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必要な栄養素はとれてる?夏バテだけじゃない、夏のだるさの原因を正しく理解して適切な対処を!

必要な栄養素はとれてる?夏バテだけじゃない、夏のだるさの原因を正しく理解して適切な対処を!

#SHOW CASE

真夏の厳しい環境下。体がついていけず、体調不良を起こしやすい時期です。この時期の不調といえば「夏バテ」のイメージが強いですが、ここで注意したいのが「夏バテ」と似た症状を持つ「貧血」。 夏は汗で鉄分が流れてしまうため、特にスポーツをしている人や代謝が良い人は鉄分不足により貧血を起こすことが多いといわれています。

貧血は夏バテと症状が似ていても原因や対処方法が異なります。今回は、その違いを明確にし適切な対処ができるよう、それぞれのメカニズムや原因、そして予防のために必要な栄養素について専門家の田中清先生に伺いました。

夏バテかと思ったら貧血?夏バテと貧血の違いを知って正しい対策を

症状が似ているため間違われやすい夏バテと貧血。原因や予防方法は異なり、それぞれ放置することで重症化してしまう恐れもあります。いち早く不調の原因を突き止めるためにも、それぞれ何が原因で起こるのか、違いを明確にする必要があります。

暑さで体力が消耗し、体のあちこちに感じる不調のことを総称する「夏バテ」。気温が高くなると私たちの体は その気温に適応しようと調整を試みますが、その調節が上手くいかなくなることによって疲労や体力低下を引き起こします。これが、脳貧血が原因による夏バテです。気温に適応するために、体温や血圧を調整する自律神経に負荷がかかることでバランスが崩れ一時的に血圧が低下、さらに血液を心臓に戻す機能が低下して脳に十分な血液が流れなくなることで 起こります。また、猛暑が続くことで大量の汗をかきやすくなりますが、汗をかくことでナトリウムやミネラルなどの栄養素が失われることも、夏バテ状態を起こす原因の一つです。 急に立ち眩みが起きた場合は可能であれば、すぐにあお向けに寝て足を上げ、頭が下がる体形で安静に。寝転ぶのが無理な場合は、さっとその場で座って頭を低くするのがおすすめです。

一方「貧血」は、血液中の赤血球の数が少なくなった状態のことで、めまい、動悸、息切れなどの症状が現れることをいいます。赤血球のなかにはヘモグロビンと呼ばれるたんぱく質があり、肺で受け取った酸素を全身に運ぶ役割を担っています。そのため、赤血球の数が減るとヘモグロビンの数も減ってしまい、酸素供給が不十分になります。貧血により酸素が不足する分を補おうと心臓や肺が無理をすることで動悸や息切れを起こします。 また、赤血球の生産低下の原因として挙げられているのが、「鉄」や「ビタミン B12」、「葉酸」などの栄養不足です。特に大量の汗をかくことで「鉄」も一緒に流れてしまうことから、この時期は鉄欠乏による貧血症状に悩まされる人が多いと言われています。

・貧血セルフチェック
貧血は間違った判断により貧血と気が付かず放置してしまうことで、心臓や脳に負担がかかり心筋梗塞や記憶障害など、 重篤な病気にかかってしまう可能性がある危険な症状です。セルフチェックで、チェック項目が多かったり、気になる項目がある場合は速やかに医療機関を受診する事をおすすめします。

-チェック項目-
□めまいや立ちくらみがする 
□吐き気を催す 
□頭痛がある 
□アルコールを飲むことが多い 
□眠気を感じる 
□顔色が悪く、冷える 
□下痢が続く 
□月経前、月経になると貧血を引き起こす 
□爪が脆く、些細な衝撃で割れることがある

貧血の種類別の症状や原因、予防のためのポイントは?

脳や体全身に酸素が行き渡らなくなることが原因でめまいや立ち眩みを発症する貧血ですが、貧血にはさまざまな種類があり、その種類によって原因や予防方法は異なります。

主な貧血の原因と言われているのは鉄欠乏による「鉄欠乏性貧血」。基本的に、鉄は古くなっても再利用される為、減少することはほとんどありませんが、妊婦や授乳婦の方の鉄需要の拡大や、慢性的出血による鉄の喪失によって鉄不足が発生し、鉄欠乏性貧血を引き起こすことが多いです。また、鉄は汗と一緒に流れてしまうため、特にこの時期や、激しい運動を行うアスリートの方は鉄欠乏性貧血を起こしやすいと言われています。 

