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剛力彩芽と学ぶSDGs コロナ禍で浮き彫りになるゴール3「すべての人に健康と福祉を」と8「働きがいも経済成長も」

剛力彩芽と学ぶSDGs コロナ禍で浮き彫りになるゴール3「すべての人に健康と福祉を」と8「働きがいも経済成長も」

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持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学べるニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』の第10回が1月8日に放送された。今回のテーマはSDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」とゴール8「働きがいも経済成長も」。女優、剛力彩芽さんが、明治大学政治経済学部准教授で経済学者の飯田泰之氏とともに、コロナ禍で改めて両立の難しさが浮き彫りになる2つのゴールの関係性を紐解いた。

新型コロナウイルスの急激な感染拡大により、昨年4月以来2度目となる緊急事態宣言が1月8日に発令された。その当日に放送された同番組。剛力さんは「コロナの『第3波』に見舞われる中、今一番考えさせられる2つのゴール」として、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」とゴール8「働きがいも経済成長も」を今回のテーマに挙げ「例えば時短営業は働きがいや経済成長にはマイナスになってしまうかもしれない。でも、健康は何より大事。この両立の難しさが改めて浮き彫りになっている中で、この2つについて、じっくり考えていこうと思います」と切り出した。

この問題を考えるに当たって、有識者ゲストとして招かれたのが明大政治経済学部の飯田准教授だ。日本経済・ビジネスエコノミクス・経済政策・マクロ経済学を専門としており、ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」(月~金、前6:00~8:00)にも出演中の飯田氏は、まず経済学者の立場からSDGsの意味合い、自身との関わりについて語った。

飯田「ここ数年、それこそコロナの少し前から急激にSDGsへの関心が高まってきています。これまで発展途上国や国際的な目標は、どちらかというと行き過ぎた経済成長を止めるほうに向きがちだったのですが、経済成長を止めてしまうと問題解決のためのお金が得られない。だから、サステナブル(持続可能)な成長のゴールが必要というのが、非常に新しいコンセプトとして注目されているのだと思います」

剛力「ある意味、コロナでより注目が高まっている」

飯田「コロナ禍でビジネスのサステナビリティが多くの業界で問題になってきているところだと思います」

剛力「どんな状況でも持続可能であることは大事なことですものね。きょうは、そんな飯田先生にお話を伺いながら、進めていきたいと思います」

まず、剛力さんが飯田氏に尋ねたのがゴール8「働きがいも経済成長も」について。このゴールは、以下のようなターゲットで構成されている。

剛力 「難しいですよね。純粋に、このワードは。働きがいが経済成長につながることは分かるのですが・・・」

飯田「これは、まさに資本主義、現代的な意味での経済活動が始まった時からの大きな問題で、例えば産業革命初期のイギリスでは10歳未満の労働力というのが重要な役割を果たしていました。当時は炭鉱での労働がすごく重要で、炭鉱の狭い坑道には子供のほうが入りやすいから。そこで、子供に一日20時間近く労働させるなどして、その死亡率も特別に高かった。そうした問題を先進国は一つ一つ解決していったわけですが、ここで大きな問題となるのが経済がグローバル化していったときに、国際企業はまだ所得が低い国などで、あまり熟練を必要としない、教育を必要としない仕事をアウトソースするようになる。先進国の中では悲惨な児童労働がなくなったとしても、それは見えないところに押し付けただけなんじゃないか。より働きがいのある仕事だったり、子供への充実した教育だったり、これらは他の目標とも通じるものなんです」

剛力 「正直、日本だけにいると見えてこないことですが、確かに私たちがどこかの国の子供たちを働かせてしまっている可能性もあるということですね」

飯田 「私たちが使っている製品は、少数民族に強制労働をさせて作られているかもしれない。ゴール8は、そういう企業の製品を買うのはやめよう、発注するのはやめようという行動にもつながる目標であるわけです」

剛力 「大量生産の裏には、もしかして強制労働があるかもしれない」

飯田 「一方で、もう一つ重要なのは、もっと働きがいがあって稼げる仕事に途上国の人たちが就いてくれたら、先進国にとっては消費者が増える、お客さんになってくれることにもなるということ。これもサステナビリティを考える上では、重要ですね」

飯田氏の話しを受け、剛力さんが着目したのがゴール8のターゲット5にある「人間らしい仕事」という文言。「誰もが人間らしくというワードが重要なんだと思います」とうなずいた。また、飯田氏は先進国特有の問題として「強制労働ではなく、相対的な格差の問題というのが働き方を非常に苦しいものにしてしまっている」とも強調した。

