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剛力彩芽が慶大・中野泰志教授に聞く“気づき”がもたらす「住み続けられるまちづくり」

剛力彩芽が慶大・中野泰志教授に聞く“気づき”がもたらす「住み続けられるまちづくり」

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持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学べるニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』の第9回が12月4日に放送された。今回のテーマはSDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」。番組後半では、慶応義塾大学でバリアフリー・ユニバーサルデザインに関する研究を行う中野泰志氏をゲストに招き、剛力彩芽さんと慶應義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授が、「住み続けられるまちづくり」にかかわるバリアフリー・ユニバーサルデザインの意義、意味について話を聞いた。そこにあったのは“気づき”の重要性だった。

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剛力さんは「番組では毎回、SDGsにまつわる人や企業、SDGsに繋がる様々な取り組みなどを紹介していきますが・・・」と切り出し、中野氏を招き入れた。国立特別支援教育研究所の視覚障害教育研究部にて9年間勤務したのち、慶應義塾大学経済学部で心理学とバリアフリーを担当。その後、東京大学先端科学技術研究センターバリアフリープロジェクトでの、福祉のまちづくりにおける障害当事者参加と「気づき」に関する研究をはじめ、現在も慶應義塾大学にて包括的な障害学生の支援体制の樹立やバリアフリー・ユニバーサルデザインに関する研究を進めているバリアフリーや福祉の街づくりの専門家である中野氏。ニッポン放送の『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』にも、ゲストやアドバイザー的な立ち位置で参加している。

剛力 「まず障害のことやバリアフリーなどを研究しようとおもったきっかけは?」

中野 「学生時代は心理学を勉強していたんです。今も心理学を研究しているのですが、大学院を出て最初に就職したのが国立特別支援教育研究所というところで、そこでは障害のある子供たちの教育に関するさまざまな活動をやっていたんですね。そこから障害に関する研究とか、バリアフリーに関する取り組みを始めました。もう30年以上もずっと取り組んでおります」

剛力 「改めて先生が考える障害とは」

中野 「一般的に障害といった時に、目が見えないとか耳がよく聞こえないとか、自分の足で歩くことができないとか、そういったことを言うことが多いんじゃないかと思います。言い方を変えると、自分の体、精神の機能が平均的な人とずれていること、これを障害だって考えているケースが多いんじゃないかと思います。こういう考え方は個人モデルとか医学モデルと言うのですが、障害は個人の問題であって、治療の対象だという考え方なんです。これだと見えにくいとか、聞こえにくいとか、歩けないということが悪いことになるじゃないですか。そうなると、見えない人、聞こえない人、歩けない人はすごく肩身の狭い思いをしなくてはいけなくなる。障害のない人たちは、障害のある人を『かわいそうだな』と考えてしまうわけです。でも、全ての病気、けがが治療できるわけではないですよね。赤ちゃんの時は、心や体の機能は弱かった。そして、これから年を取ります。そうすると段々と見る力、聞く力が弱くなっていくわけです。これらは誰にも起こることです。病気やけがをしたことが悪いのか、年を取ることが悪いのかというと、違いますよね。何が問題なのかというと、病気の人やけがをした人、赤ちゃん、高齢者、さまざまな人のことを最初から考えないで社会がつくられたこと。これが障害なんです。社会の問題なんです。これ、障害の社会モデルと言うのですが、言い方を変えれば障害って見えないことや歩けないことではなくて、見えない人や歩けない人のことを考えずに建物や製品や制度やサービスをつくったりするような社会システムのつくり方に障害があると考えています」

剛力 「なるほど。言われると腑に落ちる。『確かに』と思いますね」

中野 「そう考えると、障害の『害』の字。ひらがなで書いたり、漢字もいろいろな種類を使ったりしますけど、あれって害虫の『害』の字をあてるのは人に対して失礼かなと思われがちです。でも、漢字でいいんですよ。『害』は社会のシステムの中にあるわけですから、当然これは漢字だと考えていただけるといいかなと思います」

蟹江 「逆に、SDGsが実現したら障害の『害』の字は『害』じゃなくなるかもしれない」

中野 「そうなんです。社会の中の『害』がなくなっていくわけですから。多様な人たちが社会の中で生きていくことができるSDGsの目標は素晴らしいですよね」

蟹江 「まさに誰一人取り残されないで、やらなきゃいけないという。それが普通の状態なんだということですね」

中野 「これは別に僕が考えたわけではなくて、国連で決議されて日本でも批准されている障害者権利条約の中にありますし、障害を定義しているWHO(世界保健機関)が2001年に定義を変えたんですけど、その中にも含まれているんですね。世界的な考え方だと知っておくといいですね」