実際に、慢性的出血が原因とした鉄欠乏性貧血は圧倒的に多く、閉経前の成人女性は月経により定期的に鉄を喪失するため、鉄欠乏状態になりやすく、およそ10〜20%の高い頻度で鉄欠乏性貧血を発症していると言われています。その為、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」において鉄摂取の推奨量 (18〜49 歳)は、男性 が 7.5mg/日に対して、女性(月経あり)は 10.5mg/日と高めに設定されています。

鉄欠乏性貧血は圧倒的に女性に多いですが、男性患者において鉄欠乏性貧血を認めた場合には、がんや潰瘍による消化管出血など、隠れた基礎疾患を疑う必要があります。また女性でも、子宮筋腫が隠れている可能性もあります。 ほとんどの貧血は徐々に進行するので、本人が強く自覚症状を感じないことは少なくありません。その為、他の病気が隠れていた場合でも発見が遅れてしまう可能性があるので、定期的に血液検査を受け、少しでも気になる数値が出た場合は、 早急に医療機関で受診することをおすすめします。

また、鉄不足だけでなく、ビタミンB12や葉酸の欠乏により発症する「巨赤芽球性貧血」も注目されています。 酸素を全身に運ぶ役割を持つ赤血球を作るうえでビタミンB12や葉酸は必須の栄養素ですが、様々な原因によってこれらの栄養素が不足する場合があります。特にビタミンB12は非常に吸収障害の起こりやすいビタミンといわれており、食品中のビタミンB12は胃酸・ペプシンにより食品から遊離し、内因子という胃から分泌されたタンパク質と結合して吸収されるため、ビタミンB12の吸収には胃の健康が不可欠になります。その為、胃切除後や、胃の健康状態が良くない高齢者の多くが食品からうまく摂取できずビタミンB12欠乏を起こしていると言われています。 

夏の貧血対策に欠かせない栄養素「鉄」「ビタミン B12」の効率的な摂取方法

貧血の改善策として重症になってくるのが食生活の見直しです。
鉄欠乏性貧血の予防に欠かせない栄養素はやはり「鉄」。鉄は赤血球の材料になり、全身に酸素を運ぶ役割を担うミネラルで、これが不足すると貧血を発症します。

鉄には動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄はレバーや赤肉、赤身の魚など、動物性食品に多く含まれる鉄分です。ヘム鉄の特徴は、人間の体への吸収率が25%程と高い吸収率を促します。非ヘム鉄は野菜や豆乳、穀物、海藻、卵、乳製品などに多く含まれています。非ヘム鉄は、吸収率は3〜5%程と、ヘム鉄よりかなり低いですが、オレンジやキウイフルーツ、イチゴなどの果物や、パプリカやブロッコリーといった野菜など、ビタミンCを含む食品と一緒に摂ることで吸収率を高めてくれます。
同じ鉄分でもヘム鉄と非ヘム鉄では特徴が大きく違うため、特性を理解して摂取することが重要です。また、カフェインは鉄の吸収を阻害する可能性があるため、貧血気味の方は食中、食後のコーヒーやお茶を控えた方がよいでしょう。

そして、巨赤芽球性貧血の予防に欠かせない栄養素は「ビタミンB12」。ビタミンB12は補酵素(酵素をサポートする成分)として、脂肪酸代謝、核酸代謝、葉酸の代謝に関わっています。さらに正常な赤血球の産生、脳神経および血液細胞など、多数の体内組織の機能や発達を正常に維持するために必要な栄養素です。

ビタミンB12を摂り入れるためには、日々の食生活にそれらを多く含む、さんま・さば・いわしなどの⻘魚や、あさり・しじみ・レバー・赤身肉・卵などを摂取するとよいでしょう。ビタミンB12は水溶性のビタミンのため、スープなどまるごと食べられる調理法や汁ごと使える缶詰などの利用が効果的です。
また、ビタミンB12は小腸で吸収される際に胃壁から分泌される「内因子」という物質を必要とするため、慢性的に胃炎がある方などはこの内因子が不足することによって吸収されにくくなります。さらに高齢になると、萎縮性胃炎などで胃酸分泌量が低下していることが多く、食品中に含まれるビタミンB12の吸収率が減少するため、食事からの吸収が難しい場合はサプリメントの摂取もおすすめです。

日々の健やかな暮らしのためには、小さな不調も見逃さず、適切に対処することが大切です。「夏バテ」の一言で片付けず、夏のだるさの原因を正しく理解して、健康的な毎日を過ごしたいですね。

・監修者
静岡県立総合病院リサーチサポートセンター 臨床研究部⻑ 田中清(たなか きよし)氏


執筆/フリーライター Yuki Katagiri

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