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プランティオ・芹澤CEOに聞く「アーバンファーミング」座学編 世界規模で拡大する“SDGsの特効薬”とは

プランティオ・芹澤CEOに聞く「アーバンファーミング」座学編 世界規模で拡大する“SDGsの特効薬”とは

#RADIO

パーソナリティの新内眞衣さんとともにSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。2月11日の放送では、「SDGsの特効薬」ともいわれる「アーバンファーミング」をさまざまな形でプロデュースするプランティオ株式会社の代表取締役CEO、芹澤孝悦さんをゲストに招き、世界規模で拡大している取り組みに迫った。農家が行う「農業」ではなく、一般の人が都市の空きスペースなどを使って行う都市農園を表すという「アーバンファーミング」を2回にわたって特集。まずは、その“座学編”だ。

前回の放送でフードロス削減BOX「fuubo」を取り上げた同番組だが、今回のテーマも「食」にまつわるもの。都市農園とも訳される「アーバンファーミング」について、芹澤さんに話を聞いた。

新内 「『アーバンファーミング』という言葉、皆さん聞いたことはありますか。一般の人が食べるために野菜を育てる活動のことなのですが、世界的な食糧安全不安や自給率の低下、環境問題を背景に世界規模で急拡大していて、『SDGsの特効薬はアーバンファーミングである』と国連も発表しているほどなんです。そんな『アーバンファーミング』を、スタジオでのトークによる“座学”、そして次回の“ロケ”と2回に分けて紹介していきます。アーバンファーミングを学ぶべく、この方にお話を伺います。プランティオ株式会社の代表取締役CEO、芹澤孝悦さんです。よろしくお願いします」

芹澤 「よろしくお願いします。こんにちは」

栽培のDX化と「アーバンファーミング」

新内 「今日は『プランティオ』のことをたくさん聞いていきたいんですけども、まず『プランティオ』はどういった会社なのでしょうか」

芹澤 「僕らは世界で初めてのデジタルファーミングプラットフォームを開発しているスタートアップで、ガイドシステムとか、リマインドシステムとか、そのシステムを搭載した農園とか、ベランダで活きるIoTセンサーとか、野菜栽培を始めようと思った方が、すぐにできる仕組みをつくっています」

新内 「すっごく横文字が多いですけど、これからちょっとずつ紐解いていきましょう(笑)。まず、芹澤さんに『アーバンファーミング』がどういったものかを伺ってもよろしいでしょうか」

芹澤 「『アーバンファーミング』っていうのは、一般的な農家さんによる野菜栽培を目的とした農業とは異なって、誰もが自宅や仲間と一緒に持つコミュニティファームで野菜を育てたり、食べたり、学んだり、時には生ごみをコンポストで堆肥にしたりとか、そういう都市における農的なライフスタイルのことを指すと言われています」

新内 「大きさ、規模とかは問わないんですか」

芹澤 「そうですね。ベランダのプランターでも『アーバンファーミング』でしょうし、ビルの上でも『アーバンファーミング』でしょう。特徴でいうと、従来の家庭菜園とかガーデニングとちょっと違うのは、食べることを目的にしていることです。例えば、海外の事例だと飲食店に持ち寄って食べるとか」

新内 「えーっ!」

芹澤 「むしろ『食べる』から考えて、じゃあどうやっていこうかっていう。まあ、生きるに近いような活動というところがありますね」

新内 「なるほど」

芹澤 「まあ、これからどんどん日本に浸透していくので、もっと定義は変わるかもしれませんが」

新内 「家庭菜園とは、ちょっと違う視点」

芹澤 「そうですね。キャンプとグランピングの違いみたいなものかな、と」

新内 「それは、微妙なニュアンスです」

芹澤 「そんな感じで、ちょっとアップデートしているものだと思います」

「アーバンファーミング」には一般的な農業とは違い「地域活性」「食農教育」「環境貢献」「食糧自給」「生物多様性」「ウェルビーイング」につながるといった6つの良い点があるといわれる。特に欧州では大量生産大量消費から脱却し、地産地消型へシフトすることで食品ロスを削減したり、生ごみを堆肥化して環境負荷が低い食糧を生産するなど、大きな効果をあげている。