剛力 「これを踏まえると、住み続けられるまちづくり」というのも全く意味合いが変わってきますね」

蟹江 「本来のあるべき状態に戻しましょうということですね」

剛力 「中野先生にとってゴール11とは」

中野 「僕の専門の立場からすると、ゴール11に掲げられている『包摂的』という言葉がすごく重要なんです。いろんな障害のある人たちをインクルードしている、包み込んでいくということが書いてあるわけですよ。具体的に見てみると、11.1には住宅のことが書いてあります。今住宅がどうなのかというと、目の不自由な人がアパートを借りようとすると断られることがあるんです。目の見えない人が火事を起こしたらどうしようとか考える人がいるんです。でも、安全に扱うことができるし、電磁調理器もある。偏見が邪魔をしていているだけなんです。車いすの人も、車いすを使える住居ってまだまだ賃貸では少ないので、住みたい場所があっても、なかなか借りられないという問題があります。みんな年を取って歩きにくくなるわけですよ。そういうことを考えたら、最初から車いすでも利用できるようにつくっちゃえばいいと思うんですよね」

蟹江 「まさに、まちづくりの話、家づくりの話ですね」

中野 「安全についてもそうですね。先日もホームからの転落事故がニュースになりました。国土交通省はずいぶん頑張っていますが、でもまだまだいろいろな事故が起こってしまっている。こういうものをなくしていくには、新しいものをつくるときは最初からホームドアをつくろうよとか、(『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』が推進する)音の出る信号機の設置もそうですよね。『全部つけましょう』となればいいんですが、今はついていないところにつけましょうという段階なので。ハードウェアだけではなくて、人の声掛けを含めたソフト的な対応もすごく重要だと思います。災害もそう。東日本大震災のときも障害のある人たちが多く亡くなったといわれます。ぜひSDGsで防災に関しても意識を高めていけるといいなと思います」

蟹江 「最初からやっていくというのはすごく大事ですね。コロナでいろいろ新しくしなきゃいけないのは良いチャンスかもしれないですね」

中野 「コロナで大変な時に、自分や身近の大変さは分かるんですが、障害のある人たちはどうしているんだろうと考えていけることが、すごく重要かなと思いますね」

これらを踏まえて、剛力さんはバリアフリー・ユニバーサルデザインの街づくりについて、中野氏に聞いた。すると、その実現に向けて、特に日本の課題が「意識上のバリア」など「物理的なバリア」以外の部分にあるのだ説明する。

中野 「日本についていうと、“物理的なバリアフリー”はすごく進んでいるんです。世界でもトップレベルじゃないかなと思います。しかし、その割には、その他のバリア、物理的なバリア以外のバリアフリーの取り組みというのはまだ日本はこれからかなと思いますね。“制度上のバリア”でいえば、入試だとか資格試験を受験する時に拒否される事例がある。“文化情報面のバリア”でいえば聴覚障害の人は字幕や手話、視覚障害の人は点字などが必要になるし、“意識上のバリア”というのがあるのですが『かわいそうだな』と思ったりとか、見下したりとか、われわれの態度や意識ですよね」

蟹江 「フランスとか行くと見かけるのが、階段でおばあちゃんが苦労していると、みんな荷物を運んだりといった光景です」

中野 「私の友人にも障害のある人がたくさんいるんですけど、海外旅行をすると障害が軽くなる気がするということをよく言っています。どこでも声が掛かる。声が掛からないときに日本に帰ってきたなと思うようです」

剛力 「それはどうすればいいんでしょう」

中野 「遠慮してしまうのもあると思うんですよね。どう声を掛けていいのかとか。でも、断られたら断られたでいいじゃないですか。『大丈夫』と言われたら『大丈夫なのか、良かった』と思えればいいわけですけど、それがなかなか難しい」

剛力 「席を譲って怒られたら『まだ元気なんだな』で良いということですね」

中野 「優先席って、座って良いんですよ。必要な人を待っているということで、必要そうな人が来たら『座ります?』と聞いて、『結構です』と言われれば大丈夫なんだということ。そう考えることができれば、もう少し気楽に、ソフト面が進んでいくと思うんです」

