化石資源から藻類産業へ、日本発の企業連携型プロジェクト『MATSURI(まつり)』始動
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現代社会は今、世界全体での人口増加や気候変動などといった世界規模の共通課題を抱えていて、これらの課題はそのまま食料難やエネルギー危機といった人類の生存リスクに関わってきます。
そのなかで、藻類が持続可能な社会を実現させるためのキーとして注目されていることを知っていますか?
藻類の可能性
藻類は主に水中に生息していて、ほとんどの藻類が光合成を行う生き物です。
光合成によりCO2を吸収することができる藻類を培養することは、地球温暖化の原因になっているCO2排出量の削減にも効果的です。
また、イメージとして藻類は培養するのにたくさんの水を使う雰囲気がありますが、実際は農業や畜産よりもずっと少ない量の水で培養することができます。理由として、農業では畑に散布された水のほとんどが蒸発や地下へ浸透してしまうのに対して、藻類の培養では水面からのわずかな蒸発分で済むので、供給する水の量が最小限になります。
さらに培養する際の土地利用に関しても藻類は土壌を必要としない為、農業利用が難しい砂漠や荒地、耕作放棄地なども活用することが可能です。事実として世界では、砂漠大地や溶岩大地、塩田跡地でも藻類の大規模商業生産が行われています。
食料の安定供給が課題となるこれからの時代に、土地利用において食料生産と競合することがないことは、非常にサステナビリティを向上させる生き物だと感じます。
世界初の藻類産業の構築へ
そんな藻類を活用したバイオ基点の社会づくりに貢献したいバイオベンチャー企業群 “ちとせグループ”は2021年4月、カーボンニュートラルの実現に向けて藻類を活用した新産業を作るために日本初の企業型連携プロジェクト『MATSURI(まつり)』を 9 業種 20 機関と共に始動しました!
2021年5月13日に記者発表会が開催され、MATSURIの特徴や今後の活動内容について発表が行われました。具体的に、 MATSURIの理念としては化石資源を卒業し藻類産業の構築を通じて経済的にも環境的にも持続可能な生産を増やし、我慢や制限を増やすのではなく、楽しめる選択肢を増やしながらサステナブルな社会を実現させることが目的となります。
今後光合成を活用した藻類の生産を通じて、カーボンニュートラル実現を進めていくと同時にMATSURIに参加するパートナー企業間で連携して事業開発を行い、燃料をはじめとしたプラスチック製品や燃料、食品、化粧品など人々の生活を支える藻類製品を社会に普及していくということも発表されました。
MATSURIの取り組み
最近では、欧米を中心に、環境へ配慮していることを装いながらその実態はうわべのごまかしである「グリーンウォッシング」な取り組みが問題視され始めています。
これは、まだ解決できていない環境問題が解決できていると世間に誤認されてしまうリスクがあり、そうなってしまうと環境問題に対するモチベーションや解決の為の資金が失われるなど、藻類産業の勃興を阻む事態に陥ってしまいます。
藻類製品は現在、有機JAS認定のような基準や規定はなく、製品中の藻類原料の含有量や生産方式を明示する義務もないですが、MATSURIでは、これらの定量・定性的な情報を開示し、サステナブルな社会作りに向けた透明性のある取り組みを徹底していくようです。
環境負荷の実際など不利な情報も含めてオープンに発信することで「グリーンウォッシング」によって環境問題が解決していると誤認されてしまっている世間に対して改めて環境問題について危機意識を持たせることができるのではないでしょうか。
藻類は光合成により二酸化炭素を吸収しながらタンパク質や脂質、炭水化物などさまざまな物質を生み出し、それらを原料として燃料やプラスチック、食品、化粧品などに変わることができます。
環境に配慮して持続可能な生産性のある藻類由来の製品はこれからどんどん日常の中で見る機会が増えていくとおもいます。環境に優しい藻類由来製品が増えることで、サステナブルな社会の実現は近くなるのではないでしょうか。
執筆:国士舘大学 文学部 大橋 一真
編集:SDGs MAGAZINE