プランティオのルーツは「プランター」

新内 「そんな『アーバンファーミング』なんですけども、実際に芹澤さんがこの仕事をするに辺り、お祖父様の代からのルーツがあるそうで」

芹澤 「そうなんですよ。実は私の祖父、芹澤次郎は1949年に『プランター』という言葉を発案しまして・・・皆さん、横長で土とか野菜を育てる『プランター』って、ご存知ですよね」

新内 「はい、もちろんです」

芹澤 「『プランター』っていうもの自体を発明した人物なんです」

新内 「えっ? 『プランター』って英語じゃないんですか、そもそも」

芹澤 「英語じゃないんですよね。渋谷区道玄坂上でできた、純然たる祖父が発案した和製英語です」

新内 「そうなんだ! もともと農業をされていた方なんですか?」

芹澤 「いえ、もともとは『芹澤プラスチック製作所』っていう、小さなプラスチックの会社をやっていて、笛とかハーモニカをつくっていたんです。戦後に祖母と一緒にリヤカーを引っ張って渋谷まで来て、都会にみるみる緑がなくなっていくのを見て、せめてベランダだけにでも緑をという思いを託して、あの『プランター』を発明しました」

新内 「じゃあ、プラスチックとベランダがかけ合わさって『プランター』になっているってことですか?」

芹澤 「そうです。当時プラスチックの樹脂、高密度ポリプロピレンっていうんですけど、これ自体がアメリカから出てきて、柔らかくも硬くもあり、ちょうどいい感じだってなったそうです」

新内 「軽いですしね」

芹澤 「軽いですし、割れない。これ、もしかして!?と思って、開発に着手したんですよ」

新内 「最初の頃、これはなんだ!?みたいになったりはしなかったんですか」

芹澤 「祖父から聞いた話ですが、きっかけとしては前々回の東京オリンピックの時に、渋谷の街を祖父の『プランター』が覆ったんです。たとえば公園通りのところとかに今も残っていますけど、それをあの当時、カラーテレビが出た時のカメラクルーが来て全世界で映って、日本のアグリカルチャーはムーバブルなんだと」

新内 「ムーバブル」

芹澤 「まあ、動かせるっていうことですね。鉢植えといえば昔は陶器だったので、重くて運べない前提でした」

新内 「確かに、はい」

芹澤 「これがエポックメイキングで、世界に広がったんです。ただ、一番の商流は、やはり小学校ですね」

新内 「やっぱり」

芹澤 「全国の小学校、中学校、高校に大普及しまして、ずっとシェアは100%でした」

新内 「シェア100%!?」

芹澤 「そうですね。まあ、安いものとか、コピーが出てくるまではですが」

新内 「私も『プランター』を使っていたかもしれないですね」

芹澤 「かもしれないですね」

新内 「本当にお世話になりました、その節は(笑)」

芹澤 「ありがとうございます(笑)」

新内 「私もお世話になってきた『プランター』なんですけども、そこに込められた思いはどういったものなのでしょうか」

芹澤 「戦後で、何をつくっても発明になった時代に、祖父は植物の生理や生育に特化したものをつくろうっていう思いが、すごく強かったんですよ。なので、例えば僕らの『プランター』って、普通の『プランター』と比べて、2.7ミリあって絶対に割れないんですね」

新内 「えっ、そうなんですね」

芹澤 「20年でも30年でも使える。さらに、土と水の割合を10対1にしないと、水が気化して上がってこないんです。そういったところも綿密に調べたり、植物の根が通りながらも水が吸えたり、水と空気が循環したりとか、非常にこだわり抜いて、地層と水脈の割合といった自然環境をミニマムに再現しようっていうところを目指して6年かけてつくったものなんです」

新内 「それって、地球のジオラマが『プランター』の中で完成するってことですよね!?」

芹澤 「はい、そうなんですよ。本物の『プランター』は、実はそれだけの仕組みと志向があります」

新内 「そんな綿密に! すごいですね。『プランター』に対する熱い思いをたくさん聞けましたが、そういったルーツを持つ芹澤さんが、どういった流れで今のお仕事をするに至ったんでしょうか」

