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東京全域が“遊び場”に。ポケモン GO10周年イベントが示す、持続可能な都市モデル


この記事に該当する目標
11 住み続けられるまちづくりを 17 パートナーシップで目標を達成しよう
東京全域が“遊び場”に。ポケモン GO10周年イベントが示す、持続可能な都市モデル

スマートフォンの位置情報を活用し、現実世界そのものを舞台としてプレイするゲームアプリ『ポケモン GO』。配信開始直後から世界的な社会現象を巻き起こし、累計ダウンロード数は10億を突破。世代や国境を越えて広がってきた同アプリが、2026年で10周年を迎えました。さてそんな『ポケモン GO』に関するリアルイベントが、5月29日~6月1日に東京都で開催されます。2月12日には、東京都、港区・江東区・品川区および株式会社ポケモンによる共同記者会見が行われ、イベントについての詳細の発表がありました。そこでこの記事では、共同記者会見で語られた内容を交えながら、リアルイベント「Pokémon GO Fest(ポケモン ゴー フェスト):東京」がもたらすSDGsの効果に着目してみました。特に、目標11「住み続けられるまちづくりを」、そして17「パートナーシップで目標を達成しよう」を中心に深掘りしていきましょう。

ポケモンたちと一緒に東京の魅力を発見!都市を“面的に使う”という挑戦

改めて、「Pokémon GO Fest:東京」とは、お台場海浜公園をはじめとする港区・江東区・品川区の広域を会場として『ポケモン GO』を楽しむリアルイベントのこと。これまで大型イベントといえば、特定エリアに来場者が集中する“一点型”が主流でしたが、それとは一味違うことにお気づきでしょうか。本イベントは、メイン会場を設けながらも、都内全域へと体験を拡張する設計が特徴的なんです。しかも、このイベントの開催開始日に先立って、5月25日から、この街中ゲームプレイに特化した世界初の「まち探検チケット」の実装もスタートするそう。島嶼部を除く東京都全域にエリアを拡大し、商店街や観光地を巡りながらゲームが楽しめます。この過去最大規模の取り組みを通して、人の流れは自然と分散する──観光消費を一点に集約するのではなく、都市全体へ波及させるモデルが垣間見えました。会見では、小池百合子知事が東京の緑地拡充や都市の魅力に触れながら、「ポケモンたちと一緒に東京の魅力を発見してほしい」と期待を寄せる場面も。また、港区・江東区・品川区の各区長が、商店街や歴史資源との連動施策を打ち出す考えを示していたのも印象的でした。

人口集中、観光公害、地域経済の偏在……そのほかにも、現代都市が抱える課題は少なくありません。そんな中で、本リアルイベントは、オーバーツーリズムを抑えて、地域経済へ広く機会を創出するきっかけとなることを感じさせます。ゲームというエンターテインメントを媒介に人流をデザインする取り組みから、“消費される場”から、“体験される場”へと変わりつつある都市の姿が想像できました。人の流れを意図的に分散させる都市設計は、混雑緩和や地域経済の底上げといった持続可能なまちづくりの観点からも今後一層注目されそうです。

官民連携が生む都市ブランディングの新たなかたち

もう一つの焦点である、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、会見に登壇した面々からも分かる通り。ナイアンティック、東京都、3区自治体、そして株式会社ポケモンが連携して実施される点が、大きく取り上げられるでしょう。グローバルIPと自治体が本格的に協働する枠組み──これは、都市政策の新しいかたちを示しています。テクノロジー企業、エンターテインメント企業、行政。立場の異なる主体が協働するからこそ、都市の魅力が多層的に発信されると考えられるのです。ちなみに「Pokémon GO Fest」は例年、世界3都市で開催されるそうで、今回は東京のほか、シカゴ、コペンハーゲンで開催予定なのだとか。大規模な国際的イベントで想定されるのは、世界中のファンが東京に来ること。そして、SNSで東京の街並みが発信されること。それらを通じて、“東京=楽しい都市”という印象が広がっていきます。自治体が連携して、観光・経済波及まで見据える……この動きは単なるイベント誘致ではなく、ゲームという文化の力を通じて都市の魅力を世界に発信する取り組み、いわば“ソフトパワー”を活用した都市ブランディングとも言えます。

“歩くゲーム”がつくるウェルビーイング

10周年という節目を迎えた『ポケモン GO』のこれまでの道筋を辿るとともに、東京から発信する新たな体験への期待に包まれながら、幕を下ろした会見。フォトセッション後には、小池都知事がゲームをプレイし、ポケモンをゲットする場面も。登壇者たちから起こる拍手、笑顔を見ていると、リアルイベントの盛り上がりを予感させるようでした。リアルだからこその人との交流、街を歩くことによる外出機会の創出。こうした体験は、都市空間に新たな関係性を生み出す可能性も感じさせます。

“遊び”が都市を持続可能にする?

プレイヤーが街に出て歩き、発見し、他者と繋がることができる『ポケモン GO』。その体験が今回、都市政策の文脈と重なりました。10周年という節目に打ち出された“東京全域”でのリアルイベント開催という発想は、次の10年に向けた新たな冒険の第一歩。エンターテインメントは、単なる娯楽にとどまらず、都市を動かす装置になり得るのか?東京を舞台にした今回の挑戦は、持続可能な都市の未来像を示す試みとして、今後の展開にも期待が高まります。


執筆/フリーライター・黒川すい