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部活やクラブ活動は大丈夫?猛暑から子どもを守れるか?

部活やクラブ活動は大丈夫?猛暑から子どもを守れるか?

#TREND
  • 気候変動に具体的な対策を

今年の夏もすでに多くの地域で熱中症警戒アラートが毎日のように発表されています。しかし、梅雨明けをした日本の夏本番はこれから。さらなる暑さ対策が必要となってきています。こうした中、サントリー食品インターナショナル株式会社は、気象専門会社の株式会社ウェザーマップ社との共同検証実験から、地面の照り返しの影響の差などにより、子どもの身長(80cm)で計測した気温が大人と比較して、+ 7℃程度になることを確認。周りにいる大人は改めてその危険性を意識する必要が明らかになりました。さて、今回は熱中症について改めて知るとともに、大人だけでなく子どもたちも安心して健康に過ごせる夏について考えていきましょう。

熱中症になりやすい年代や環境は?

総務省消防庁が出しているデータによると、7月10日〜7月16日の週は、前週の倍以上の搬送者数が出ており、特に東京は他の地域に比べ突出した数で、前年と比べても約4.5倍。全国を合わせると昨年比の約2倍となっており、今年は熱中症になる人が日本全体で劇的に増加している現状です。
熱中症には誰もが注意する必要がありますが、その中でも特に熱中症を起こしやすい年代は、男性では0〜4歳、15〜19歳、55〜59歳、80歳前後、女性では0〜4歳、80〜84歳がピークとなっています。地面の照り返しや体力的な面でも小さな子どもや高齢者は特に、熱中症に気をつける必要があることはよく知られていますが、夏に運動をする子どもたちはどうでしょうか。実際に7月7日、大阪市立小学校の体育の授業後、6年生17名の児童が体調不良を訴え、そのうち12名が救急搬送されました。また、高校や中学のクラブ活動中に熱中症で死亡する生徒の4人に1人は野球部員であることが日本スポーツ振興センター(JSC)の調査で分かっています。確かにこれまで何度も野球部員が暑さのせいで亡くなるというニュースが残念ながら報じられてきました。果たしてこうした事故がなくならないのは、まだまだ対策が足りないということなのでしょうか。

熱中症対策として夏の間はスポーツを禁止に?

そんな中、元プロ野球選手の松井秀喜さんが、「夏の甲子園は前半、後半のような2部制にすれば負担は軽減されるのではと感じますが、それも難しいのでしょうかね?」といったコメントを出し、メディアでは「松井提言」として賛成の声が挙がっています。さらに、400mハードル日本記録保持者で元陸上競技選手の為末大さんの「夏季期間において10-17時は18歳以下のスポーツ大会を禁止するのはどうか」というTwitterの投稿が話題になっています。為末さんがこのような投稿をした背景には、(公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」の「35度以上では、原則運動を禁止する(特に子供)」というガイドラインに従えば、すでに大会もトレーニングもできないことになっているからです。実際に2019年、ドーハ世界陸上選手権では暑さを避けるためにマラソンと競歩が深夜に開催されました。しかし、女子マラソンでは4割以上の選手が途中棄権する結果に。日中は40度を超え、夜でも30度以上の熱帯夜になるドーハ。選手達にとって命がけのレースとなったこの大会には、世界中から批判の声があがりました。こうしたことを踏まえて、東京オリンピックでは、暑さを理由にマラソンと競歩の会場が札幌に移されたことは記憶に新しく、この時は予想以上の暑さのために、女子マラソンの開始時間が急遽1時間繰り上げられることになりました。世界大会では、徐々に暑さ対策が当たり前になってきているようです。

学校での新たな取り組みとは?

元アスリートたちが続々と声を挙げるような深刻な事態で、いくつかの学校が暑さに対応するための新たな動きをみせています。
・猛暑により名古屋市が学校での体育の授業・部活動を中止
名古屋市では市立の小中学校、高校など415校で、「クーラーの効かない場所での保健体育の授業」や「運動を伴う部活動」、「環境省の暑さ指数が31以上の場合の水泳の授業」について中止するよう通知を出したということです。暑さ指数というのは、環境省の熱中症予防情報サイトで確認できる値のこと。名古屋市ではこれまで、暑さのために授業を中止したのは初めてとのことで、本格的に熱中症への措置を行うこととなりました。

・夏休みのプール中止が相次ぐ
夏休みと言えば学校のプールに通ったという人も多いのではないでしょうか。しかし、今年は、岡山県内の13市10町、香川県では6市2町の小学校が夏休み中のプールの解放を中止しました。中止をしていない小学校でも、泳げる時間が短縮されたり、プールサイドにテントを設営するなど、対策が講じられています。別の問題点として広島市では、猛暑で監視員をしてくれる人がなかなか集まらないということが発生しており、9割近くの124校が見合わせを決めたそうです。

夏の風物詩といわれてきたスポーツ大会や学校のプール、そして体育の授業や部活動。夏休みに合宿などで集中的に練習するチームもあることでしょう。しかし年々、増加する熱中症患者の数と比例して、それらの実施方法を改めて見直す必要が出てきています。その一因として、地球温暖化があると言われていますが、これは私たちひとり一人の生活によるところもあります。
気候変動とは異なりますが、昨年より全国小学生学年別柔道大会が廃止されています。全日本柔道連盟の声明によると、「昨今の状況を鑑みるに、小学生の大会においても行き過ぎた勝利至上主義が散見されるところであります。心身の発達途上にあり、事理弁別の能力が十分でない小学生が勝利至上主義に陥ることは、好ましくないものと考えます。」また、「将来大いに伸びようと思うものは、目前の勝ち負けに重きをおいてはならぬ」と1882年に柔道を創設した嘉納治五郎師範の言葉をもって、原点に立ち返るため、思い切って当該大会を廃止することにしたものであります、と発表されました。こうした動きも踏まえると子ども達を取り巻く環境は大きく変わってきているといえます。
子どもの健康で豊かな暮らしを守るためにも、直接的に関係のない人も他人事ではなく、こうした状況を知り、考えるということが大切ではないでしょうか。

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