芹澤 「僕はもともと新卒で入った会社はIT系のベンチャーでして」

新内 「結構、違いますね」

芹澤 「そうですね、率直に言うと、実は家庭菜園とかベランダ菜園みたいな世界が、当時はダサいなと思っていました」

新内 「うーん」

芹澤 「(その世界には)絶対行かないぞ、とむしろ思っていたんですよね」

新内 「そういうものですか」

芹澤 「はい」

新内 「そこから、どういった経緯で・・・」

芹澤 「2008年に父が倒れてしまいまして、僕が長男だったので継がざるを得なくなっちゃったんです。母は足が悪いものですから、父の仕事を手伝っていて、ある日実家に帰って、足の悪い母が足を引き摺りながら親父の会社に行っているのを見て、もう(当時勤めていた会社を)辞めようと思ったんです」

新内 「はい」

芹澤 「その時、ずっと温めていたのが、当時M2Mという言い方をしていた、今のIoTとほぼイコールのものをプランターと融合しようということ。創業メンバーでもある孫さん(起業家の孫泰蔵さん)に声を掛けていただいて、そこから創業したという経緯です」

プランティオによる「アーバンファーミング」とは

新内 「そんな株式会社プランティオがプロデュースする『アーバンファーミング』。具体的には、どういった農園を手掛けているのでしょうか」

芹澤 「僕の祖父の発明の本質はプランターをつくったことではなくて、皆さんに『食』と『農』がある生活を届けたかったということなんですよね」

新内 「はい」

芹澤 「農園っていうのは『食』と『農』に触れる機会の一端ではあるけれども、僕らはデジタルファーミングプラットフォームをつくっているんです」

新内 「デジタルファーミングプラットフォーム?」

芹澤 「はい。テクノロジーを使った農園が、僕らの一つの『食』と『農』の接点になるという考えでつくりました」

新内 「時代とともに『食』と『農』がある生活もアップデートしていくっていう意味では、やっぱりITは、大事なものなんですね」

芹澤 「そうですね。実は日本人の半分の方が、何かしらの方法で野菜栽培をしたい、もしくはしたことがあるっていうデータがあるんです。でも、7割の人が、やっぱり分からないからやめたとか、場所がないからやめたということになっている。『分からない』『場所がない』というのが、もう(やめる理由の)二大巨頭なんです」

新内 「はい」

芹澤 「これは園芸業界では、ずっと言われています。なので、僕らは最初にビルの上とかに場所をつくるということ、そして野菜を育てたいと思った時にガイドできるガイドシステムから着手したんです」

新内 「何も分からないですもんね」

芹澤 「何も分からないですよね」

新内 「何からやっていいか分からない。けど、何かやりたい気持ちは心の中にあるかも、みたいな(笑)」

芹澤 「はい。何かをやりたい気持ちはあるけど、その気持ちの総量とハードルがめちゃめちゃ合っていない」

新内 「確かに!」

芹澤 「くじけやすいやつなんです、これって」

新内 「でも、海外だと『アーバンファーミング』って流行っているというか、ポピュラーなんですよね?」

芹澤 「はい」

新内 「日本もそうなっていけそうなんですか?」

芹澤 「確実になると思います」

新内 「おおっ!」

芹澤 「これはもう、世界的なマクロトレンドなので、絶対にそうなります」

新内 「絶対! 断言してくれると気持ちいいですね」

芹澤 「断言します、断言します」

新内 「わあ、さすがですね! ちなみに『アーバンファーミング』は一般的な農業と違った良い点があるということなんですけど、どういった点なんですか」

芹澤 「一般的な農業は、いわゆる農家さんが野菜をつくるので、僕らが『農』に触れないじゃないですか。良くも悪くも距離があるんです」

新内 「はい」

芹澤 「ですが、『農』に自分たちで触れることができると、野菜栽培を通じてみんなでやることで地域が活性化したり、食糧自給だったり、環境貢献だったり、生物多様性だったり、ウェルビーイングだったり、そういう良いところがいっぱいあるんです。お金を出して野菜を買うのも勿論良いことですけど、触れることによって、いろんな価値が内包されているっていうところですね」

