ラジオレポート前編:19歳が思う「ファッションとSDGs」
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毎月1回、女優の剛力彩芽さんをパーソナリティに迎えて放送しているニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2022年の第2回放送となった2月18日は「ファッションとSDGs」をテーマに、ファッションにまつわる2人のゲストが出演した。前半では現役慶大生でモデルの世良マリカさんと、このテーマを掘り下げた。
衣服の製造・廃棄の問題は世界的に大きな課題として注目されており、目標12「つくる責任 つかう責任」にも大きく関わるものといえる。番組前半のゲストは、モデルでありタレントでもある世良マリカさん。父がUNICEF(ユニセフ)勤務とSDGsへの意識につながる環境で育ってきた19歳が思う「ファッションとSDGs」とは・・・。
剛力 「はじめまして!」
世良 「はじめまして!! ラジオは初めてなので緊張しています。よろしくお願いします」
世良さんは2002年11月16日生まれ。カナダと日本にルーツを持ち、慶應義塾大学に通う現役女子大生だ。世界三大ミスコン「ミス・ワールド2019ジャパン」にて史上最年少16歳で「ミス・ワールド2019日本代表」に選出され、芸能事務所プラチナムプロダクションによるSDGs推進プロジェクト「SO GOOD!! シブヤ部」のメンバーとしても活動している。
剛力 「肩書がいっぱいありますね。まず気になるのは、慶應義塾大学。この番組でお世話になっている『ミスターSDGs』こと蟹江憲史教授のことは、ご存知ですよね?」
世良 「はい、もちろん! 受験生の頃から蟹江先生が受けている取材の記事を読んでいましたし、授業を受けるのを楽しみに入学しました」
剛力 「ということは、高校生の時からSDGsというものを知っていたということですね」
世良 「そうですね。私がSDGsに興味を持ったきっかけが高校1年生の時の学校の授業。 そこでSDGsを知ってから、その後のミスコンテストもSDGsをすごく大事にしているコンテストでもあり、そうした影響もあって興味を持ちました。その中で、SDGsの最先端をいかれている蟹江先生の話題も、よく目にしていました」
剛力 「授業は・・・」
世良 「まだ受けられていないんです。去年も授業自体はあったんですけど、抽選に落ちてしまって・・・」
剛力 「そうなんだ! すごい人気なんですね、蟹江先生。そういう意味では、この番組でお話を聞けるのは、すごく贅沢なことですね。大学で受けている授業はSDGsに関連しているものが多いんですか」
世良 「そうですね。SDGsというもの自体を扱っている授業でなくても、勉強している内容を探っていったらSDGsにいきつくようなものが多い気がします」
剛力 「学校側も、そういうものを意識し始めているということですかね」
世良 「そうだと思います。私が高校生の頃辺りから、教育をしようという流れが出てきたように思います。担任の先生に『授業にSDGsを取り入れなきゃいけないんだけど、分からないから教えてよ』と言われたこともあります」
剛力 「それはすごくいい先生ですね。みんなで考えるという」
世良 「そういう流れがあって、大学でも授業で触れられることが増えているように思います」
剛力 「世良さんは、SDGsを率直に言って、どういうものだって思っていますか」
世良 「私の友人で『SDGsは嫌い』っていう子もいたりするんです。ただ、SDGsは、それ単体で見るものというより、みんなでより良い世界を開発していくための指標の一つであると私は思っています。逆に『SDGsは良いものだ、頑張って取り組もう』と思っているのとは反対の立場にいる人も、SDGs単体で見て判断するというより、より良い世界をつくるために何かを考えていこうという時の一つの枠組みと捉えればいいのかなと思っています」
剛力 「やっぱり見方が違いますね。SDGsから入った人というか、もともとSDGsというものを知っていると、そこからの進み方は違いそうですね」
世良 「最初から最後までSDGsだけを見ていると2030年までという目標もあって焦ってしまったり、達成できないよと思ってしまったりしてしまう。すごくSDGsは盛りだくさんなので。ただ、SDGsだけに集中するというよりは、最終的にいい世界になったらいいよねというように捉えると楽なんじゃないかと思います」
剛力 「SDGsを自分たちの未来と思っているということですね。それは、すごく大事なこと。20代前半の子とかに話を聞くと、みんなそういうふうに自分のこととして考えられている。そこの差をすごく感じてしまう時があります」
世良さんは、大学でアフリカにある諸問題を考える「アフリカ研究会」に所属している。
