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その洋服、本当に必要?年間約51.0万トンの洋服が廃棄に。大量生産・大量消費の背景からみる課題とは

その洋服、本当に必要?年間約51.0万トンの洋服が廃棄に。大量生産・大量消費の背景からみる課題とは

#TREND
  • つくる責任つかう責任

先日7月4日は「お(0)な(7)お(0)し(4)」の語呂合わせから「ファッションお直しの日」。この日はお直しによって洋服や靴などを大切にする心を広めることを目的に制定されました。

洋服のお直しといえば、大切な洋服が破けてしまったりほつれてしまった時に、両親や祖父母に直してもらった記憶がある方もいるのではないでしょうか。しかし、ここ最近は「ファストファッション」が増えたことで洋服を「直す」ではなく「買う」ことが多くなった人も多いのでは。普段ではなかなか手の出せない高単価のハイブランドが発表したデザインが、1か月も待てば似たようなデザインの洋服が手軽な値段で手に入るようになったことで、消費行動に「高くて良質な洋服を大切に長く着る」から「安くて流行を抑えた洋服を短いスパンで買いかえる」と変化が訪れています。

しかし、そんなファストファッション、私が簡単に安く手に入れられる裏側には、考えなければならない様々な問題が潜んでいます。そこで今回は、ファストファッションの裏側にある過酷な労働環境や、大量生産から発生する深刻な衣料廃棄について考えていきましょう。

日本のアパレル業界は大量生産・大量消費の時代?

私たちが日常生活を過ごす上で欠かせない衣食住の「衣」である洋服。当たり前のように着ている今の服も、世界各国で生産が行われお店に並んでいますが、実はそんなファッション産業では環境負荷が大きく国際的な課題となっています。

SDGsの目標にも「12.つくる責任、つかう責任」の中で、生産者も消費者も地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとることが持続可能な世界にするための一つとされています。
その一方で、環境省の調査によると国内における衣類の新規供給量は計81.9万トンとされ、このうち廃棄される量は計51.0万トンと全体の64.8%を占めています。リサイクルされる量はうち15.6%、リユースされる量は19.6%と、ほとんどの衣類がどこも経由せずに廃棄されていると推計が出されています。

また、現代日本でのファストファッションの流行によって、海外輸入の増加が注目されています。日本繊維輸入組合の調査によると2022年における衣類国内供給量は前年比2.5%増加したとされ、うち輸入浸透率は98.5%へ上昇したことが発表されました。
つまり、日本で流通している服はほとんどが輸入されたものであり、言い換えると、現代日本のアパレル業界においては大量生産・大量消費の構造が主流になっているとも言えますよね。

「買う」ではなく「考える」が必要なファストファッションの労働問題

現代の日本でも2000年代中頃にファストファッションブームが起こり、安くて早い「ファストフード」から作られた造語として、今ではほとんどの人が聞き馴染みのあるアパレル用語になりました。

流行をいち早く取り入れ大量に生産し、短いスパンで大量に販売するのが特徴のファストファッションですが、利用者が増える一方で、驚くほど安い価格で手に入ることができる背景には、不正な労働問題が指摘されています。

世界のファストファッション市場の中でも主力企業として話題になった「SHEIN」では驚くほど安価に洋服を手に入れることができますが、イギリスの公共テレビ局による潜入調査によると、ビジネスモデルを維持するために1日18時間労働が頻繁にあり、休日は月にたった1日であることが報道されました。そんな中、2023年5月17日に俳優のアンジェリーナ・ジョリーが、ファッションブランド「アトリエ・ジョリー(Atelier Jolie)」の立ち上げを発表。年季奉公で長時間労働を強いられている難民や、正当な評価を受けてこなかった人々を迎えサポートをすることを声明し、たくさんの賛同の声が集まりました。

廃棄された衣料品の行方とは

流行りの洋服を低価格で購入できるメリットがあるファストファッションですが、私たちが購入し使い捨てた古着は、最終的に途上国やアフリカへ辿り着いています。
この背景には、運ばれた古着から利益を得るビジネス目的の他、難民への寄付としても送られていますが、ファストファッションが主流になった今、供給量の方が圧倒的に多く、ガーナでは輸入される3分の1以上の古着が廃棄されていると言われています。
廃棄される古着は途上国の埋立地に積み上げられているのが現状で、整備されていない土地に積み上げられることで下水にまで到達し、それが洪水の原因になる可能性があると問題視されています。

フランスでは2022年1月に世界初の「衣服廃棄禁止令」が施行され、売れ残った新品の衣類を廃棄すると罰金が課せられる取り組みが進んでいます。トレンドの服を便利に安く手に入れられるファッションも、実はその裏にはさまざまな問題が潜んでいる可能性があります。アプリを通して衣服に情報を確認することができる「PaperTale」が話題になるなど「ファッションお直しの日」というタイミングでもあった今こそ改めて考えていきたいですよね。

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