飯田 「日本では特殊な状況を除くと飢えて死ぬということは、あまり考えづらい。文字通りの強制労働は法的に取り締まられているのだけれど、豊かさの中の貧困といいますか、豊かな人はどんどん豊かになっていくのに、なぜ自分だけこんなに苦しいんだろうという意識が働きがいや生きがいを失わせたりする原因になり得るんですよね」

剛力 「それは、どうしたら解決できるんでしょう」

飯田 「一つの解決への提案は、より多くの人に安定的な職、働きがいのある職をということになる。その一方で全員が全員、仕事中心の生き方をしろというものでもないでしょう。人によっては、ある程度生活を成り立たせるお金を持ったらあとは自分の趣味の時間、家族との時間に使いたいという人がいてもいい。他方でバリバリ稼ぎたいという人がいてもいい。それぞれ、余裕のある生活が可能な社会というのが先進国の場合は求められています」

剛力 「誰もが働くことに対して生きがいを感じているわけではないですからね」

また、先進国のおいて働きがいをもたらすものとして「副業」も見逃せない要素だと飯田氏は説明する。

「先進国の中で注目されているのが副業です。副業は、これまでメインの仕事があって、それに付け足しでアルバイトとかフリーで仕事をしてみるとかがあったのですが、これを発展させた形として最近注目されているのが“仕事の複線化”です。添える仕事ではなく、複数の仕事を走らせる。例えば、私の知り合いで醤油をつくる醸造の仕事を家業としてやってきて、その一方でNPOの理事長として街づくりの仕事をしている人がいます。収入としては本業の方がやや多いけれども、NPOの収入もしっかり確保されている。実は、2つ仕事があることで一方の仕事の息抜きになるということもあります。仕事でつらいことがあったときに、もう一つの仕事で気を抜けるという面もあるんです」

剛力 「ただ、まだ日本では一般的な会社は副業禁止というイメージが強いです」

飯田 「そうですね。ただ、副業によって得られることも多いんじゃないかという考え方もあります。自分がやったことがないことをすると、驚くような発見があったりする。例えば、ある業界では何十年も当たり前のようにやってきたことが、自分の業界ではすごく新しい試みだというケースって実際にあるんです。トヨタの在庫管理のシステムは以前からアメリカのスーパーマーケットで方法だったといわれます。しかし、スーパーのバックヤードと自動車工場はあまりにも遠いので、なかなか結び付かない。それを初めて結びつけたのがトヨタなんです。あとは、ファストフード等で働くとシフト管理の仕方が分かる。アルバイトをどうモザイク状の勤務時間から組み合わせていくかという時のコツみたいなものとか、結構得るものがあったりする。こうした効果を見て、むしろ企業が積極的に副業を推していくというのも、今後必要なんじゃないかと思います」

剛力 「凝り固まっていたところが新しくなったら、それはそれで経済は回っていきますね」

飯田 「新しいことを始めたり、新しい工夫を始めたりするのは、ちょっと楽しいじゃないですか。小さいもので良いので、たくさん積み重ねていくという働き方がこれからの先進国には必要でしょう」

剛力 「副業でメインのお仕事がおろそかになってしまうんじゃないかという懸念が言われますが、結局メインに役立つことを考えながらできることもあるということですね」

飯田 「まさに女優さんのお仕事なんかは、何から刺激を得るか分からないところがあると思います。ただ、それはどこの業界も変わらないことですよね」

剛力 「ゴール8のターゲット5では若者の就職や雇用についても言及されていますが、コロナ禍でJALが新規採用を見送り、観光業でも人員削減など大きな影響が出ています」

飯田 「観光業って、人手がかかるので、ものすごく雇用を吸収する業界なんです。ビジネスとしては人件費がかかって大変である半面、観光業が根付くとそこで暮らす人がたくさん生まれる。世界全体を見ても、ここ10年間で世界の成長率より観光業の成長率のほうが高く、実は今一番伸びている産業といえます。しかし、ここでコロナショックが起こった。ただ、これは個人的な感想ですが、コロナは必ずどこかのタイミングで何らかの理由によって終わります。ワクチンかもしれないし、原因が究明されるとか、いろいろきっかけはあると思うんですけど、終わった時に観光業界が壊滅していたら、一番成長しそうな産業をつぶしてしまったことになるんです。緊急事態宣言下で、さらに状況が厳しくなりますが、観光業がどうやって仕事、ビジネスを続けていけるか。それは、とても重要なこと。助けられるのは正直、政府しかいないと思います」

