。これまでは月に一度の特別番組として放送されていたが、10月から毎週日曜午後2時10分~30分の週一放送へと“バージョンアップ”した。週一放送の初回となる10月2日のゲストは、日本における SDGs 研究の第一人者で「ミスターSDGs」こと慶応義塾大学大学院の蟹江憲史教授。番組の“引っ越し”に伴い、今回は改めてSDGsを基本から学ぶべく、「ウェディングケーキモデル」をもとにSDGsの全体像を解説してもらった。

週一回のレギュラー放送にリニューアル

『SDGs MAGAZINE』の週一レギュラー番組化を「毎週声を届けられるのはうれしいですね」と歓迎した新内さん。ゲストに「ミスターSDGs」こと蟹江教授を招き、改めてSDGsの基本を学んでいくこととなった。

蟹江氏は慶應義塾大学・大学院の政策・メディア研究科の教授で、専門は国際関係論、地球システム・ガバナンス。SDGs関連では、慶應義塾大学SFC研究所xSDGラボ代表、日本政府SDGs推進円卓会議など多方面で活躍している。番組出演は、新内さんが新パーソナリティに就いて初回の放送となった4月10日以来。前回の収録は仕事で米国に長期滞在中だったためリモートでの参加となったが、今回2人は初めてスタジオで対面を果たした。

新内 「日本に戻られて、いかがですか日本の状況は」

蟹江 「SDGsを巡る環境が、たいぶ変わったなという印象ですね。行く前は割とSDGsといえば良いことばかりという感じでしたけど、戻ってきたら批判的な声も大きくなってきているなと。やはり“やったふり”をしている人たちも増えてきているので、胡散臭い、嘘くさいと言う人たちが増えているなというのが、行く前と戻ってきた後の変化かなと思っていますね」

新内 「でも、有名になったというかなじみが深くなってくれば、肯定的な意見も否定的な意見も出てくると思うので、良い面も悪い面もあるのかもしれないですね」

蟹江 「そうですね。それだけ広がったということだと思うのですが、次のステップはしっかりと中身まで理解していただくということなんじゃないかと思います」

リニューアル初回はSDGsの基本に立ち返る

SDGsに対する意識の変化が起こる中、新内さんは「リニューアル初回ということで、初めてこの番組を聞いてくださっている方や、実はよく分かっていないかもという方に向けて、改めて分かりやすくお伝えするために、SDGsの概要から伺ってもよろしいでしょうか」と蟹江教授に依頼。すると、蟹江教授は今回の収録が行われた「9月25日」がSDGsにとって重要な日であることを明かした。

蟹江 「SDGsは2015年の今日、出来たんです」

新内 「えっ!確かにニッポン放送でも(国連のSDGs Global Weekに合わせた)SDGsのキャンペーンをやっていました。何でなんだろうなと思っていたのですが、そういうことだったんですね」

蟹江 「記念すべき日に収録させていただいています。SDGsは、この日に国連総会で国連加盟国193全ての国がコンセンサス、みんなが合意する形でできた目標です。2030年の未来の形を表しているといっていいものだと思います。17の目標があって、その下により具体的な目標年や数値目標が入ったターゲットというものがある。それを全部足すと169個になります。『SDGsとは何か』を説明するとしたら、それだけなんですね。17目標に169個のターゲットがある、と。目標だけの体系がSDGsというものです」

SDGsウェディングケーキモデルとは

4月10日の放送では、蟹江教授に「5つのP」という考え方からSDGsの基本を学んだ。
ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 「5つのP」って何?

今回は、また異なる指針からSDGsを見るため、蟹江教授が紹介したのが「SDGsウェディングケーキモデル」。スウェーデンの首都・ストックホルムにあるレジリエンス研究所の所長だったヨハン・ロックストローム博士(現ドイツ・ポツダム気候影響研究所所長)が考案した、SDGsの概念を表す構造モデルで、17の目標がそれぞれ大きく分けて3つの階層からなり、それらが密接に関わっていることを表す概念図が3段のウェディングケーキの形に似ていることから、この名が付いた。

