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大手ゼネコンがいちごを栽培!?戸田建設が取り組む地方創生をテーマにしたSDGsとは

大手ゼネコンがいちごを栽培!?戸田建設が取り組む地方創生をテーマにしたSDGsとは

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パーソナリティの新内眞衣さんとともにSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送の『SDGs MAGAZINE』。2月25日の放送では大手建設会社、戸田建設株式会社の取り組みに迫った。

戸田建設が取り組む建築にまつわるSDGs

最近の放送では「アーバンファーミング」を推進するプランティオ、食品ロス削減につながる無人販売機「fuubo」を展開するZERO株式会社など、企業によりSDGsへの取り組みに注目してきたこの番組さが、今回は日本を代表する大企業による取り組みに注目した。大手ゼネコン、戸田建設株式会社の執行役員副社長イノベーション本部長の戸田守道さん、新技術事業化推進部主任の三浦玄太さんを招き、建設会社ならではのものや意外なものまで、さまざまな取り組みをクローズアップした。

新内 「今日は『企業が取り組むSDGs』ということで、この方々にお話を伺います。戸田建設の戸田さん、三浦さんです。よろしくお願いします」

戸田・三浦 「よろしくお願いします」

新内 「まずは、お2人が働いていらっしゃる戸田建設がどんな会社なのかをご紹介していきます。戸田建設は、1881(明治14)年、初代・戸田利兵衛さんが戸田方として請負業を開始した150年近い歴史を持つ建設会社です。地域開発、都市開発、不動産業務、さらには再生可能エネルギー等による発電事業など様々な事業を展開されています。最も得意とする建物種別の一つに教育施設があり、慶應義塾図書館旧館や早稲田大学の大隈講堂も建設しています。詳しくは戸田建設のホームページを見てください! そんな戸田建設のお2人にお越しいただきました。建設会社として、さまざまな形でSDGsに貢献されていると思うのですが、主に『建築』にまつわるものだと、どういったものがあるのでしょうか」

戸田 「建築に限って言えば、普通は重機に軽油を使ったりしていますけれども、それをてんぷら油などの廃油からつくった燃料を使っていたりしています」

新内 「なるほど。てんぷら油って燃料になり得るんですか」

戸田 「なり得ます。つくり替えていけばBDFという燃料になります」

新内 「へえ。その廃油って、どうやって集めていくんですか」

戸田 「家庭から集めてきます」

新内 「えっ?!」

戸田 「家庭から、市役所などと協力して集めて、うちの工場でBDFをつくるということをやっていました。だんだん使う量が増えてきて、自分たちでつくらなくても外でつくってくださる業者さんも増えてきたので、今は自分たちではやっていませんけれども、かつてそういう業者さんが世の中にない時代は自分たちでつくっていました」

また、環境省が令和5年度に新設した「自然共生サイト」では戸田建設の「筑波技術研究所」が認定されている。「自然共生サイト」とは、民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定するもので、いわば民間の保護区のようなもの。2030年までに陸と海にそれぞれ30%以上の保全地域を確保することを目標にしている。

戸田 「まさに『筑波技術研究所』では、お話ししたその再エネルギー関係の研究をしているのですが、『筑波技術研究所』そのものが環境にやさしい建物になっていこう、ということです。『ZEB(ゼロエネルギービルディング)』っていう言葉をご存知ですか」

新内 「ゼロ…」

戸田 「エネルギービルディング。要するに、エネルギーをなるべく消費しない、あるいは使う量以上に発電できる建物のことなのですが、そういうことを目指しています」

新内 「その『筑波技術研究所』の中には、壁面緑化がなされている建物があるんですよね」

戸田 「はい。『グリーンオフィス棟』っていう建物をつくったんです」

グリーンオフィス棟はZEBを達成した施設で、社員の執務スペースとして使いながら省エネルギーのみならず、新しい働き⽅に対応した室内環境の構築やカーボンマイナスを実現するためのさまざまな取り組みを実践している。

戸田 「4面全部が緑に覆われた建物で、蔦植物に囲まれています」

新内 「柱みたいなものに、蔦を植え付けているイメージですか」

戸田 「実は、下にポットがあって、そこから生えているんです。この蔦が季節によって葉っぱが落ちる『落葉の蔦』で、夏は葉っぱが繁って窓からあまり暑い太陽の光が射し込まなくなる。なので、エネルギーがカットされるんです。冬になると葉っぱが落ちるので熱が通りやすくなる、太陽の光が通りやすくなる。何も操作をしなくても、夏は涼しくて、冬は比較的暖かい空間が提供できます」

