世界を繋ぐ唯一のオーシャンライナー「クイーン・メリー2」と大西洋横断の歴史
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飛行機よりもはやく世界に登場し、古くから海と海、国と国、人と人とを繋げていた船。クルーズ船の登場で、冒険家ではない一般の人たちも望めば世界中を旅することができるようになりました。
ラグジュアリー・クルーズ・ラインとして知られるキュナードは、1840年の創業から184年続く、歴史ある英国のクルーズ会社。そんなキュナードにとってのフラッグシップである「クイーン・メリー2」が先日、8月23日ニューヨーク(米国)発、8月30日サウサンプトン(英国)着の航海で、大西洋横断クルーズ400回を迎えました。
歴史的に貴重な船、クイーン・メリー2
2004年にデビューしたクイーン・メリー2は、今年でデビュー20周年。デビューした年から今日まで大西洋横断クルーズを運航してきました。
現在、クイーン・メリー2は、世界で唯一現存するオーシャンライナーと見なされています。オーシャンライナーは、遠洋航路の定期船、外洋航路船として大西洋の荒波の中でも船旅ができるように造られた強固な船体が特徴です。
クイーン・メリー2が大西洋クルーズ400回記念を迎えたニューヨーク発、サウサンプトン着のクルーズでは、作家やクイーン・メリー2の設計に携わった建築家などの特別トークショーが行われました。
人々の大西洋横断の歴史
大西洋を初めて横断した人物とその時期については様々な説がありますが、有力なものは探検家クリストファー・コロンブスの1492年の航海、10世紀のバイキング、18,000年ほど前の石器時代のヨーロッパ人などです。コロンブスと乗組員が1492年に大西洋を横断した時は、簡素な船だったため約2か月かかったとされるなど、かつての探検家たちの航海は数か月以上かかったと言われています。
大西洋横断において船旅専用に造られた世界初のオーシャンライナーは蒸気船グレート・ウェスタンで、1837年に進水しました。この船は大西洋を航海するのに15日ほどかかりました。それからわずか3年後、最初のキュナードのブリタニアが14日間で横断を実現。これを受け、キュナードはリバプール(英国)、ハリファックス(カナダ)、ボストン(米国)間で2週間に一度の郵便定期便の運航を開始しました。
年月が経ち、より短期間で船旅ができるようになり、企業はスピードを競うようになりました。そして、20世紀半ばには大西洋横断にかかる期間は通常5日間ほどになりました。“クルーズは楽しめるものであるべき”という考えのもと、現在キュナードの大西洋横断クルーズは通常7日間になっています。
「クルーズの黄金時代」の到来も!レジャーとしての大西洋横断
キュナードの大西洋横断の航海は1840年にブリタニアによって初めて運航されましたが、レジャーとしての大西洋横断クルーズは、そのずっと後になってからです。初めて専用クルーズ船が誕生したのは1900年でした。
大西洋横断クルーズやその他のクルーズ船での船旅は、1950年代に「クルーズの黄金時代」と呼ばれ、高い人気を誇りました。この時期のクルーズは、ダンスやドリンクを楽しみ、著名な人々が集うラグジュアリーな社交イベントとなりました。1950年、キュナードは、ジュディ・ガーランド、フランク・シナトラ、エリザベス・テイラーといった有名人を招いた全米スター・クルーズというものを開催したという記録も残っています。キュナードは現在もクイーン・メリー2で年間を通して大西洋横断クルーズの運航を続けています。
人々の大西洋横断には長い歴史がありますが、今も日々海を渡り数百の航海を続け、国と国、人と人とを繋げるキュナードは、人々が国境を越え、歴史を学び、互いを理解し合う機会をつくっていると言えます。
多くの人が世界をよく知り、わかり合うことで、人や国の不平等を無くしていくことができます。
次はあなたも、キュナードの船で世界を旅してみませんか。
執筆/フリーライター Yuki Katagiri