デジタルを架け橋に「食」と「農」をつなぐ

新内 「あと、農園だけじゃなくて、芹澤さんはアプリや技術も開発しているとか」

芹澤 「はい。先程も言いましたが、僕らはデジタルファーミングプラットフォームなので、野菜栽培のガイドをします。ベランダがある方は、僕らの開発しているガイドシステムがご家庭に届きますので、家で『アーバンファーミング』をすることができます」

新内 「うわぁ、それは始めやすいですね。だってそのガイドに従えば、一通りとりあえずはできるということですよね」

芹澤 「できます。どういうガイドがあるのかと言いますと・・・ここの近くの大手町にも僕らの農園があるんですけど、まずIoTセンサーが農園に刺さっていまして、土壌の温度計、水分計、外気温計、外湿度計、日照センサー、そしてカメラを備えています。世界で初めてのセンサーですね」

新内 「すごい! 大きいんですか、それは」

芹澤 「いや、コンパクトですよ」

新内 「コンパクトなもので、そんなにいろいろなものが測れちゃうんですか」

芹澤 「測れちゃいます。例えばバジルの場合だと、土の中の温度が累積で100度に達すると発芽するんですよ」

新内 「えっ」

芹澤 「今日15度、明日15度、明後日15度だと、合計で45度ですよね。これが100度に達すると発芽するっていう絶対真理がありまして、温度の積算で予測することができます」

新内 「そうなんですね」

芹澤 「はい。なので、土壌の温度計が積算スピードの遅い北海道に刺さっていれば、7日で芽が出るとか。世界で初めて、どこに刺してもちゃんとその場所に応じてガイドできるシステムっていうのが完成しているんです」

新内 「それを開発された」

芹澤 「開発しました」

新内 「すごい人ですね!」

芹澤 「いやいや、そうでもないですよね。好きでやっているだけなので」

新内 「大量のデータとかを学習させて、センサーに落とし込んで・・・みたいな感じってことですよね」

芹澤 「おっしゃる通りです。クラウド上で学習して、フィードバックするっていう仕組みですね」

新内 「うわぁ、すごっ! それなら初心者の人でも、やりやすいですね」

芹澤 「そうなんです。僕も泣く泣くITの会社を辞めて、親父の会社を継いで、『プランター』の会社だからプランター栽培をするじゃないですか。育て方は分からないから、当時だとブログとかを検索するんです。検索して、『あっ、これだ!』と思ったら、九州の例で、全然気象状況が違うってなるじゃないですか。だから、その場所に応じてガイドするのがすごく大事なんです」

新内 「そうですよね。環境によって全然違いますもんね、採れるものも」

芹澤 「そこでIoTが出てくるんです」

新内 「めちゃめちゃ納得しました。まさにガイドですね(笑)」

芹澤 「そうですね」

「持続可能な食と農をアグリテインメントな世界へ」をビジョンに掲げるプランティオが行っているのは、都心やビルに農園をつくること。こうした「アーバンファーミング」は、英ロンドン、米ニューヨーク、フランス、ドイツ、オランダ、デンマークなどの環境先進国では既にかなり進んでいるという。プランティオでは、そんな都市農園そのものを手掛けるだけでなく、「農」のDX化する次世代型アグリテインメントプラットフォーム「grow」を展開。6つの機能が1つになったIoTセンサー「grow CONNECT」や、スマートフォンアプリ「grow GO」などさまざまな技術を開発している。

新内 「今、心躍っているんですけど、私。それを実際に体験してみたいということで、次回はスタジオを飛び出して、この有楽町のニッポン放送からも程近い大手町にある芹澤さんの『プランティオ』がプロデュースする農園からお届けしたいと思います。ということで、次回も引き続き、よろしくお願いします」

芹澤 「はい、こちらこそ! よろしくお願いします」

「アーバンファーミング」の座学を終えた新内さん。次回は、いよいよ「農」のDX化の現場を見るべくロケへと出発する。

(ロケ編へ続く)

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