世良 「1人の教授のもとで同じ分野に興味のある学生が集まって研究するという、他の大学で言うゼミのようなものです。私が入っているアフリカ研究会では、基本的にアフリカに関連することをそれぞれ生徒が興味のある方向で研究しています。私は父がユニセフ、おばがJICA(国際協力機構)で働いていることもあって、幼い頃からアフリカの開発というものに興味があったんです」
SDGsには目標4「質も高い教育をみんなに」があるが、世良さんは「SDGsの中で一番関心のある目標が4番。誰も取り残さずに開発していこうとなった時に、受けたいときに受けたい人が教育を受けられるというのはすごく大事なこと。アフリカの教育格差の問題を幼い時から聞いていて、私が将来そこで役に立てたら良いなと思うようになったので、アフリカ研究会では主に教育格差について研究をしています」と、自身とSDGsの関わりを説明する。
剛力 「お父様とも、そうした話をされたりするんですか」
世良 「基本的に、アフリカの現場で働いている人なんですが、帰ってきたときは現地の話とかを聞いたりしています。影響は大きく受けていると思います」
そんな世良さんと今回考えるのが「ファッションとSDGs」。そこにまつわるニュースとして、番組ではフランスで施行された「衣類廃棄禁止法」の話題が紹介された。
2022年1月に施行された同法は、企業が売れ残った新品の衣類を焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止し、リサイクルや寄付による処理を義務づけるもの。違反した場合は、最大1万5000ユーロ(約190万円)の罰金が科せられる。
可燃・不燃ごみとして出される衣類の95%は焼却・埋め立て処分されており、その量は1日あたり平均1300トン、大型トラック130台分といわれている。今回の法律は、そんな大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造を是正することを目的に制定されたもので、食品以外で在庫廃棄を規制する法律が施行されたのは世界初。衣類の拡大生産者責任(EPR)法は、オランダで2023年から、スウェーデンでも2024年から施行される予定で、ブルガリア、英国、スペイン・カタルーニャ州などヨーロッパ各地でも法案作成が進められている。
剛力 「どうですか、このニュースは」
世良 「すごく良い傾向だと思います。ただ、2020年に発表されたもので、実際に施行されるまでに2年かかったという事実には、すぐに変えていくのが難しい項目なんだなということを改めて感じます」
剛力 「フランスでそこまでかかるとなると、日本ではどうなるんだろうと」
世良 「本当に、ファッションビジネスと環境って難しいものだと思います。ただ、今すごく注目されている項目でもある。この業界で活動していると、よく話題に上がりますし、私の知人もファッションと環境という面で活動している子が多くなってきていて、この波に乗って進んでいったらいいなと思います」
服を手放す手段の68%が可燃ごみ、不燃ごみとしての廃棄。手放した後の服の66%が埋め立て処分されている。
剛力 「この事実は、どう受け止めますか」
世良 「やっぱり、現状を変えなきゃいけないというのが最初に来る印象ですけど、すごく難しいことでもある。現時点でも、廃棄されるはずの洋服を企業が回収してアフリカに送るとか、そういう活動はあると思うんですけど、その送られた場所でどうなっているのかというのは、いつも私が疑問に感じているところでもあります。アフリカに資源や物資を送る取り組みは以前からよくあるもので、例えば靴が1足売れたら1足をアフリカの国に送りますという活動があると、現地の靴屋さんが失業してしまうという事例もあったと聞きます。アフリカの現地の人たちも、自分たちの生活を回そうと頑張っていて、自分たちで靴をつくって売っている人たちがいる。そこで無料で靴をもらえるとなったら、現地で靴を売っている人は仕事がなくなり、どんどん支援物資に依存してしまう。ただ、物を送って使ってもらう、という簡単な考えではいけないなというのが課題としてある。送ること自体は、捨ててしまうより良いことだと思いますが、最後まで行方を見届けるというのが、送る企業もそうだし、洋服を企業に託す消費者も意識していかないといけないことなのかなと思っています。透明性を高めるという部分では、消費者の意識がすごく大事になると思いますね」
剛力 「それは、私たちが考えられることでもあるし、それを考えた上で行動していかなくちゃいけないことですね。ところで、古着とかには興味あったりしますか」
世良 「古着にも興味がありますし、私がよくやっているのは母と洋服を共有することですね。母が学生の頃に来ていた洋服を私が今着ていたりとか、逆に私が服を買う時に『こっちなら母も使えそうかな』と考えて選んだりとか。一緒に使うことを大事にしています。やっぱり、新しい、安いものをたくさん着たいということは多くの方が思う部分だと思うんですけど、それを1人でやるのではなくて、共有となると一人一人が着たいものを買うよりは少なく済むし、ちょっと値段が高くても負担が半分になる。そういう使い方も(SDGsの)一つかなと思います」
