“国民病”となった花粉症、重症化を防ぐために摂りたい栄養素や取り入れ方を解説
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鼻水・鼻づまりをはじめ、目のかゆみ、肌荒れなど数々の不快な症状が現れるつらい花粉症。花粉症の原因となる植物の代表ともいえるスギ花粉の飛散は2月下旬、ヒノキ花粉の飛散は3月下旬から4月上旬の今がピークです。
多くの方が服薬やマスクの使用などそれぞれ色々な花粉症対策をされていることと思いますが、今回の記事では、花粉症の重症化を防ぐために必要な栄養素など、食べ物から取り入れられる対策について考えます。
花粉症は国民病!国をあげて取り組む花粉症対策
今や国⺠の約4割が苦しむ花粉症。衛生環境の変化や食の欧米化により免疫が弱まり、特にここ10年で患者数は急激に増え続けています。さらに花粉症の厄介なところは疾患すると重症化しやすいこと。調査によれば、花粉症患者の8割もの方が重症化していると言います。
花粉症の一般的な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみですが、悪化すると皮膚症状や頭痛などといった症状も現れ、果物を食べると口にかゆみなどが生じる口腔アレルギーを起こすこともあります。また、重症化によって集中力が低下し、仕事の能率が下がる、子どもの学力を損ねるといった、生活水準の低下が問題視されています。
そこで政府は花粉症を“国⺠病”として関係閣僚会議を立ち上げ、「発生源対策」「飛散対策」「発症等対策」の3本柱で対策を施行することを決定しました。
また、2022年には日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が、2030年までに生活の質の悪化につながる“花粉症の重症化”をゼロにするための啓発活動や医療を推進する新プロジェクト「花粉症重症化ゼロ作戦」を始動しました。
国でも対策は進められていますし、一般的な花粉症対策としてもマスクの使用や、服装の素材選び、薬の服用などさまざま知られていますが、どれもまだまだ効果として十分とはいえないのが事実。花粉症対策にはそれらに加え、体内の免疫環境を整えることも欠かせません。
花粉症はなぜ起こる?花粉症と免疫の関係性
人は菌やウイルスなどが体内に入ってきたとき、その異物を感知し、免疫抗体(IgE抗体)を作ります。花粉症の場合、この免疫抗体が花粉に接触する度に作られるため、少しずつ体内に蓄積されていきます。蓄積量が一定量に達すると、次に花粉が入ってきたときに、アレルギー反応を起こすヒスタミンなどの化学物質が分泌され、くしゃみ、鼻水、目のかゆみといった花粉症の症状を起こします。
また、症状を発症する原因には、食生活や自律神経の乱れによる免疫バランスの低下も挙げられます。免疫システムは様々な免疫細胞が担っていますが、その約7割が腸に集まっているため、腸内環境が良い状態に保たれていないと腸の免疫機能が低下してしまいます。腸の健康は免疫力にダイレクトに影響してくるので、睡眠や運動はもちろん、食生活の改善で腸の健康を保つことが大切になります。
専門家に聞く!花粉症対策におすすめの栄養素と取り入れ方
管理栄養士で健康検定協会の理事長・望月理恵子氏によれば、免疫環境を整え体内から花粉をガードするのにおすすめなのは、 『亜鉛』と『ビタミンB6』の組み合わせだそう。
亜鉛は、200種以上の酵素の構成や酵素反応の活性化、ホルモンの合成や分泌の調整、DNA合成、タンパク質合成、免疫反応の調節などに作用し、身体の成⻑と維持に必要な栄養素です。 また、体内に入り込んだ異物、ウイルス、細菌などを駆除する「免疫細胞(自然免疫、獲得免疫)」が、正常に成⻑し、機能するようになるまでをサポートしてくれる、免疫調整に欠かせないミネラルです。さらに、粘膜の健康を守るビタミンAの利用効果を高める働きも行っているので、花粉やウイルスの侵入を抑制して「間接的」にも免疫を助けており、花粉症に効果的な栄養素として注目されています。
