金融サービス業界における消費者に信頼されるビジュアルとは
日本人の「金融リテラシー」=「お金に関する知識や判断力」が他国と比較して低いと言われている中で、徐々に個々人の貯蓄や資産形成に関する知識なども向上してきているように思います。また金融サービス業界においては、サステナビリティやDEI、テクノロジーといった関心も高まり、ビジュアルコミュニケーションにおいて考慮すべき事象になっています。
今回はそのような背景を踏まえながら、金融サービス業界において消費者から信頼を得られるビジュアルについて、iStockの検索トレンドやビジュアルに関する消費者意識調査「VisualGPS」を踏まえて考察しました。
高まる消費者の金融リテラシー
金融サービス業界におけるビジュアル選択においては、クレジットオプション、非課税投資、通貨安、長期的なファイナンシャルプランニングに焦点が当てられており、日本の消費者の「金融リテラシー」の向上と資産管理を反映していることがわかりました。より多くの金融に携わる企業やブランドが、消費者が経済的に安定した将来を確保するための金融ツールや戦略を模索していることを示唆しているのではないでしょうか。
iStockにおける金融サービス業界における金融関連検索ワードの増加結果(2023年9月~2024年9月)
- 「クレジットカード」+2000%
- 「NISA」+95%
- 「円安」+76%
- 「資産形成」+54%
- 「暗号資産」+86%
「サステナビリティ」や「AI」テクノロジー…金融サービス業界におけるトレンドとは?
サステナビリティやDEI、AIといった直接的にあまり関係のないと思われるトレンドについても、顧客を取り込むという意味で金融サービス業界においては重要視されています。まず、環境への責任と持続可能な生活への強いコミットメントを強調する「サステナビリティ」。脱炭素や自然に関連するキーワード検索数の増加は、日本の金融サービス業界が二酸化炭素排出量の削減や自然とのつながり、環境問題への取り組み、生物多様性の保全をより重視していることを示しています。
iStockにおける金融サービス業界における環境関連検索ワードの増加結果(2023年9月~2024年9月)
- 「脱炭素化」+575%
- 「自然」+600%
- 「環境」+113%
- 「生物多様性」+200%
次にテクノロジーに関するトレンドを見ると、AI、ロボティクス、サイバーセキュリティ、クラウドソリューションへの関心を示していることがわかり、イノベーションとデジタルトランスフォーメーションの推進を示唆していることが見受けられます。また「生成AI」や「人工知能」といった検索件数が増加していることからもわかるように、金融サービス業界では先進的な技術を、ブランドの事業運営に積極的に取り組んでいることもわかりました。
iStockにおける金融サービス業界におけるテクノロジー関連検索ワードの増加結果(2023年9月~2024年9月)
- テクノロジー+222%
- 生成AI+567%
- 人工知能+283%
- ChatGPT+60%
- イノベーション+300
- サイバーセキュリティ+100%
- クラウド+175%
また「DEI」に関する検索結果が増加していることも、インクルーシブで多様なビジュアル表現へ注力していることを強調しています。チームワークや家族構成に関する検索件数の増加は、より協力的な職場環境や家族の絆を重視する文化的な変化を示唆しています。「新社会人」の検索数の急増は、新社会人が直面する課題と機会を浮き彫りにしており、支援的で包括的な社会環境を反映しているのかもしれません。
iStockにおける金融サービス業界におけるDEI関連検索ワードの増加結果(2023年9月~2024年9月)
- 「チームワーク」+278%
- 「日本の家族」+214%
- 「新社会人」+1000%
金融サービス業界では生成AI画像を受け入れられない傾向も明らかに
一方で、実際のビジュアルコミュニケーションという点を見ると、人間がカメラで撮影した「本物」のビジュアルが使用されることが好まれていることがわかりました。「VisualGPS」によると、金融サービス業界において、「生成AI画像を受け入れる」と回答した日本の消費者は9%(世界では15%)にとどまり、9割の消費者にとって、金融サービス業界においては生成AI画像を受け入れられない傾向があることがわかりました。
AIロボットより人間のアドバイザーを信頼する人が7割
またVisualGPSによると、日本の消費者の7割以上が、「AIを活用したロボットアドバイザーよりも人間のファイナンシャルアドバイザーを信頼する」と回答しています。実店舗を持つ金融機関に対してより信頼性が高い可能性があることがわかりました。「商品やサービスを購入するかどうかを決定する際に最も重要なことが『信頼性』である」と答えているのが、世界全体では6割であるのに対して、日本では8割に上っています。日本では、「信頼できる評判を持っていること」や「自分の価値観や信念と一致していること」が、他の国々と比べても重要視されています。
日本の消費者からの信頼を得られるビジュアルとは?
AIなどのテクノロジーを金融業界でも取り入れている一方、人間同士のコミュニケーションにより信頼性をおいていることがわかりました。日本では、「本物」の画像や動画が信頼を築く上で重要だという意見が大多数です。日常的で親しみやすい人々や瞬間を見せるリアルで未加工のビジュアルに加え、製品やサービスが生活にどのように溶け込むのかを示すことで、購買意欲を刺激します。
①リアルな人間の温かみを、そのままの不完全さで表現しましょう
人々は、不完全さや人間生活の微妙なニュアンスを価値あるものと捉えています。それはAIでは簡単に再現できないものです。より個性的な人間体験の物語を表現し、人間の多様性や不完全さを祝福しましょう。
②驚きのある物語を伝えましょう
最も印象に残るビジュアルは、見た人が共感を得るものです。最も記憶に残る方法はストーリーテリングを通じた繋がりを生むことなので、「まだ見たことのない物語や予想外のストーリーをどのように見せられるか」を考えてみてください。例えば、男性は一般的に「お金を管理する役割」として描かれ、女性は「買い物を通じてお金を使う役割」として描かれることが多いという固定観念を打ち破りましょう。最新のVisualGPS調査結果によれば、日本の女性の68%が家庭の銀行業務、投資、住宅ローン、または保険に主に責任を持つか、責任を共有していると答えています。こうした現実的で、あまり見られないビジュアルストーリーを示しましょう。
③インクルーシブな表現を構築しましょう
どのような物語を語るかについて具体性を持つことに力があります。本物で立体的に感じられる人々を描いたビジュアルを選びましょう。iStockでダウンロードされたビジュアルの傾向を見ると、日本では障害を持つ人やLGBTQ+コミュニティの人々を描いたビジュアルは1%未満であり、60歳以上の人々が財務を管理したりお金を使ったりしている姿を描いたビジュアルは5%未満です。こうした人々のリアルな生活を描くことで、より多くの人々が自分のような共感を持てるビジュアルを見つけられるようになります。
④プロフェッショナルな撮影を通じて信頼を築きましょう
アーティストやフォトグラファーなどプロフェッショナルによって制作された画像には、本物らしさへの信頼が生まれます。つまり、ビジュアルの作り込みが重要であり、それが信頼性を高めます。
アイキャッチ画像 1472474235,Erdark,iStock