地方創生をテーマに始まったいちご栽培への挑戦

こうした建物にまつわるSDGsの施策はもちろん、戸田建設はSDGsにつながる地方創生にも関わっている。その一つが、SDGsに早くから取り組んでいる「先進自治体」北海道上川郡下川町での「夏のいちご」の栽培だ。

新内 「2020年から挑戦をしているとのことで、『地方創生に関する包括連携協定』も締結しているとか。この取り組みはどういったものなのでしょうか」

戸田 「まず、なぜこのようなことをやっているのか、ということなのですが…下川町はSDGsの先進自治体として非常に有名な場所で、どんな所なんだろうと思って一度、見に行きました」

新内 「副社長自らですか」

戸田 「ええ、私が行きました。町の方に案内していただいて、そのときに『実は北海道ではいちごをつくっている場所があるんですよ』っていうお話があったんです。ちょうど、うちに茨城で一生懸命イチゴをつくっているスタッフがいたので、『本当にできるのか』ということで農業の専門家を連れて、現地を見て、話を聞いてもらったんです」

新内 「それが三浦さん」

戸田 「はい」

新内 「下川町の場所は北海道でいうと、どの辺ですか」

三浦 「真ん中に旭川がありますけれど、そこから北に100キロほどいったところです。人口3000人くらいの町で、夏はプラスの30℃、冬はマイナスの30℃近くなります」

新内 「うわぁ!」

三浦 「年間の寒暖差が60℃くらいある町なんです」

新内 「結構過酷だと思うんですけど、その環境でいちごって育つものなんですか」

三浦 「夏につくるのがコンセプトの育て方をしているので、ちょうど6、7、8月くらいがいちごに適した気温になります。その時期を狙えばいけるだろう、と入っていった感じですね」

新内 「それが始まったのが…」

三浦 「2021年」

新内 「下川町を選ばれた理由はあるんですか」

三浦 「いちごに関して言えば、栽培に適した環境だったっていうのが一つですけど、『SDGs先進都市』っていうことで、第1回の『ジャパンSDGsアワード』を受賞するなど、町がすごく積極的に環境に対する取り組みをしているというところで、ずっと再エネとかをしっかりやってきているうちの会社とシナジーがすごく高いよね、というところもありました」

新内 「一見すると建設会社と農業って遠い存在に感じますけど、どうして農業に携わることが、スッとできるようになったのでしょう」

戸田 「われわれはもともと、茨城県常総市で開発事業をやっていまして、それはゼネコンとしての本業なわけですよね」

新内 「はい」

戸田 「その地元におられた農家さんに『園芸農業』の形でお返ししようということで、農業の『6次産業化』でいちごに注目した経緯があります」

「園芸農園」とは、都市部へ出荷することを目的として農業のことで、1次産業を担う農林漁業者が自ら2次産業である「加工」や3次産業の「販売・サービス」を手掛け、生産物の付加価値を高めて農林漁業者の所得を向上する取り組みを「1次産業×2次産業×3次産業」として「6次産業化」と呼ぶ。戸田建設では、従来の開発事業の枠を超えた新たな取り組みとして農業の6次産業化による地域活性化を⽬指すまちづくりを自治体などと連携しながら推進。そうした取り組みが、北海道の下川町でも活かされた形だ。「つくった先の事まで考えてつくる」という同社の想いを込めたいちご栽培の事例は女優、広瀬アリスさんが出演するテレビCMでも紹介され、注目を集めている。

戸田 「それを農業面で支えてくれていたのが、今日ここにいる三浦さんだったんです」

新内 「三浦さんは、農業に興味がもともとあったということですか」

三浦 「出身が農学部だったんです。なので、ゼネコンに入ろうとは正直全然思っていなかったんですけど、私の出身大学の農場を『戸田建設』が実際施工していた。学生の頃だったので、卒業論文を書きに建設中の現場に入っていって、現場所長に『今度から毎週のように来る三浦です』と挨拶をしたところ、『バイトすればいいじゃねぇか』という話になって(笑)。そこから入社する流れになりました」

