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伝統祭りを未来へ! おわら風の盆×推し活の新収益モデル


この記事に該当する目標
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
伝統祭りを未来へ! おわら風の盆×推し活の新収益モデル

祭りといえば全国各地で開催されており、その地域の風習が見えてくる特徴的なものも多いです。長年にわたって受け継がれてきた伝統ある踊りや特別感のある屋台が楽しめることもあり、地元の方はもちろんのこと、他県や海外からたくさんの人が足を運ぶ祭りもあります。
ですが、そんな祭りのにぎやかさとは裏腹に、主催する側が頭を抱えている課題も少なくありません。

富山県の祭りである中八尾おわら風の盆では、流行の推し活でその解決を目指しています。ここでは富山県が行っている新たな祭りの収益化モデル構築に向けた新鮮な取り組みをご紹介します。

日本のお祭りの課題

現在、日本全国で行われている祭りの数は約30万件といわれています。

その祭りで抱えている課題の一つが、担い手不足に関することです。日本は少子高齢化や地方の過疎化といった影響を受け、祭りの担い手が不足しています。
町おこしなどのために地域の祭りを盛り上げたいと考えていても、うまくいかず、悩んでいる自治体も多いようです。
地元以外からも参加を認めたり、これまで男性のみで行っていた祭りで女性の参加を認めたりするなどして各地で対策がとられています。

また、資金不足も大きな課題です。祭りの規模が大きいほど多額の資金が必要になります。
自治体の予算をあてたり、寄付金を集めたりすることも一つの方法ではありますが、継続可能な収益化モデルを検討しなければ祭りの継続・継承は難しくなっていきます。
自治体の予算や寄付金だけに頼ってしまった場合、何らかの要因によって資金が底を尽き、祭りを継続できなくなってしまう可能性も高いです。

実際にこれらの課題によって中止を余儀なくされたり、規模を縮小して開催したりしている祭りも増えています。将来的なことも考えると、今年の祭りはどうするかではなく、今後どのような形で継承していくかを考えなければなりません。

富山のお祭りの課題解決策「祭りで富山を元気に!」プロジェクト

富山県のお祭りである越中八尾おわら風の盆でも、同様の課題を抱えています。
越中八尾おわら風の盆は毎年9月1日から3日にかけて大々的に行われる行事です。顔が見えないほど編み笠を目深にかぶった男女が音楽や越中おわら節の唄に合わせて町を流す姿は、何とも幻想的です。

毎年多くの観光客が訪れ、たくさんの人でにぎわいます。
古くから続く伝統ある行事でもある越中八尾おわら風の盆は、観光庁の補助事業である『富山県の「祭りで富山を元気に!」歴史ある伝統的な祭りを未来につなげるプロジェクト事業』対象の一つにも選ばれました。

上記事業は、越中八尾おわら風の盆のほか、津沢夜高あんどん祭(6月:小矢部市)、たてもん祭り(8月:魚津市)、新湊曳山まつり(10月:射水市)の4件の祭りと獅子舞が対象です。

越中八尾おわら風の盆は、3日間で約20万人が訪れる人気の祭りなのですが、ほかの祭りと同様に人手不足と資金不足に悩んでいました。
祭りを開催するにあたり警備員を配置する必要があるほか、交通整備も行わなければなりません。他にも観光バスの受け入れなど、祭りはもちろん、祭りに関連する部分でも多額の費用がかかります。

この問題を解消するために取り組むことになったのが「祭りで富山を元気に!」プロジェクトです。
このプロジェクトは、各自治体や祭りによって異なる特性に合わせて収益化する仕組みを構築し、祭りが抱える人手不足や資金不足の課題解決を目指します。

富山県初「推し活」モデルを導入「おわら風の盆」

プロジェクトとして、おわら風の盆で実践したのが、富山県初の推し活を利用した収益化モデルです。この推し活では、おわら風の盆が行われる11の町それぞれを推すうちわや、祭り全体を推すハコ推し用のオリジナルうちわを販売しました。祭り自体を商品として扱う新たな取り組みです。

数量限定で地元の伝統工芸である八尾和紙を使用した少し高価なうちわも販売されました。

さらに注目したいのが、丸山敬太氏(KEITAMARUYAMA)がデザインし、コラボする形で用意されたオリジナル手拭いや、和をモチーフにしたオリジナル手拭いです。世界的な活躍を見せるファッションデザイナーである丸山敬太氏ならではのステキな作品は、越中八尾おわら風の盆を知らない人でも手にしたくなる魅力があります。

祭りに関連した運営・継承のための寄付も募りました。寄付金額は任意で設定できますが、3,000円以上の支援で祭り当日に会場を訪れるとオリジナルグッズがもらえるのが特徴です。そのため、自然に3,000円以上の寄付を検討できる仕組みを作っています。

越中八尾おわら風の盆の伝統文化と、地元のイラストレーター坪⽥千⽣さん、さらにはグローバルに活躍する丸山敬太氏によるデザインの融合で新たな層の関心を引き、収益化を図る取り組みです。

また、食事付き特別ステージ鑑賞、町屋貸切などの特別観覧プランも販売しました。地域の輪踊りへ参加できるプランがあるほか、すべてのプランで通訳による解説・案内も行われ、海外の方も贅沢に楽しめるように考えられています。

お祭りでの収益化モデルを作ることで、地域文化を継承できるように考えられました。伝統的なお祭りを地域産業の新たな柱とするためにも効果的な取り組みです。
収益化による次世代の担い手育成や地域産業基盤の強化を目指すための取り組みでもあります。

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、産業を支えるインフラを整備することが重要としています。インフラを整備するためには資金が必要です。
今回紹介した収益化モデルでは、祭りの収益化によって、地域経済に新たな収入源をもたらすことが期待されます。これにより地域の経済基盤はもちろん、インフラを強化することも可能です。

また、うちわや手拭いは現地での販売の他、オンラインでの販売も行われています。デジタル技術を活用した資金調達も目標9が定める技術革新の促進につながるポイントです。

まとめ

今回紹介したおわら風の盆を通じた収益化モデルは、地域文化の継承と産業の発展を両立できる取り組みといえます。冒頭で紹介したとおり、日本全国では祭りが約30万件あるとされており、その多くで担い手不足や資金不足に悩んでいる状況です。
同様の取り組みは仕組みさえ作ればどこでも実施可能なので、今回の収益化モデルは他の祭りや伝統行事でも応用可能なモデルとして期待されます。

お祭りを通じて地方創生を成し遂げるためのアイデアとして、様々な地域・祭りで役立てることができそうです。

関連リンク:おわら風の盆公式HP(一般社団法人 越中八尾観光協会)