そんなコロナ禍だからこそ、ゴール8を達成する上で決して見逃せない、両立すべきものがゴール3「すべての人に健康と福祉を」といえる。

剛力 「人々の健康の確保と福祉の促進が目的で、あらゆる年齢の全ての人が元気に暮らせる世の中を目指すというものなのですが、ターゲット3には『感染症に対処する』という文言もあります」

飯田 「今回の新型コロナウイルスの場合、死亡者数で見るのか、感染者数で見るのか、見方の角度で感想が大幅に変わってしまうところもあります。感染を完全に防ぐには完全なロックダウンをすればできるのかもしれない。実は、ロックダウンの効果は事前に考えられていたほどのものではないという説も出てきているのですが、何もしないよりは確実に抑えられる。しかし、それをやってしまうと先ほどのゴール8を完全に失ってしまうことになる」

剛力 「つながらなくなってしまいますよね」

飯田 「これまで人類の脅威となってきた疫病と異なり、今回のコロナは症状が出ない人も多いだけにバランスの取り方が極めて難しい。バランスを誤ると経済を殺してしまうかもしれないし、人の命が許容できない範囲で失われてしまうかもしれない。こうした問題がつきまとっています」

このゴール3と8の共存の形として番組で紹介されたのが、SDGsの「誰一人取り残さない」という原則にも当てはまる「分身ロボットカフェDAWN」というプロジェクトだ。1月16日から24日まで、東京・渋谷の「WIRED TOKYO 1999 (ワイヤード トウキョウ 1999)」にオープンするもので、このカフェでサービススタッフとして接客するのが、株式会社オリィ研究所が開発・提供を手掛け、ALS(筋萎縮性側索硬化症)等の難病や重度障害で外出困難な人たちが遠隔操作する分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」。社会参加を妨げている課題をテクノロジーによって克服していく取り組みとして話題を呼んでいる(詳細はhttps://sdgsmagazine.jp/2021/01/08/999/で紹介)。

剛力
「面白い取り組みですね」

飯田
「日本人って漫画・アニメの影響なのかロボットに接客されることへの抵抗感が薄いように思います。鉄腕アトムやドラえもんに始まり、ロボットは日本人にとって友達なんですよ。決して人類を滅ぼすハイテクモンスターではないんですよね」

剛力
 「確かに海外のイメージとは違うように思います」

飯田 「機械化やAIの進歩がどんなに進んでも、決してAIやロボットにはできない仕事があります。それはマネジメント(経営)、クリエイティブ(創作)、そしてホスピタリティ(癒し)と言われているのですが、その中で人が機械を仲介してホスピタリティを提供していくというのは新しい形ですね」

剛力 「コロナでテレワークが昨年から浸透し始めましたけど、これもまた新しいテレワークの仕方のように感じます」

飯田 「そうですね。会話や会議はテレワークでできますが、カフェの接客までできるというのはかなり面白い。ここまで物理的な距離が離れていれば、絶対に感染の可能性もないわけで」

剛力 「あらゆる人たちに社会参加、仲間たちと働く自由を。そこへ行けない、体を動かすことができない人たちでも働けるという、誰一人取り残さないというSDGsの観点でも注目の取り組みです」

飯田 「社会参加していること、実際に役に立っているという充実感が生まれる。そして、ロボットがたくさん生産されてコストが下がっていくと、リアルに疲れない労働者にもなる。操作する人はシフト制だけど、ロボット自体は24時間働けるかもしれない。だいぶ可能性も広がる構想ですよね」

剛力 「働きがいにも健康にもつながっていく取り組みかも知れないですね」

飯田 「昨年来のコロナショックで大きな困難に直面されている方も多いと思います。これに対して政府は決して無責任になることなく対策を講じていくべきですが、同時にコロナって必ずどこかタイミングで、何かの理由で終わりますので、われわれ個人個人にも、その後の希望をしっかりと育てていく、前向きな姿勢が求められているのではないでしょうか」

コロナ禍の中でこそ問われるゴール3「すべての人に健康と福祉を」とゴール8「働きがいも経済成長も」の両立。そのカギとなるのが、まさに飯田氏が提言する、このようなポジティブな考え方なのではないだろうか。

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