剛力 「それは、お母さんもスタイルが良いとうことですね(笑)」
世良 「(笑)アウターなどのあまりサイズを選ばないものとか、カバンとか小物なら共有しやすいですよ。あとは日本って環境に配慮したブランドは少しずつ増えてきているけど、そういうブランドにあまり注目が集まらないというのも課題だと思っています。私も、過去に環境に配慮した商品の開発にデザイナーとして一緒に携わらせていただいたことがあって、環境に配慮した商品は価格が高くなってしまうという現実を知りました。まずは値段とデザインを大事に思うのが今の消費の現状なので、注目もされにくい。どんなに環境に良い服をつくったとしても、それを選んで買ってくれる方がいないと意味がないし、結局廃棄になってしまう。企業が環境にいいものを頑張ってつくるのももちろん大事ですし、それに消費者が興味を持つようなプロモーション、雰囲気づくりをするのもすごく重要なのかなと思います」
剛力 「私も洋服をつくらせてもらっているのですが、難しいですね。素材とかも限られているし、値段とのせめぎ合いは感じるところがあります」
世良 「プロモーションで言うと、新しく環境に配慮した企業が出てくるのも大事だけれど、それ以上に、注目を浴びている人気のアパレルブランドが変化していくのが、一番消費者の意識に影響があるのかなとも思っています。頑張っている新しい、小さな企業に目を向けてもらうためにも、既に注目を集めているブランドが変わっていくことが大切だと思います」
次に紹介されたのは、日本国内の取り組み。伊藤忠商事が2021年4月15日に開設した「ITOCHU SDGs STUDIO」で1月22日から2月27日まで開催されたファッションをテーマにした体験型展示会「未来の試着室」展だ。
「地球環境への配慮」「リサイクル」「リユース」「ダイバーシティ&インクルージョン」「伝統文化の継承」をテーマにした「5つの試着室」を用意。「リユース」では黒染めを追求してきた京都紋付が展開する着古した服やアパレルの在庫を黒染めで蘇らせるサービスを、「リサイクル」では衣料生産時に出た残反・裁断くずや要らなくなった服を糸まで戻し、生地や服、製品に生まれ変わらせる“サーキュラーエコノミー”を紹介している。商品や素材を実際に手にとって、多様な「衣服の可能性」を体験できるイベントで、世良さんは「面白いですね。私もぜひ行ってみたいですね」と興味津々。「黒染めで蘇らせるってどういう仕組みなんだろうと気になりますね」と続けた。
世良 「ただ教えてくれるだけではなく、実際に体験できる、目で見て触れるっていうのは記憶に残る経験になると思います。SDGsって重い話題かなという印象が強いと思うんですけど、楽しみながら学べる、楽しみながら地球に良いことができるというのが継続できるコツであり、ポイントだと思っているので、すごく良い取り組みだと思います。あとは、こういうイベントがもっとみんなの耳に入るようになったらいいなと。やっていても、知らないと行けませんからね」
剛力 「SDGsというと、どうしてもまだ難しいと思う人もたくさんいる」
世良 「SDGsが楽しくとらえられるようになるといいなと思います」
剛力 「話を聞けば、そんなに難しくないなと思えるんですけどね」
世良 「確かに。国連とかそういうワードがあると、どうしても自分には関係ないと思ってしまうのは分かりますけどね」
最後に恒例の質問。剛力さんは、世良さんに「2030年に向けた提言」を聞いた。
世良 「提言といえるか分からないですけど、人のために何か行動できる自分になっていたらいいなと思っています。2030年に自分は26、27歳。今は勉強をして吸収している段階ですけど、それを活かして人のために、何か役に立つことをできていたらいいなと思っています」
モデルとして活動する現役大学生の「ファッションとSDGs」への思いを聞いた剛力さんは、改めて感じる部分があった様子で、番組の最後をこう締めくくった。
「やっぱり10代、20代前半の方々は、もともとSDGsを授業などで学んでいて見方が違う。世良さんは、育ってきた環境の影響も大きいと思いますが、自分たちの未来を考えた結果としてSDGsの取り組み方に行き着き、自分ごととして捉えている。そして、世代は違えどファッションとSDGsの問題は未来に繋がっていて、みんなが大事にしていかなくちゃいけないことなんだなと感じました。私は洋服やファッションが好きだからこそ、楽しみながら取り組んでいけることだと思いましたし、お洋服をつくらせてもらってもいるので、こういうことを知り、そういう視点でファッションについて考えることはすごくいいことだなと思いました。世良さんも楽しく捉えてほしいと言っていましたが、SDGs MAGAZINEは楽しくがテーマ。どんどん、楽しくSDGsを伝えていきたいですね」