ところが、亜鉛の含有量が多い食材として挙げられるのは牡蠣やからすみ、牛肉などで、高級食材や、なかなか手に入らない食材に含まれていることが多く、国内では亜鉛欠乏者が10〜30%もいると言われています。 摂取する機会の少ない亜鉛ですが、動物性タンパク質、クエン酸、ビタミンCなどと一緒に摂ると吸収を高めることができます。そのため亜鉛を含む食材をとり入れるときは、 肉、魚、卵、牛乳、柑橘類などの食べ物と組み合わせると効果的です。
一方、水溶性ビタミンの1つであるビタミンB6は、タンパク質の元となるアミノ酸の代謝に重要な栄養素で、丈夫で健康な皮膚、粘膜、髪、⻭、爪などの生育につながります。また、亜鉛とともに、免疫機能をサポートする働きがあることでも知られています。亜鉛は酵素の材料となったり、免疫のサポートなど、生きていく上で欠かせないミネラルですが、ビタミンB6がないとそれらの機能が正常に働かない為、 亜鉛にとって重要な栄養素といえます。
ビタミンB6の含有量が多い食材として挙げられるのは、かつお、まぐろなどの魚類、レバー、肉など動物性食品。また、 バナナ1本(90g)に0.34mg、米にも多く含まれるため、こちらは比較的補給しやすい栄養素といえます。
ただし、豆類や玄米などの穀物は、『フィチン酸』が多く含まれており、この成分が免疫の働きを助ける亜鉛の吸収を阻害する為、花粉症対策として、亜鉛を含む食品と食べ合わせることはオススメできません。
では、花粉症対策として『亜鉛』『ビタミンB6』を取り入れるときにいい食材はどんなものでしょうか。望月氏に聞くと、ポイントとして挙げられた食材は、ヨーグルトとニンニクでした。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、花粉症の原因となっているIgE抗体の過剰生産を抑える働きをしているため、花粉症予防や改善に繋がる可能性があると考えられます。また、腸は最大の免疫器官であり、腸内細菌の中には消化管の粘膜免疫を高めるものもあるので、腸を健康にしておくことで免疫機能が整い、アレルギー症状の緩和効果を期待できます。 おすすめの食べ合わせはビタミンB6を含むバナナで、バナナにはビタミンB6の免疫効果に加え食物繊維や難消化性デンプンも含まれているため、乳酸菌を含むヨーグルトを同時に摂ることで、亜鉛とビタミン B6に加え、乳酸菌と食物繊維の更なる相乗効果を期待できます。また、ココアにも亜鉛が豊富に含まれているので、バナナヨーグルトにココアパウダーをかけて朝食に取り入れるのもオススメです。
そして、水分を40%以上含む食材のなかで最もビタミンB6を多く含んでいる食材がニンニクです。ニンニクにはアリシンという成分が含まれており、免疫細胞であるNK細胞を活性化し、アレルギー性の過剰な免疫反応や、IgE 抗体の過剰生産を抑制する働きがあるため、花粉症の症状の緩和が期待できます。アリシンは、細胞を壊すことによって発生するため、きざむ・潰すなどして食べると効果的です。また、油で調理するとアリシンの成分そのものが壊れにくくなるといわれているので、亜鉛を含んだ牡蠣と組み合わせた、オイスターのガーリック炒めがオススメです。
薬は飲んでいるけどどうも今ひとつ調子が上がらないと花粉症の症状にお悩みの方は、食事も意識して対策してみてはいかがでしょうか。
株式会社Luce代表取締役/健康検定協会理事⻑ 望月理恵子(もちづき りえこ)氏
管理栄養士/山野美容芸術短期大学講師/服部栄養専門学校特別講師/ 日本臨床栄養協会評議員
サプリメント・ビタミンアドバイザーなど、栄養・美容学の分野で活躍。多くの方が健康情報を学ぶための健康検定協会を主宰するとともに、テレビ・雑誌などで根拠ある栄養学を提供。
「栄養学の◯と×」、「やせる時間に食べてみた!」など著書も多数発刊しており、 現在15冊目の「子どものための時間栄養学(仮)」を執筆中。
執筆/フリーライター Yuki Katagiri