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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 「5つのP」って何?


ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 「5つのP」って何?

ニッポン放送のSDGs 啓発番組 『SDGs MAGAZINE』 が新内眞衣さんをパーソナリティに迎え、2022年4月10日の放送で新たなスタートを切った。リニューアル第1回の放送の後半では“ミスターSDGs”ことSDGs研究の第一人者、慶應義塾大学大学院・蟹江憲史教授に、「SDGs」を改めてその基本から学んでいく上で指針となる「5つのP」について解説してもらった。
前編はこちらから

17のゴール、順番には意味がある

SDGsを学ぶ上で、まず欠かせないのが「17のゴール(目標)」だ。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

この17の目標を掘り下げていく上で、実はまだ、この番組が取り上げていない考え方がある。それが「5つのP」。

そもそも、この17の目標が、なぜこの順番になっているのか。実はこの17個は「People=人間」「Prosperity=豊かさ」「Planet=地球」「Peace=平和」「Partnership=パートナーシップ」という「P」が頭文字の5つのジャンルに分類でき、その順番に振り分けられている。目標1~6が「People」、目標7~11が「Prosperity」、目標12~15が「Planet」、目標16が「Peace」、目標17が「Partnership」にあたる(詳細はSDGsの目標を分類する5つのPを解説。17の順番に込められた意味とは

画像出典:国連広報センター

新内 「この分け方は世界共通なんですか」

蟹江 「そうですね。そもそもSDGsができた時の国連の決議文書があるのですが、そこに『5つのP』というのが出てきているんです。なので、当然のごとく、これは世界共通の話です。一番基本的なことが書かれているので、とりあえずこの5つを押さえておけばSDGsが何について書かれているのかが分かります」

新内 「確かに」

蟹江 「基本の基本です。17の目標が5つになると、だいぶ覚える上で気楽になりますよね」

新内 「そうですね。まずはこの5つを覚えたいと思います!」

“入り口”に最適な「SDGs CLUB」

17の目標を見ていく上で、国連や外務省のサイトなどに掲載されているものを見た新内さんは、その文言に戸惑いを覚えた様子。

新内 「この目標の説明文、結構難しい言葉が使われていて、何となく理解はできるんですけど、頭にスッと入ってこない、難しいなという印象を受けてしまいます。」

蟹江 「そうですね。いろんな国の人がもんでもんでできた国連の決議文書なので、まどろっこしくて、なかなか入ってこないと思います。専門的に知りたい人はもちろん、これを読んでもらった方がいいと思いますけど、最初のきっかけとしてこれを読んでしまうと『何だ、こりゃ!』となってしまうと思いますから、あまり気にしないほうが良いです」

そこで、オススメなのが日本ユニセフ協会が運営するサイト「SDGs CLUB」だという。親子を対象にしたSDGsの学習サイトで、「ユニセフも国連の機関の一つですし、そういう意味で子供たちにも分かりやすく、よくできているサイトだなと思います」と蟹江教授は説明する。

新内 「難しい言葉がかみ砕いて書かれているので、分かりやすいですね」

蟹江 「本などもいろいろと出ていますし、自分でとっつきやすいと思うものから入っていくのが良いんじゃないかなと思います」

「5つのP」を解説

そして、今回の本題。改めて「5つのP」に沿って、17の目標を1つずつ見ていく。

【People=人間】
世界中で起きている問題の中で「人」に注目した分類。貧困をなくし、教育、健康、安心、安全、全ての人に平等を。


該当目標
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に

新内 「以前は、海外旅行によく行っていたので、日本を出ると、こんなにも安全な水とトイレが少ないのかと驚いたことがありました。世界にどれくらい安全な水とトイレが普及しているのかは分からないのですが、これはぜひ進めていただきたいなと思います」

蟹江 「世界の問題でもあるし、実は日本が世界中の水を奪ってしまっているという側面もあるんです」

新内 「どういうことですか」

蟹江 「新内さん、お肉とか好きですか」

新内 「はい! 好きです」

蟹江 「肉をつくるには、牛を育てないといけないですよね。牛を育てるためには、そのための水が必要です。肉を洗って精肉を衛生的にする。そのためにも水が必要になる。そういうのって“バーチャルウォーター(仮想水)”っていうんですけど、われわれは実は知らないうちに途上国の水を奪っていたりするんです」

