年間2兆円のたばこ税はどこへ?意外と知られていないその使い道とは
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先週1月13日は「たばこの日」でした。1946年に高級たばこ「ピース」が発売されたことを記念して制定されました。当時は10本入りのたばこは20銭から60銭ほどだったのに対して、ピースは10本7円と高額だったにもかかわらず、販売数が制限されるほど人気があったそうです。
しかし、時代の移り変わりとともに、たばこの有害性が社会問題となり、現在は若者を中心にシーシャ(水たばこ)が話題になっています。シーシャは、煙を水でくぐらせてから吸うため、ニコチンやタールなど、たばこの有害成分のほとんどが水で流されます。健康面で安心というほかにも、柑橘系、ベリー系、ミント系といったフレーバーがあるため、自分の好きな味や煙を楽しめることでリラックス効果があるのも人気の理由です。
このように、たばこに対して嫌煙・禁煙へと世の中が移行している一方で、たばこ税は年間2兆円をも上回る貴重な財源であり、税収で社会貢献をしている側面もあります。たばこを吸う人も、吸わない人も、それぞれがお互いを認め合うことができる共存社会を実現することは可能なのでしょうか。
たばこ税は年間2兆円を上回る、国と地方の貴重な財源
たばこは食料品などの生活必需品とは違い、嗜好品とされています。そのため、国及び地方において、たばこ税が課されています。たばこの価格には、国たばこ税、地方たばこ税、たばこ特別税、消費税と4種類もの税金が含まれています。たばこの銘柄によって異なりますが、一般的な紙巻たばこの税負担率は6割に達するものもあり、日本では税負担率が重い商品の一つになります。
たとえば、日本たばこ産業株式会社(以降、JT)が公表している資料では、ビールは45.0%、ウイスキー28.6%、ガソリン50.7%という税負担率と比較しても、たばこは61.7%と飛びぬけて重い税負担率であることがわかります。たばこ税の税収は、国税と地方税のそれぞれにおいて、年間1兆円(合計2兆円)あり、国と地方の貴重な財源になっています。
徴収されたたばこ税のうち、たばこ特別税は、旧国鉄の債務返済、国有林野事業の負債の穴埋めに使われています。たばこ1本あたり約1円が返済に使われていますが、旧国鉄の債務などを喫煙者だけが負担すべきものなのか、不公平な税制であると度々議論される場面もあります。
国たばこ税、地方たばこ税は目的税ではなく、一般財源となるため、消費税と同じく使われ方は明らかにされていません。何に使われているのか不透明ですが、教育や福祉、暮らしに関連することに使われているといわれています。
たとえば、小・中学校や図書館、美術館、博物館などの教育施設、高齢者や障がい者が安心して生活するための福祉施設、災害や火事が起こったときの救助費用、道路の整備や下水道整備などの費用と、さまざまな用途の財源に充てられます。
このように、健康リスク問題や受動喫煙問題など、喫煙者には厳しい世の中ではありますが、たばこは貴重な税収として社会貢献をしている側面もあります。
吸う人も、吸わない人も、たばこと共存するためのJTの取組み
日本では、たばこ事業法によりJT(日本たばこ産業株式会社)が独占的にたばこ販売に携わっています。グループの連結収益の約90%をたばこ事業が占めていますが、嫌煙・喫煙と世の中が進んでいるなか、時代に合わせてJTも積極的にSDGsに取り組んでいます。
例えば、改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例の全面施行により、2020年4月から事業所や飲食店等の屋内において原則禁煙となりました。その結果、屋外の公共喫煙所を利用する喫煙者が増えましたが、一部の公共喫煙所に喫煙者が集中したり、路上喫煙の増加など、今度は喫煙者のマナーが問題となりました。
JTでは、分煙への取組みや喫煙マナーの啓発などを積極的に行っているほか、墨田区主催の「みんな北斎プロジェクト」に参加しています。この「みんな北斎プロジェクト」は、錦糸町駅と両国駅の公共喫煙所を管理している墨田区が、2021年度の「SDGs未来都市」に選定、さらに先導的な取組みをしている「自治体SDGsモデル事業」に選ばれたことがきっかけで発足しました。
錦糸町駅と両国駅の喫煙所の壁面に、葛飾北斎、漫画家のしりあがり寿先生などの絵のほか、福祉施設や障がいのある方が壁画デザインを行い、喫煙所の壁面を楽しめるほか、表現活動の場にもなり、たばこを吸う人も、吸わない人も楽しめるように工夫をしました。利用されている方は「ゆったりできる」「心が温まった」などの声が寄せられ、多様性を理解するきっかけとなる場所にもなることが期待されています。
このほかにも、JTは、地域社会への貢献活動「Rethink PROJECT」の一環として取り組む「SDGs貢献プロジェクト」として、2021年に全国の42事業に対して総額6659万円の助成を決定するなど、さまざまなSDGs活動に取り組んでいます。
たばこについては、吸う人、吸わない人、それぞれの意見があります。喫煙は、肺がん、心筋梗塞、肺気腫等の特定の疾病リスクが伴うほか、受動喫煙で吸わない人にも影響がでる場合もあります。一方、喫煙は個人の嗜好として楽しむ自由もあります。さらに、たばこの税収は、国や地方の貴重な財源の一つであることも事実です。
大切なことは、たばこを吸う人は、たばこを吸わない人に対して常に配慮すること、喫煙マナーを心がけることなのではないでしょうか。たばこを吸う人、吸わない人が互いに快適に過ごせる社会の実現に向けて、喫煙マナーの向上、分煙環境の整備、周囲への配慮ということが、たばこと共存する社会の実現への第一歩かもしれません。