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軽くて曲げられる?!次世代太陽電池の有望株「ペロブスカイト太陽電池」とは


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軽くて曲げられる?!次世代太陽電池の有望株「ペロブスカイト太陽電池」とは

東京都大田区の馬込第三小学校で1月31日から、次世代の太陽電池として注目される「ペロブスカイト」の実証実験がスタートしました。大田区が2023年度の「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されたことを契機に開始された取り組みで、発電した電気を使ってLEDを点灯し、夕方から夜間の街灯として活用されています。

今回は、再生エネルギーの需要が高まるなか、次世代太陽電池として大注目の「ペロブスカイト太陽電池」について理解を深めてみましょう。

従来の「シリコン系太陽電池」のさまざまな弱点

一度聞いただけでは覚えられなさそうな「ペロブスカイト太陽電池」、皆さんは聞いたことはありますか。“ペロブスカイト”とはもともと鉱物の名前で、発見者であるロシアの鉱物学者ペロブスキに由来します。

そのペロブスカイトの結晶構造を人工的に作り、太陽光のエネルギーを電気に変える発電技術が「ペロブスカイト太陽電池」です。私たちが太陽電池と聞いてイメージするものといえば、おそらくあの“パネル”ですよね。「シリコン太陽電池」と呼ばれ、現在普及している太陽電池の95%はこの「シリコン系」に分類されます。

シリコンを用いた従来の太陽電池は、寿命が長く発電効率が高いという利点がある一方で、コストが高く効率が悪いこと、発電効率が天候に左右されるため安定しないなどのデメリットがあります。

さらに、硬くて重い太陽光パネルは、住宅などの屋根や広い畑などに並べることしかできず、設置場所に制限があります。昨今は森林を伐採して設置し、大雨で崩れる被害も相次いでおり、反対意見も強まっているのが現状です。

薄くて、軽くて、柔らかい「ペロブスカイト太陽電池」って?

ペロブスカイト太陽電池は、シリコンを使わない「有機系」に属します。どんなものかというと、薄くて軽いフィルム状です。溶液を印刷技術のように“塗って乾かす”だけで簡単に作ることができるのです。しかも光を吸収する力が強く、低照度の光でも反応して発電するので、曇りや雨の日でも屋内でも発電が可能です。
軽くて薄いので設置場所も選びません。曲げられるという特性を活かして、さまざまな場所に使えると考えられています。例えば、車体やビルなどの建物全体に貼り付けて発電させる構想などがあるようです。

さらに、材料コストがシリコン太陽電池に比べてはるかに安価なことも大きな特徴です。ペロブスカイト太陽電池の主要原料はヨウ化鉛で、世界有数のヨウ素生産国である日本では、国産でまかなえるという利点もあります。
エネルギー変換効率は、シリコン系に追いつくレベルまで来ているというペロブスカイト太陽電池。従来の太陽光発電システムのデメリットをいくつか補えるものとして、国内のみならず、世界中で注目され実用化に向けて開発が進んでいる最新技術です。

そんなペロブスカイト太陽電池ですが、実は日本の研究者が開発した日本発の技術なのです!開発者の一人である桐蔭横浜大学の宮坂力教授はノーベル化学賞の有力候補ともいわれています。

課題は耐久性や大型化!今後の発電効率のアップに期待

聞けば聞くほど「すごい!」と思ってしまうペロブスカイト太陽電池ですが、課題もあります。ひとつは屋外での耐久性です。まだ実用化に至っていない次世代技術のため、今後改良が進んで開発されていくことでしょう。
ちなみに冒頭で述べた馬込第三小学校の実証実験では、小型の街灯にペロブスカイト太陽電池とセンサーを搭載して、温度や湿度、照度などさまざまな環境において発電量や電池の耐久性などを検証中です。

画像出典:「リコー/リコージャパン」リリース

水や酸素など外的影響による不安定性も課題のひとつといわれています。製造方法が確立していないため、大きな壁に貼り付けるような大面積のモジュールにおいての均一な品質にも大きな期待が高まっています。
また、ペロブスカイトの成分には、人体に有害な鉛が微量に含まれているため、取り扱いも厳密になってきます。鉛フリーのペロブスカイト太陽電池の開発も進んでいるのかもしれませんね。

自然災害時の電力確保にも期待されるペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池の実証実験は各地でスタートしています。KDDIでは、群馬県で2月から、電柱型の基地局に設置したポールにペロブスカイト太陽電池を巻き付ける形で“サステナブル基地局”を設置しました。
敷地面積の少ない電柱型の基地局でも太陽光発電が可能になったのは、「薄い・軽い・曲げやすい」という特長があってこそですよね。

今年1月1日に発生した能登半島地震の被災地では、停電から復旧するまでに約1ヶ月かかっています。さまざまな場所で発電可能なペロブスカイト太陽電池が、災害立国・日本の救世主になる日が近いかもしれません。再生エネルギーの活用が加速している今、2050年カーボンニュートラルの実現に向けても大きな期待が持てるのではないでしょうか。


執筆/フリーライター こだまゆき