新内 「ちょっと盲点でした」

蟹江 「そうなんです。水の問題でも、世界といろいろつながっている。あと、トイレの問題なんかも、海外でトイレになかなかいけない人には女の子が多かったりするんです。外でトイレをしなくてはいけないんだけれど、遠くに行くと危なくて、安全が脅かされてしまうとか。この目標6だけでも、日本と世界がつながっているし、目標の間で複雑な因果関係があることが分かります」

新内 「先生が気になる『People』の目標はありますか」

蟹江 「僕は、このパンデミックが来てしまって以来『すべての人に健康と福祉を』という3番の目標に非常に関心がありますね。感染症の話って、SDGsの中でも実は1カ所にしか書いていないんです。17の目標の中に具体的なターゲットが169個あるのですが、感染症に関するものは、そのうちの1個だけ。だけど、それができていないだけで世界が2年以上止まっているわけですよ」

新内 「2015年には感染症に対する認識が少なかったということですか」

蟹江 「ここまで来るとは思っていなかったということですね。だから、もうちょっとこういう問題をしっかりと今後、考えていかなきゃいけないというのは、われわれが改めて気付かされたことだと思います」

ターゲット3.3
2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。

※ 『SDGs CLUB』では、「3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアや、これまで見放されてきた熱帯病などの伝染病をなくす。また、肝炎や、汚れた水が原因で起こる病気などへの対策をすすめる。」と説明。

蟹江 「今、ワクチンが感染症対策で大事だと言われているじゃないですか。ワクチンについてのものを入れても2つ。3.bというところワクチンや薬の開発の話が出ているんですけど、それを入れても2つだけなんですね」

ターゲット3.b
主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。

※ 『SDGs CLUB』では「3.b主に開発途上国で大きな影響をおよぼす病気に対するワクチンや薬の開発を助ける。また、国際的な約束や宣言にしたがって、安い値段で薬やワクチンを開発途上国にも届けられるようにする。」と説明。

新内
 「今、世界中でこれだけ猛威を振るっていて、大変な思いをしている方々がいても、2つ・・・」

蟹江 「もっともっと手厚く考えておけば良かったとも言えるし、逆に言えばターゲットが169分の2できないだけで、世界がこんな状態になってしまうということでもある。それをある意味、変な形で実証してしまったのがこの2年間。SDGsを達成できないということは大変なんだということが、これだけ見ても分かるんじゃないかなと思います」

新内 「そうですね。先ほど蟹江先生が、最低ラインとおっしゃられていましたが、まさに最低ラインをクリアしないと、また次にいろんな問題が起こってきたときに、人がどう動けばいいか分からなくなってしまいそうです。より理解を含めていかないといけないなと思います」

【Prosperity=豊かさ】
全ての人が経済的に豊かで安心して暮らせる世界に。


該当目標
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを

新内 「こちらで私が気になるのは、目標11です。『住み続けられるまちづくり』というのは、日本だと地震もあったりするので、少し難しいんじゃないかなと思うんです」

蟹江 「そうですね。裏返せば、災害にも強い街づくりということですね。地震があっても地震に耐えられる街というのが一つ大事だと思いますし、仮に何か崩れてしまってもそれをすぐ回復できることが重要ですよね」

新内 「当たり前に地震があるということが分かっているからこそ、それに適応した街をつくっていく。それが、重要なんですね」

蟹江 「停電で街が暗いままだったら駄目だし、冬とかだったらそれこそ命にかかわる。そういうことがあっても復旧できるインフラをつくるというのは目標9の話なんですけど、つまり目標11のためには目標9をしっかりやらないといけないということ。差別されていたら住み続けられないじゃないですか。そうすると目標10にもつながる」

