ファッションやアートでサステナブルとは何かを「THINK」する、渋谷ファッションウイークが開催
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渋谷の街から「サステナブルとは何か」を問いかける、ファッションとアートの発信イベント「渋谷ファッションウイーク2024春」が、3月15日(金)から10日間にわたって開催されました。
渋谷の街からサステナブルを考えるイベント
ファッションは多様な個性や気持ちを表現し彩ることができるもの。そんなファッションに向き合う時に少しだけ意識を変えることができれば、未来への明るい可能性に繋げられるのではないかと、今回のテーマは「THINK」となっています。
さまざまな催しが行われる中、3月19日にはファッションのこれからを問いかけるパフォーマンス・ショー「THE SHOW」と、ファッションデザイナー中里唯馬さんらが登壇したトークショー「THE TALK」が、渋谷駅東口地下広場にて開催されました。
「THE SHOW」は、大きな気候危機やパンデミック、戦争などさまざまな現実を前にファッションがなせることは何かを考え、勇気と志を持った未来のファッションデザイナーを発掘し育む「FASHION FRONTIER PROGRAM」とのコラボレーション。ファッションから真のサステナブルを問うパフォーマンス・ショーを行いました。
ファッションがもたらす環境負荷の8割は、デザインのプロセスで決まってしまうと言われているそうです。そこで、デザイナーがデザインのプロセスを工夫しておけば、環境負荷を抑えることができるのではないかと、さまざまな試行錯誤やデザイナーの意識を変えられるようなアイコニックな提案、学びの場を提供するためにファッションデザイナーの中里唯馬さんが発起人となってスタートしたのが「FASHION FRONTIER PROGRAM」です。
インスタレーション中央には、中里さんが手掛けたデザイン「アトラス」が展示されていました。こちらは、バイオベンチャー企業「Spiber」が開発した、植物由来の原料をもとに微生物の発酵によって生まれた人口タンパク質素材「Brewed Protein™」を使ったクチュール衣装で、環境負荷の少ない新素材で作られています。この素材は非常に縮みやすい特性を持っており、その縮み方をコントロールして長方形に切り出した素材を水分に浸けることで、立体的なデザインがたちあがるように工夫しているそうです。
ショーでは、リサイクルオーガンジーやペットボトルを再利用して作られた衣装や、落ち葉や枝を使った衣装。循環する洋服とはどのようなものかを模索した作品や、新素材を活用し新しい時代のファッションをクリエイトした作品など、意欲的な15名のデザインがランウェイに登場。道行く人も思わず足を止めて、個性的なデザインに目を奪われていました。
未来に希望を見出すためのチャレンジ
続いて「THE TALK」では中里唯馬さんと、彼に密着したドキュメンタリー映画『燃えるドレスを紡いで』を監督した関根光才さん、事務局長の寄本健さんを招いて、トークセッションが行われました。ファシリテーターはクリエイティブディレクターの田中ヒロさんが務めました。
渋谷ファッションウイークの開催意義について、寄本事務局長から「日本から、みんなで考えていけるような取り組みを広げていくには、クローズドな場所ではなく、オープンな場所で見せていかなければならない。渋谷のさまざまな場所からチャレンジして発信していくよう、渋谷ファッションウイークでは取り組んでいます」とコメントし、街中のオープンな場で提示していくことで考えるきっかけにしてほしいと話しました。
映画『燃えるドレスを紡いで』は、大量生産・大量消費により環境負荷がもっとも高い業界のひとつと言われているファッション産業に変革をもたらそうとした中里さんの姿を追ったドキュメンタリー作品です。世界中から衣類ゴミを押し付けられているケニアに中里さんが赴き、その現実と向き合いながら新しいデザインの在り方を模索して、パリ・コレクションに臨むストーリーとなっています。
関根監督は「中里さんに別のプロジェクトでお会いしたとき、クリエイターとして共感するところがありました。そして、大量に破棄されているという”服の墓場”を、一度ちゃんと見ておきたいというお気持ちを聞いて、そこからどんなインスピレーションが生まれてくるのかを、1年間ほど張り付いて映画にしました」と、中里さんへの共感からこの映画は始まったと語ります。
そして中里さんは「絶望的なもので終わるのではなく、何か未来へのヒントを見つけたいという想いがありました。テクノロジーを使って、価値としてはゼロ以下になってしまったものから、オートクチュールというもっとも高価な、価値あるものをもう一度作っていくチャレンジを、ずっと追っていただきました」と、大量廃棄の実情に絶望するのではなく、未来へのヒントを見つけ出すようなものにしたかったと話しました。
渋谷の街をカラフルにドレッシング
渋谷ファッションウイークでは、渋谷の街のさまざまな場所でインスタレーションやアート体験が提供されました。
渋谷各所を彩ったカラフルなストライプは、タンパク質を構成するアミノ酸20種類を、20色のストライプで表現したものです。渋谷ファッションウイークの中でも象徴的なもののひとつである中里さんデザインの「アトラス」に使われた新素材「Brewed Protein™」にちなみ、渋谷の街を20色のストライプでドレッシングしました。
渋谷ハチ公像は、日本の伝統工芸「水引」から作った「THINK」の繋がりを表現したオリジナル衣装を期間限定で着用しました。
また休館中のBunkamuraでは、インスタレーションが特別展示されました。地下1階からの象徴的な吹き抜けには、国内外で活躍するアーティスト西野達さんが手掛けたキラキラと光を反射する「ミラーボールファニチャー」が、様々な音楽家から愛された旧Bunkamura Studioでは、サウンドアーティストevalaさんによる無数に張り巡らされたケーブルとさまざまな音が流れるスピーカーの音に没入する体験型アート「Sprout」がされました。
このほかにも、旧東急百貨店本店の壁面を使ったプロジェクションマッピングやMiyashita Parkでのファッション物産展など、さまざまな催しが行われました。
人の暮らしの中で、衣類をはじめとしたファッションは切り離せないもの。何気なく身に着けている服やアクセサリーを、サステナブルな未来について考えてみるきっかけにしてはいかがでしょうか。