新内 「一番下の層に生物圏、その上に社会圏、さらにその上に経済圏という3つの層で構成されています。これはどういうことを表しているのでしょうか」

蟹江 「ウェディングケーキ・・・今、3段のケーキって、若い人たちだとなかなか想像できないかもしれないですね。お父さんやお母さんが結婚式で使っていたような、ドンドンドン3つ並んでいるような感じのケーキです。ヨハン・ロックストロームさんという世界的に有名な研究者が考案したもので、元々はこの3段あるものを上から平面的に見ていたんです。ただ、そうすると分かりにくいということで、立体的にしようということになったんです。立体的に上に乗っかっているイメージで、このウェディングケーキモデルができたということなんです。
一番下の段、生物圏にはSDGsでいうと水の話(目標6)、気候変動の話(目標13)、 海の生態系(目標14)、陸の生態系(目標15)がある。そういったものがわれわれの生活の基盤を成していると。
その上に、われわれの社会が成り立っているということで社会圏がある。貧困(目標1)とか飢餓(目標2)、今パンデミックが来て大変な健康の問題(目標3)、教育(目標4)とかジェンダー(目標5)、エネルギー(目標7)、街づくり(目標11)、平和と公正(目標16)。社会というとなかなか難しいかもしれないですけど、要するに人と人との関係ですね。一番下が自然の話で、その上に乗っかって人と人との関係がある。地球環境がひどくなってしまうと、なかなか世の中がうまく回っていかないということです。
で、その上にさらにあるのが経済圏。われわれは経済を中心に回っているように思いがちだけども、実は地球の視点で考えるとすごく小さなもので、格差とかが経済によって生み出されていると、段々と社会全体が崩れてきて、地球もおかしくなってきてしまう。そういうイメージを表しているのが、この図です。一番上の経済のところは、経済に関する目標の働きがいと経済成長(目標8)、産業とイノベーション(目標9)とか、公平性の問題(目標10)、つくる責任つかう責任(目標12)。そういう3つの段階をウェディングケーキで表しているということです」

新内 「めちゃくちゃ分かりやすいですね」

蟹江 「地球のこと。人と人との関係のこと。そして、お金のこと。そういう3段階。それを実現するためには、真ん中にグサッと刺さっている軸が必要で、その軸がパートナーシップ。みんなで協力して問題を解決していきましょうということです」

新内 「一人一人の意識も大事だけど、結局はみんなと一緒にやっていかないと、ということですよね」

蟹江 「そうですね。みんなと一緒にやっていくことで、今まで考えられなかったような化学反応が起こって、新たな発想が出てきたりとか、イノベーションが起こったりとかする。そういうことが大事だといわれていますね」

「生物圏」の課題

新内 「その中から今回は環境、生物圏についてピックアップしていきたいのですが、今この環境、生物圏において具体的にどのような課題があるのでしょうか」

蟹江 「この夏、特にすごく大きな台風が来ましたよね」

新内 「多かったですね」

蟹江 「そこに象徴されていると思うんですけれども、エネルギーの使い方、資源の使い方によって、どうも地球がおかしくなってしまっている、地球温暖化が手の付けられないぐらいのところまで来てしまっているというのは、一つあります。ただ、実はそれだけではなくて、そもそもこのパンデミックの原因の一つとして人間と生物の距離が近くなり過ぎたということがいわれているんです。今まで生き物の中で起こっていた感染症が人間にうつって、地球の部分的で終わっていたものが、人がたくさん接触するようになったことで一気に広がってしまった。人間が開発によって、他の生き物の生態系に近づいてしまったとか、そういうことが関係しているんです。なので、生態系を守ろうということも環境の中では必要です」

新内 「最近SNSで地球の温度を図にしたものを見たんですけど、この10年20年で本当に高くなっているんです。それが温暖化や台風にも関わってくると思いますし、全部つながっているなと思うんです」

蟹江 「そうです。陸のものだけでなく、海のものも関係しているということなんですよね。海水温が上がってしまうと、プランクトン棲めなくなったり、逆に大量発生したり、異常な状況が起こってしまう。全部つながっているんです。つながっている一つの例が水です。蒸発して雨で降ってきたりするのだけども、その水の循環のパターンもおかしくなってきてしまっている。われわれの住んでいる周りの環境だけではなく、そこが地球全体とつながっているんです」

新内 「そもそも水がなくなったり、増えすぎたりすると、人間も住めなくなってきますからね。本当に一人一人が考えないといけない問題に直面していると、最近考えるようになりました」

蟹江 「おっしゃる通りで、例えば水が少なくなると、水を巡って争いが起きてしまう。アフリカとかで起こっている紛争の原因の一つが水だったりするんですよ。だから、本当にわれわれの生物の基盤としての地球という考え方ももちろん大事だけど、それだけではなく、今生きていくために必要な人たちもたくさんいるという問題なんですよね」

新内 「本当にSDGsの番組をやるようになって、ニュースとかでも答え合わせというか、ここで学んでいることが出てきたりして、結構びっくりするんです。もうここまで来ているんだ、こんなことが起こっているんだと思うことがあるので、いろいろと教えていただき本当にありがとうございます」

蟹江 「いえいえ(笑)。でも、本当に実はそうなる前に対策を取らなければいけなかったのに、もう近いところで感じられるようになってきてしまっているということが危機的といえます。SDGsを考えても、あと8年しかないんですよ、達成期限までに。非常に危機的な状況にある。そんな解決していかなくてはいけない目標が並んでいるのがSDGsということなんです」

新内さんは、今回の放送を通じて「生態系のお話から本当にいろいろなことがつながっているなと思いました。私たちが住む土台、地球のことなので、本当に真剣に考えていかないといけないなと思います」と、危機意識をより高めた様子。「何からしたらいいんだろうと、アタマでっかちになっちゃうかもしれないんですけど、本当にできることからやっていこうと思います」と言葉に力を込めた。

次回の放送では、引き続きウェディングケーキモデルを取り上げ、「社会圏」「経済圏」にまつわる課題に迫る。