新内 「全部つながっているんですね。これは一個一個ちゃんと掘り下げないと駄目ですね」

蟹江 「でも、逆に言えば一個どこかの目標を取り上げて考えていくと、こっちもやらなきゃ駄目じゃんと、広がりが出てくるということです。停電の話をしましたが、停電はエネルギーのことなので、目標7にもつながってくる。電線が切れてしまったとしても、自分の家に太陽光発電があればクリアできる。一個一個が大事で、全体も考えることが大事になってくるということですね」

Planet=地球】
人と自然が共存し続けられる地球に。


該当目標
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう

新内 「こちらでは、どれがキーワードになってくるんですか」

蟹江 「全部大事ですけど、僕はやっぱり12番がすごく大事だと思います。僕らが普段使っているものが、どうやってつくられているかとか、どうやって捨てられているか、あるいはリサイクルされているか。大量生産、大量消費、一回だけ使ってポイしてしまうと、地球がもたなくなる。つくるところを考えて使いましょう、使うところを考えてつくりましょう、という目標12はすごく大事になりますね」

新内 「食品ロスの問題をニュースなどでよく見ますが、私自身もいろんなアルバイトを経験して食品ロスの現場を目の当たりにしてきました。目の当たりにすると、心が痛くなるんです。『まだ食べられるのに』とか・・・。つくる責任もそうなんですけど、消費する立場としても、考えなきゃいけないことだと思います」

蟹江 「心が痛むと今言いましたが、その痛む心を大事にするというのは、僕はすごく大事だと思うんですよね。心が痛んでも『仕組みを変えなきゃいけないからできないや』と、思いがちなんで。でも、心が痛んだときに何かできないかなと考えるところから動き出すと思うんですよ」

新内 「きっかけが大事」

蟹江 「きっかけがあれば、少しずつ動き始めると思います」

【Peace=平和】
世界中の人々が平和に生きられるように。


該当目標
16.平和と公正をすべての人に

「平和」という観点では、まさにロシアによるウクライナ侵攻が大きな問題として現在進行形で動いている。

新内 「本当に、歴史は繰り返すと言いますか、どうしてこうも同じことを繰り返し、いつまでもなくならないのかと思います。ただ、問題が大きすぎて、自分に何ができるのかとも思いますし、こちらの点は蟹江先生、どう思われますか」

蟹江 「平和というのは持続可能、サステナビリティそのものだと思うんです。平和=サステナブル。平和を崩すというのが持続可能ではなくしてしまうということですよね。今、ウクライナで起きていることが、その典型例だと思いますけど、こんなことをやっていても、何の生産性もないということに、そろそろ人類が気付かないといけない。いや、だいぶ気付いてきているとは思うんです。そういうことに気付くべきだという声も高まってきていると思うんですけど、まだまだそれを感じ切れていない人もいて、努力を続けていかないといけないんだろうなと思います」

新内 「問題が大きすぎて、自分に何ができるんだろうとすごく悩みます」

蟹江 「でも、そういう声を上げていくということが、まずは大事なんじゃないかなと」

新内 「自分に出できること、小さいことでもできることから始めていくというのが大事になってくるんですかね」

蟹江 「そうですね。新内さんのようなインフルエンサー、インフルエンス(影響力)の高い人は、発信することによって、『そうだ』と思う人がたくさん出てくると思います。アメリカなんかでも、みんな自分の声をきっちりと上げている。そういうところから大きなムーブメントが起こるんじゃないかなと思いますね」

【Partnership=パートナーシップ】
協力し合い、助け合うことで、SDGsは達成される。問題解決をしていくには誰か一個人、どこか1つの国だけでなく、国や企業、組織、団体、地域、家庭、個人の全ての協力が必要不可欠。

該当目標
17.パートナーシップで目標を達成しよう

新内 「乃木坂46に所属して、問題解決のためにみんなで話し合ったりすることもあったので、個人、グループ、組織、いろんなところで問題をちゃんと意識して取り組んでいかなくちゃいけないんだなと感じるんですけど、この中でも大事なキーワードとなってくるのは何でしょうか」