『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』でも「May I help you?」キャンペーンというものが行われており、「どうされましたか?」「お手伝いしましょうか?」と家族や周囲に声を掛けることの意味をラジオを通じて訴えかけている。

中野 「こうしたことを若者にパーソナリティの方が語りかけてくれると変わっていくのかなと思います」

46回目を迎える今年の『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』のパーソナリティはKis-My-Ft2とSixTONESが務める。同番組にアドバイザー的な立場で関わっている中野氏は「今年もSixTONESの皆さんにレクチャーをさせていただきました。皆さんお疲れのところ来ていただいて、いろんな体験だとか、子供たちの様子を見ていただいて学んでいただきました。素晴らしいですね」と話す。

剛力 「発信する側が知っていくのもすごく大事ですね」

中野 「リスナーの皆さんと一緒に、同じ目線で学んでいただいて、“気づき”をリードしてくださっているのがパーソナリティの皆さんだと思います。自分とは違って多様な人たちの存在に気づくことというのが大事。われわれって身近な人たちのことしか知らないんですよ。障害について普段なかなか考えることってないんですね。横断歩道をどういうふうに渡るんだろうということに気づくとか、建物に階段しかないときに車いすの人はどうするんだろうということに気づく。こうした、いろいろな“気づき”を重ねることで、それぞれの人の役割でできることがあると思うんです。もしデザイナーだったら、自分がデザインする時に単にかっこ良いだけじゃなく、いろいろな人のことを考えたデザインにしようとか、車いすの人が使ったらどうかとか、いろいろなことを考えていく。こうした“気づき”が全ての出発点かなと思います」

剛力 「やっぱりまずは気づかないと始まらない。SDGsの番組をやっていても、知らなかったことがたくさんあって、日常のこれもSDGsにつながっているんだという“気づき”がたくさんありました。誰かのために気づくって全てにおいて大事なことなんですね」

蟹江 「そういう意味ではSDGsは17の“気づき”のリストみたいなものですよね」

中野 「人はそこに気づいて発見できると、自分の発見だから自分のものになるんですよね。これ、とても大事なことなんです。それぞれの立場で気づいて、できることを広げていただけるといいかなと思います。気づかないと大切さは分からないので」

剛力 「私は今日、障害という言葉の“気づき”がありました」

中野 「“気づき”は感動を伴うので、自分の行動を変える上ですごく重要なことですね。知らず知らずにつくられてしまった障害を取り除いていくということかなと思います。そういう意味では『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』での募金というのも、すごく重要なんです。音の出る信号機が増えることもすごく大事ですし、その根本に視覚障害のある人の存在に気づいてもらい、いろいろな場面で『ここでは目の不自由な人ってどうしているのかな』と考えてもらうことがすごく大事なんです。そういうアンテナを張っている人が増えてくると、最初の話にあったように声が掛けられるようになる。そういう意味では『ミュージックソン』の果たしている役割は、すごく大きいのかなとも思います。特にパーソナリティの皆さんが自分の言葉で語りかけてくれることが重要かなと思います」

剛力さんは、最後に出演者にメッセージを求めた。

中野 「ぜひみんなで力を合わせて、このSDGsの17のゴールを達成できるように、社会を変えていきましょう。多様な人のことを認めて、誰もが普通の生活ができる社会を目指していく、これが包摂という言葉で表現されていることじゃないかと思います。そのためには一人一人の行動が変わることが大切です。私の好きな哲学者、林竹二先生は『学んだことのたった一つの証しは変わることである』という言葉を残しています。ぜひ、この放送を聞いていただいた皆さんには、今の瞬間から行動を変えることで学んだことを示していただけるといいかなと思います」

蟹江 「最近気づいたのですが、SDGsというのは、これまで言ってきた『未来の形』から『未来の常識』に変わり始めてきたんですよ。常識にたどり着くまでに、気づくというところからいろいろ始まる。多様性ある社会が常識だし、住み続けられるまちづくりがあるのが常識。そこに進むために、今ある常識を打ち破ることが大事だなと改めて思いました」

2人の言葉に、剛力さんも感銘を受けた様子で「気づくということが結果、SDGsにつながることがたくさんありました。いろいろなことが腑に落ちた、すっと何かが抜けた感じがすごくしていて、今日からできる行動を小さなものでもしていこうとすごく思いました」とうなずいた。そして「まず、声を掛けてみないと何も変わらないし、始まらない。そこから私も始めていければ」と小さな、しかし大きな一歩を踏み出すことを誓った。

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