遺伝子組み換え食品は危険?メリットとデメリットを理解して向き合おう
みなさん「遺伝子組み換え」という表示を見て何を想像しますか?
個人差はあるかもしれませんが、遺伝子という、ある種不変のものに人為的に手を加えるという不自然さに対する不信感なのか、無知からくるものなのか、理由は分からないものの直観的にネガティブな印象を受ける方もいらっしゃるのではないでしょうか。 今回は、難しそうで知ることを遠ざけてしまうような「遺伝子組み換え」について、そして進化する技術についてSDGsの観点を踏まえて考えてみましょう。
そもそも遺伝子組み換え食品って?
まず押さえておきたいのが、遺伝子組み換え技術は農作物や家畜を対象に行われるということです。そして、それらに対し、他の生物の細胞から抽出した遺伝子を組み換え、本来持っていない新たな性質を持たせることが目的です。 例えば、抽出した遺伝子が持つ、害虫に強い性質や除草剤に強い性質などを作物の新たな特性として加えることができます。
実際にどんなものがあるのか、いくつかご紹介します。
厚生労働省によると日本で安全性が確認され、販売・流通が認められている遺伝子組み換え食品は8作物(169品種)あります。
・大豆
・じゃがいも
・なたね
・とうもろこし
・わた
・てんさい
・アルファルファ
・パパイヤ
主な強化ポイントは、
①特定の除草剤で枯れない改良
②害虫への耐性
③栄養成分の強化
以上3点があげられます。実はこれ、ただ食物を強化しただけでなくSDGsの面からみてもメリットがあるんです。
①除草剤で枯れない改良
生産規模の大きな農家では除草のために農地をトラクターで耕起する必要がありました。トラクターは動かすために燃料が必要かつ、使用すると大量の排出ガスが出ます。化石燃料や排出ガスの削減のためにも除草剤を使った整地は経済面のみならず環境面でのメリットがあるのです。除草剤に負けない作物は先進的な選択肢として認められていると言えます。
②害虫への耐性強化による生産数の安定
害虫による被害でそもそも作物が不作に終わるということがありますよね。新芽を虫に食べられて育たなくなってしまうと農家は大打撃。経済の循環、継続が不可能になってしまいます。また、虫に食物を食べられて見栄えが悪くなったものは出荷できずに廃棄されてしまうこともあります。これも、日本の課題となっている食糧消費の問題に抵触してくるため、害虫に強い品種の改良は、農業における生産の安定性を保つのに強い味方になっています。
③栄養成分の強化
ビタミン欠貧症や栄養失調。特に、このような症状が蔓延する発展途上国。全ての人の健康を守るために、特定のものでも栄養が豊富に摂れる食物は人々の命を守り、希望になり得ます。
欲しいのは安全性 100%安全と言ってほしい心理
ここまでみてみると、メリットが多く最初とは大分違う印象。環境にも私たち人間にとっても良いとこ取りをしているように感じますよね。
しかし、一方では拭いきれない不信感があるのもまた事実です。
その一つが、遺伝子の組み換えにより作られた除草剤への耐性が強い作物の花粉などが、何らかの形で雑草に組み込まれるといったリスク。近隣で育てられた遺伝子組み換え作物の花粉が飛散し受粉することで、別の作物が意図せず遺伝子組み換え作物となってしまう可能性です。
これらは確率としては極めて低いとされていますが、「絶対に安全」である保障はされていないため、遺伝子組み換え食品の推進に反対の声をあげる人も多くいます。
また、遺伝子組み換えが行われた生物が人体にアレルギー症状を引き起こすのではないかという不安の声もあります。
人体に影響があるものは市場には出回らないと厚生労働省は発表していますが、絶対にないということは証明されていないため、依然不安に感じる層は一定数いるようです。
その時、正しい判断をするために
このように、賛否両論がある遺伝子組み換え食品ですが、SDGsの達成に寄与するような一面があるのも事実。新しい技術やサービスが発表された時は安全性が証明されるまでなかなか受け入れがたいものですよね。執筆していてふと、コロナが流行り出したころを思い出しました。得体のしれないウイルスが流行り出し、対処法も分からないため世界はロックダウン。そして2022年現在、ウイルスはまだ存在しているものの、ワクチンや予防法を正しく理解し始め日常を取り戻しつつあります。分からないから受け入れないという対処法も不正解ではないかもしれません。ただ、様々な変化が起きる世界で、何を受け入れ何を拒むか、正しい判断ができる知識を身に着けておくことがこれからの世界に必要な気がします。人だけでなく、環境や経済などを総合的に判断してどうなのか、ひとりひとりが広い視野を持つことがSDGs達成のカギとなるのではないでしょうか。