蟹江 「パートナーシップというのはSDGsを実現していく上では一番大事だと思うんです。最初に言ったように、今の社会を続けていくと、この先の社会が本当に大変なことになってしまう。ということは、今の社会を大きく変えなきゃいけない。そこで、SDGsのもう一つの大きなテーマになってくるのが『変革』なんです。英語で言うとトランスフォーメーション。ガラッと大きく変えないといけない。でも、ガラッと大きく変えるには自分一人でじゃできない。何か今まで考えつかなかったような組み合わせで、新しいことをやっていくことによってガラッと大きく変えることができるようになると思うんです」

新内 「人とのパートナーシップって、SDGsに関してもそうなんですけど、温度差が生まれてしまったりとかする。何か、私はやっているけど、全然理解してくれない・・・とか。そういう摩擦といいますか、どうしたらみんなが同じ方向に行けるのかなというのはすごく感じています」

蟹江 「そうですね。人って持っているものが、それぞれ違うじゃないですか。だから、乃木坂もみんなが集まって一つの形になっている。一人ではできないことでも、集まればできるということがある。僕が例よくとして出すのがトヨタ自動車です。最近、トヨタは街づくりで目標を達成しようと言い始めているんです。何で車の会社が街づくりなのって思うかもしれないけど、実は車って電気自動車とかになっていくと、家から電池を持ってきたりとか、家に余った電気を戻したりとか、いろいろそういうことができるようになるんですね。あと、道路も街のインフラじゃないですか。だから、やっぱり街づくりと車ってすごく近い関係にあるんです。でも、今まで、そこに気付いていなかった。今回そこに気付いて、『じゃあ、一緒にやりましょう』といって実験都市をトヨタはつくっているんですけど、そういう今までにない発想が新たなビジネスを切り開くし、それが新たな課題解決を切り開いていくことにつながるということだと思います。自分一人でできないことを、他の人を結びつけることによってできるようにする。パートナーシップって本当にクリエーティブなものなんじゃないかなと思いますね」

新内 「本当に、すごく勉強になりました。人って、みんな個性があるから同じ方向を向くのは難しいのかなと思うんですけど、社会や周りの人が変わっていくと、おのずと同じ方向に向かっていくこともあると思うんです。なので、私個人としてできることは少ないかもしれないですけど、発信していくこと、勉強していくことが大事なのかなと思いました」

蟹江 「今の笑顔が『あっ、そうなんだ』という感じの笑顔だったので、僕も良かったなと思います」

新内 「本当ですか!」

最後に腑に落ちた様子を見せた新内さんに、モニターの向こう側の蟹江教授は、うれしそうに目を細めた。そして「今日から、この番組がまた新たに始まって、ここからまた第一歩。SDGsって、そんなに難しいことではないので、親しみを持って、ぜひ何かきっかけをつくって、まず知るということをやっていただきたいなと思います」と呼び掛けた。

新内さん、第1回の放送を終えて

パーソナリティとしての第1回の放送を終えた新内さんは「今日は、本当にはじめの一歩を踏み出させていただいたんですけど、今までこんなにいろいろな方々がSDGsについて発信してくれていたのに全然受け取れていなかったなと、すごく反省しました」と、改めてSDGsの持つ重要性に気付かされた様子。さらに「意外と目標の中身を見てみると、身近なことが多かったので、これから、いろいろなところで自分でちゃんと考えて行動していかないとなと思いました」と、“自分ごと”として捉える大きなきっかけも得た様子だった。

「蟹江先生がおっしゃっていたトヨタ自動車の街づくり、あれも見てみたいですね。体験することが、一番自分の中に入ってくると思うので、この番組で一緒に行ってくれないですかね。今後、この番組を通してSDGsに興味を持ってくれた皆さんと公開録音もできたらいいなと思いますし、より良い発進の形があれば、全力で向き合っていきたいなと思います。さわりだけで、こんなにいろんな発見があったんで、これからどうなるんですかね。私自身も楽しみです」

“ミスターSDGs”こと蟹江教授の手ほどきで、SDGsの世界の“扉”を開けた新内さん。2030年の未来を見据えた17の目標に触れ、その視線は早くも新たな未来に向いていた。

【次回放送は5月15日午後7時】