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パーム油の生産による熱帯雨林の破壊は「使わない」が本当の解決か?

パーム油の生産による熱帯雨林の破壊は「使わない」が本当の解決か?

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

パームオイルは「見えない油」とも言われる一方、世界で最も消費されている植物油です。スーパーに並ぶ商品の約半分に含まれていると言われ、全体の85%が、マーガリンやショートニングの原料として、また加工食品の材料としてチョコレート、アイスクリーム、ドーナツ、ビスケット、コーヒーフレッシュなど、わたしたちが毎日のように食べる食品の材料に使われています。汎用性が高く、洗剤やシャンプー、口紅、塗料、ねり歯磨きなどにも使用されています。

思った以上に身近なところに使われているこのパームオイルは「アブラヤシ」という植物から採取されますが、その生産により東南アジアの熱帯雨林が破壊されていることはご存じでしょうか。ボルネオ島全体ではわずか50年ほどの間に40%もの熱帯雨林が消失しています。

SDGsの認知率がこの2年間で約3倍(株式会社インテージの調査より)になり、自社の事業に関わる環境問題を解決しようと取り組みをする企業も増えてきました。しかし、本当の解決になっているのか、解決によって新たな問題を引き起こしていないか、どこまで企業は責任をもって取り組んでいるでしょうか?
このパームオイルの熱帯雨林破壊についても同様です。

85%が食用として世界で消費しているパームオイルは、熱帯雨林の破壊だけではなく、そこをすみかとしている希少な野生動物にも影響を及ぼしています。熱帯雨林は地球上の陸地のうち7%しかないにもかかわらず、地球上の50%以上の生物がいると言われる生物多様性の宝庫です。解決しなくてはならない問題であるものの、パームオイルは、私たちの暮らしに深く入り込んでいるだけでなく、生産国の人たちにとって重要な産業の糧になっています。単に「使わない」と否定してしまうことは、現地の人々の暮らしを奪うことにもつながる可能性を秘めています。
また、仮にパームオイルをやめて、他の植物油を使おうとすると新たな問題が出てきます。例えば、大豆油に変える場合、パームオイルは大豆の耕作面積の約1/10で同量を生産することができます。つまり、これまでの生産量を維持しようと考えると、環境破壊はより深刻になってしまいます。このように単純にパームオイルを否定すれば終わる簡単な問題ではないことが分かります。
そんななか、15年間にわたってボルネオで生物多様性保全活動を行っているのが、認定NPO法人ボルネオ保全トラストです。このNPO法人はパームオイルを「使わない」ではなく「環境に配慮しながら使い続けられるための活動」選択をしています。

アブラヤシプランテーションの中を歩くボルネオゾウの群れ

プロジェクトの一つである緑の回廊プロジェクトをご紹介します。
アブラヤシの栽培のためのプランテーション開発で熱帯雨林は小さく分断されていきます。この分断により問題となったのが一定ルートを定期的に移動するボルネオゾウです。開発したプランテーションのなかを群れで通っていくため、生産者である農民からは農作物を荒らす害獣呼ばわりされるようになってしまいます。人の生活域が広がったために村のすぐそばをゾウが通るようになり、村人の仕掛けた罠にかかって、ケガをしてしまう事件も多く起きています。
緑の回廊プロジェクトはプランテーションによって分断されてしまった熱帯雨林をつないで、大きな森にすることで動物たちの移動経路を確保し、動植物の生物多様性・遺伝子多様性を保護しています。

実はこのNPO法人はSDGs MAGAZINEでも取り上げたことのある手洗い文化のパイオニアである「サラヤ」が立ち上げに関わりました。
【戦後創業した企業の啓発活動が、コロナも撃退する「手洗い習慣」に貢献(リンク)】

サラヤは手洗いと同時に殺菌・消毒のできる日本初の薬用石けん液を開発し発売した企業です。創業以来、社会問題と環境に配慮して事業を行っています。開発した商品のなかには、日本の高度経済成長期に発生した石油系合成洗剤の排水による水質汚染問題をきっかけに環境を汚さない植物由来の洗剤として誕生した「ヤシノミ洗剤」があります。石油由来ではなく、原料としてヤシの油を使用しています。

日本でエコロジームーブメントが起きていた2004年にテレビのインタビューを受けたサラヤは「ヤシノミ洗剤が原因でボルネオの熱帯雨林が伐採されているのではないか?」との指摘を受けます。前述したように、パームオイルは85%が食用。工業用15%のうち、石けん・洗剤に使われるのは数%。その中で、大きな企業ではないサラヤが使う量は全体から見ればごく僅かです。しかし、洗剤原料を商社から購入していたサラヤは、ボルネオで起きている問題を知らなかったことから、問題を知った以上は活動しなければと、生物学者の人やNPOの専門家らと共に活動を始めるようになりました。そこで、単に「使わない」ことで起こる副作用を避け、この油を使い続けていくためにはどうしたらいいかを考えていきます。

最初はボルネオゾウの生息域になっていた一部に畑を作っていたため「動物たちのために返してもらえないか?」という交渉から始まりました。しかし、現地の人たちにとっては、産業基盤になっていることもあり、全て断られたそう。資本主義には資本主義だ!とその土地の買い取ることになるのですが、資金として200億円が必要だということが分かります。パームオイルの問題には世界中の人たちが関わっています。サラヤ1社では難しい問題も「みんなでシェアして、みんなで協力すれば、集められるのでは?」と考え、他の企業が寄付しやすくするために中立の団体「ボルネオ保全トラスト」をつくることとなりました。

支援企業となったサラヤは、みんなの力を集める手段として、ヤシノミ洗剤の売上(サラヤの純利益)1%を寄付することを明言しています。これによってヤシノミ洗剤のユーザーが使い続けることで、持続可能に活動していくための安定した収入が確保できるようになりました。

今でこそ、社内の後押しがあるものの、始めた当初はボーナスに回っていったお金がボルネオに回ることに対し、社内から「ゾウを助けるくらいなら、社員に還元して欲しい」といった声もあったそうです。
しかしSDGsの意識が広がることで、自社の活動の意義が前向きにとらえられ、継続した活動に繋がっていくようになったそうです。

サラヤが取り組むSDGs
4月7日「世界保健デー」に考える衛生のこと

WRITTEN BYSDGs MAGAZINE

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