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主人公が美男美女は差別?エンタメの「面白さ」と「正しさ」をポリコレから考える

主人公が美男美女は差別?エンタメの「面白さ」と「正しさ」をポリコレから考える

#TREND
  • ジェンダー平等を実現しよう
  • 人や国の不平等をなくそう

この世からあらゆる差別がなくなるのは正しいことだと思いますか。今、多くの議論を生み出しているのが「ポリティカル・コレクトネス(political Correctness)」。通称、ポリコレ。1980年代に欧米の白人至上主義を改めるべくアメリカの大学を中心として広まった思想です。多文化主義を良しとして、地球上に存在するあらゆる文化的価値観を認め合い、共存していくべきだという発想。今回は、このポリコレについて考えていきましょう。

日本でも積極的に推進されるポリコレとは

politicalは政治的なことを意味する形容詞、correctnessは正しいことを意味する名詞で、political correctnessは「政治的正しさ」と訳されます。SDGsの目指すものと似た部分があり、誰にとっても公正・公平な社会を実現するために必要な考え方です。日本国内でもこれが推進されている一例があります。経済産業省は、企業が取るべきアクションをまとめた「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を2018年6月8日に改訂しました。
それ以外にも企業の経営戦略としてのダイバーシティ経営の推進を後押しする施策をいくつも展開しています。多様な人材の活躍は、少子高齢化の中で、日本経済の持続的な成長を支える大切な要素です。お分かりのように、これからの日本の未来を明るくしていくためのダイバーシティ経営にもポリコレの思想は必要不可欠です。これからは、会社内での人種、性別における表現、服装規定、性的指向、宗教の選択に対してマイノリティを排除することなく、多様な価値観と共存することがさらに標準化されていくことでしょう。

これまで、ポリコレによって社会が変わってきた事例はいくつかあります。よく知られているのは、「保母」→「保育士」、「看護婦」→「看護師」、「スチュワーデス」→「フライトアテンダント」など、女性しか就くことのできない職業だとイメージされる呼称の変化です。
宗教的なところでは「ハラール」という言葉が認知されてきているのもポリコレの影響でしょう。ハラールとは、イスラム教を信仰するムスリムが食べられるものを指します。中央大学多摩キャンパスでは、留学生も含めた多くの学生に対応できるよう、2016年4月より、ハラール認証カレーの販売を開始。さらに2017年4月からは、日本ムスリム協会の認証を受けたカップラーメンやクラッカー、ビスケットの販売も行っています。
このように不特定多数の人々が行き交う場でポリコレの思想は拡大してきました。

ゲームにおける“過剰な?”ポリコレ問題

さて、国境を超えて親しまれる映画や音楽、そしてビデオゲームなどのエンターテイメント文化でのポリコレはどうなっているのでしょうか。特に最近話題になっているのが、ゲームにおけるポリコレ問題です。ポリコレを強く意識して制作されたゲームでは、美男美女がお決まりだった登場人物の見た目が、より親しみやすい風貌になっている、これまで男性だった主人公が最新作で女性になっている、LGBTQの恋愛描写が取り入れられている、白人以外の人種が主要なキャラクターに選ばれているなど多くの変化が起こってきました。
しかしそんな中、2020年に発売された『The Last of Us 2』では、上記のようなポリコレ配慮が見られたことで、前作のファンを中心にたくさんの反発がありました。過剰なポリコレへの配慮により、本来の作品の良さ、面白さがなくなってしまっているという批判が巻き起こったのです。
ゲーマーが集う掲示板では、
「ポリコレブームいつ終わるんや?もうそろそろええやろ」
「ポリコレ対策をしっかりしてるAPEX」
「ホグワーツレガシーはメインキャラは黒人しか選べないんやろ?もはや白人差別やん」

といった声が上がっています。

ポリコレ映画には理由が必要?

映画界においては、19世紀のフリーク・ショー(見世物小屋)を題材にした「グレイテストショーマン」や黒人女性をヒロインに起用した「007」がポリコレ映画だと言われることが多いようです。そのほかにもハリウッドの多くの作品を中心に、ポリコレを取り入れる動きが当たり前になってきています。
2023年6月に公開予定の実写版『リトル・マーメイド』では、赤毛で白い肌のアリエル役に黒人歌手のハリー・ベイリーが抜擢されました。ロブ・マーシャル監督は、あらゆる候補の中で、「我々はただ役にふさわしい俳優を探していただけ。彼女は際立った強さがあり、情熱的で美しく、頭が切れて賢い。」と語っています。しかし、Twitterでは以下のようなコメントがありました。
「いろいろなプリンセスがいる中でアリエルを黒人にする必要ってあったのかな?」
「多様性を求めるのも大事だけど、適材適所はあったんじゃないかな」
「ヒットするかは別として、万人受けはしないと思う」」
「リトルマーメイド自体はっていうかディズニー映画自体は好きだから実写化ってのは嬉しいけど、アリエルを黒人にするなら、黒人にする理由が欲しい。舞台が南の島だから、でもなんでもいいから。そこにポリコレ以外の理由がないから無理。」

ファンからすると、実写版の配役は原作に忠実に再現してほしいという声が多いようです。

ゲームや映画などのエンターテイメントにおいては、ポリコレが不自然かつ全面的に表れていると、プレーヤーや視聴者が違和感を感じざるを得ない状況になってしまいます。もちろん受け取る側の固定概念や先入観の強さにも原因はあります。ポリコレだけでなく、SDGsの考え方においても、全ての物事が公正で正しくある姿は、エンターテイメントやアートの世界にも優先的に存在するべきなのでしょうか。
また、いわゆるSDGsウォッシュのように、本質が伴っていない形だけの改変としてのポリコレが今後増えて行ってしまう恐れもあります。
いずれにしても、ポリコレ問題に対する議論はまだまだ尽きないでしょう。
あなたも、エンターテインメントとの向き合い方をこのタイミングで一度考えてみてはいかがでしょうか。

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