• トップ
  • 記事一覧
  • ジャパンハートがアジア小児医療センターの開設を発表「命の格差をなくす医療拠点をカンボジアに」
EVENTS & SEMINARS OPINION

ジャパンハートがアジア小児医療センターの開設を発表「命の格差をなくす医療拠点をカンボジアに」


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を
ジャパンハートがアジア小児医療センターの開設を発表「命の格差をなくす医療拠点をカンボジアに」

日本発の医療ボランティア団体・ジャパンハートは4月18日、カンボジアに新たな小児医療センター「ジャパンハートアジア小児医療センター」を開設することを発表しました。ジャパンハートは、開発途上国にて無償で医療を提供している国際医療NGOです。新たに建設される病院は、カンボジアのタクマウ市に予定されており、建設後は東南アジアの医療拠点となることが期待されています。しかし、そもそもなぜカンボジアには病院が足りないのでしょうか。今回は、新病院の発表とともに開催されたシンポジウムで、開発途上国との医療格差・現状について伺ってきました。

カンボジアの現状と新病院に込められた想い

ジャパンハートは「医療の届かないところに医療を届ける」を理念として掲げ、これまで20年以上もの間、東南アジアを中心に無償の医療提供を行ってきました。2021年には20,255件の治療を実施し、設立以来の累計では305,970件の治療を行ってきています。

しかし、まだまだ医療が行き届いていない現状があります。特に、内戦が長く続いたカンボジアでは、今でも医療格差が激しいことで知られています。たとえば、小児がん患者の5年生存率は先進国で80%とされるのに対し、開発途上国ではわずか20%に過ぎません。ジャパンハートの創設者である小児外科医・吉岡秀人さんは、「サバイバルギャップ」、いわゆる「命の格差」を限りなくゼロに近づけることを目指しているといいます。これはSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」にもつながる話です。命の格差をなくすには、病気の早期発見がカギであり、早めに見つけることで、開発途上国の生存率を20%から50%まで上昇させられます。

ジャパンハートは、2016年にカンボジアに最初の病院を建設してから、現在も医療支援を続けています。現在は日本人医師を含む90名のスタッフが勤務しているとのことです。4月18日のシンポジウムで、吉岡秀人さんは、東南アジアの現状について語りました。
「技術や医療が発展していく中、取り残されている人々がいることに気がつくことが重要です。たとえば、映画「火垂るの墓」のような状況でも、主人公二人を助けてくれる人は、きっとどこかにいたはずです。しかし、巡り会えなかった。誰かが気がついて手を差し伸べることで、少しでも居心地の良い世界を作ることができるのではないでしょうか。」

ジャパンハートが新たに建設中の「ジャパンハートアジア小児医療センター」は、カンボジアで高度な医療が必要な子どもたちを支援する病院です。カンボジアのタクマウ市(プノンペン付近)に開設され、2030年までには、アジアの高度医療拠点へと拡大することを目標としています。病院の整備購入に必要な額として集めるのは8000万円。5月より、新病院開設のためのクラウドファンディングを実施します。

途上国への医療支援が私たちにもたらす影響

第二部では、以下の出演者が「果たして途上国への医療支援は慈善活動のひとつに過ぎないのか?途上国への医療支援が日本にもたらす影響」についてディスカッションを行いました。

● 小児外科医/ジャパンハート創設者 吉岡秀人
● 国立国際医療研究センター病院小児科医師/小児血液・がん専門医/ 七野浩之
● 国際ジャーナリスト/拓殖大学大学院国際協力学研究科講師 竹内幸史
● ミュージシャン 岸谷香
● TWIGGY. 主宰/クリエイティブ・ディレクター 松浦美穂
● 現役医者芸人 しゅんしゅんクリニックP

生存格差を解決するには

司会を務めたジャパンハートのアドバイザリーボード・望月理恵さんが「生存格差を解決するための、特効薬のような解決法はないのでしょうか」と問うと、吉岡さんは「経済を発展させることです」と回答。経済が発展することで流通が活発化し、知識も広がると説明しました。また、医療のレベル向上はテクノロジーによってもたらされると考えており、経済の発展とテクノロジーの発展が医療の発展につながるとのことです。

「チャリティー活動」や「開発途上国の子どもの医療支援」の意義

今回、ジャパンハートのコミュニケーションボードメンバーとして新病院の広報活動などを行うこととなったミュージシャンの岸谷香さんと TWIGGY.主宰/クリエイティブ・ディレクターの松浦美穂さん。チャリティー活動や開発途上国の子どもの医療支援の意義について問われると岸谷さんは、東日本大震災の時に自身がボーカルを務めるバンド・プリンセス プリンセスを再結成したエピソードを述べました。そして、「自分にできることはちょっとでいい。ちょっとでいいと考えると、チャリティー活動への参加のハードルが下がると思う。」とコメントしています。

日本のNGOが海外に病院を作ることの意義

「日本のNGOが海外に大きい病院を作ることはよくあるのでしょうか?」と問われた国際ジャーナリストの竹内幸史さんは、次のようにコメントしています。「カンボジアで裁縫を教えている女性に話を聞くと、皆教育を受けていないため、真っ直ぐ切るの意味が伝わらない、真っ直ぐという概念が分からないと言っていました。その時、カンボジアで病院を運営するのは、非常に難しいことなのだと感じました。日本では、安倍元首相の時代から続いている医療輸出というものがあり、こうしたことは日本が医療に自信を持っているからできることだと思います。」また、小児血液・がん専門医の七野浩之さんは、「日本の小児外科は手術の経験を積める場が少ない」と日本の現状を指摘。「カンボジアなどに派遣し、現地の先生と一緒に経験を積んで、帰国して経験豊富な医者となることができれば、お互いに成長できる。教育という点では、経験が非常に大切」と述べました。

「ジャパンハートアジア小児医療センター」について

最後に、新病院「ジャパンハートアジア小児医療センター」の意義について問われた吉岡さんは、アフリカだと日本から距離があるため、大量の資金があっても成果が得られないという現状を述べました。「アジアでやるからにはもっと成果を出していきたい。現地の人と一緒に経験を積めば、その国の医学になる。」と意気込みを語っています。今後については「これからはたくさんの医療者を教育して展開していくでしょう。たくさんの医療者を育て、患者を救う。循環して、利益が日本に来て、また医療者を日本から派遣するサイクルを作りたい。」とのことです。

小さなことでも行動に移すことが大切

ミュージシャンの岸谷さんは、震災時「自分にできることはなんだろう?」とたくさん考えたと言います。自分は医療関係者ではないため、何をしても力になれないのではないか……。多くの人が行動をためらう中、岸谷さんはバンドを再結成し、少しでも人々の励みになればと考えたのだそうです。「自分には何もできないから」と諦めてしまうのではなく、「少しでいい」と考えて、実際に行動することが大切なのではないでしょうか。ジャパンハートでは、新病院の建設に向けてクラウドファンディングを開始します。まずは小さな額でも、行動に移すことで、救われる人がいるかもしれません。ぜひこの機会に、自身の行動を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

クラウドファンディングプロジェクトページはこちら