新内 「建設会社として、いちごをつくるにあたってどういったサポートをしているのでしょう」

三浦 「技術の面でいうと、スマート農業という…」

新内 「最近よく聞きますね」

三浦 「はい。そのスマート農業の形で、それこそAIをかませて水やりをやったりしています。私たちが(そうした技術を)使っているところを地元の農家さんとかにも見てもらう。省力化や収穫量が上がることにつながっていくので、こういう機械を入れたら今までよりも収入が上がっていくんじゃないか…みたいなところで、いわばモデルルーム的な立ち位置で見てもらうっていうのが(サポートの形の)一つかなと思います」

新内 「はい」

三浦 「あともう少し進むと、再エネを積極的に導入した農業ですね。そうした新しいモデルを見てもらおう、と。農業って今まで灯油なり、化石燃料を寒い時に焚いて温度を確保して収穫するっていうのが、ごく当たり前の流れになっていたんです。下川町は林業がとても盛んな町なので、バイオマスの熱を使ったお湯の供給、いわば “でっかい地域床暖房”だと思ってもらえればいいのですけど、カーボンフリーな熱源を使って石油と代替するようなモデルをやっていこうという取り組みもしています。もともと自分たちで開発した太陽光パネルもありますので、それらを持ち込んで夏の本当に暑い時なんかは人間を冷やすためにそういうものを使ったりもしているんです」

農業と福祉~広がる可能性

新内 「環境以外の面で持続可能な社会に向けて、下川町で取り組んでいることとかはあるのでしょうか」

戸田 「農福連携、農業と福祉を連携させようというプロジェクトもあります。これも三浦さんが気付いた(笑)。『これ、できるじゃん』って思いついたんです」

三浦 「ちょうど今、建っているビニールハウスが町の運営している障害者支援施設の真隣なんですね。入居されている方が50人くらいいる施設なのですが、建設中は大きい音がするので『すみません』って挨拶しに行くと、そこの園長さんが『全然大丈夫ですよ〜』というような感じで受け入れてくれて、やり取りをしている中で『いちごをつくられるってことは、何か簡単な作業とかはないんですかね』と仰ってきてくださいました。そこから、出荷用の段ボールを折る作業とかなら取り組んでいただけるかな、みたいな話が持ち上がってきたんです」

新内 「なるほど」

三浦 「その支援施設の中の一つのプログラムとしてやってみますかということになり、昨年からまずダンボール折りをやってもらったり、社会と繋がる場の提供みたいなところでも、その幅をどんどん広げようとしたりしているところです」

新内 「これからのビジョンなども、あったりしますか」

戸田 「いちごの生産量が、まだまだそれほど潤沢ではないのですが、マーケットの方からは『もうちょっと出してくれ、出してくれ』って言われていて…。ちゃんと市場に出せるようなものは端からみんな売れてしまう状況なのですが、今年の夏は東京にも流したいと思っています。お約束した果物屋さんで販売していくぐらいしか量をつくれないですけれども、今年の夏には東京で召し上がっていただけるようにもなると思います」

新内 「今年は、もしかしたら『夏のいちご』を東京で食べられるかもしれないっていうことですね」

戸田 「ええ。おいしいものを…今度お持ちしましょうか」

新内 「いえいえ、買いに行きます(笑)」

そして、新内さんは最後に番組恒例の質問、「今、私たちができること」=「未来への提言」を聞いた

戸田 「次の段階として、自然をもっと理解してもらいたいなという気持ちでいます。SDGsとか地球温暖化とかが話題になっていますけれど、そのベースになっているのは、われわれがどれだけ自然というものをちゃんと理解できているか、自然というものを大事にできるかというところ。そこから始まるのだと思います。実は、下川には2003年に『FSC森林認証』をとったような立派な森があります。僕たちは建設業なので、そうした森から木材などを供給してもらっているのですけど、ちゃんと『トレーサビリティ』(生産から消費者に届くまでの一連の工程を記録し、追跡可能な状態にする仕組み)を持ったものを供給できないかな、というようなことを考えています」

新内 「本日は、ありがとうございました」

戸田・三浦 「どうもありがとうございました」

“戸田建設のSDGs”について掘り下げた今回の収録を終え、「自然をすごく理解しているからこそ、資材とか資源を大事にしている本当に素敵な会社だなと思いました。新しいことに挑戦するにも再生エネルギーとかを使い、自然と共存していく姿勢を感じました」と新内さん。下川町、そこでつくられたいちごを通じて、大手建設会社の知られざる側面に触れる放送回となった。

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