「移動本能」を刺激する2軸のモビリティを展示――大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンに川崎重工が協賛
世界各国から多種多様な展示やイベントが行われるEXPO2025大阪・関西万博が、2025年4月から10月にかけて、大阪・夢洲にて開催されます。その中でも、注目したいパビリオンは、未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市(以下、「未来の都市」)。「未来の都市」パビリオンは、2025年日本国際博覧会協会と12者の企業・団体による共同出展で、「幸せの都市へ」をテーマに、経済発展と社会課題の解決の両立を目指した、未来の都市の姿を描くパビリオンになっています。
船舶や鉄道車両、航空機、モーターサイクルやロボットなど、輸送機器や機械装置を製造する川崎重工は、「未来の都市」に協賛し、「移動本能」をテーマにした「交通・モビリティ」分野への出展を行う予定です。展示ではパーソナルモビリティとマスモビリティの2つの観点から、未来の都市での移動がどのようなものになるのかを展示していきます。どのような意図で万博への協賛をしていくのか、川崎重工の村上敬祐さんと天辰祐介さんに、その狙いや想いをお話しいただきました。
社会課題やニーズを敏感に捉え、ものづくりで応える川崎重工
川崎重工は1896年の創立以来、ものづくりを中心に発展してきました。創立の18年前となる1878年、東京・築地に川崎築地造船所を開設し、造船業に着手。以降、船舶だけでなく、潜水艇、航空機、ヘリコプター、機関車、新幹線など、当時の最先端技術を駆使して、その時代のニーズに寄り添ったものを作り続けています。アジア初の天然ガスの輸送船の建造や国産初の産業用ロボットの製造といった、日本初、アジア初といったものも多く手掛けてきました。近年では航空宇宙、ジェットエンジン、プラント関連などの開発も行っているほか、モーターサイクルなどの生産も行っています。
「川崎重工は2030年に向けた長期ビジョン『つぎの社会へ、信頼のこたえを~Trustworthy Solutions for the Future~』を掲げ、社会課題やニーズを敏感に捉え、スピーディに適応してソリューションを提供することを事業の中核にしています。その中でも『安全安心リモート社会』、『近未来モビリティ』、『エネルギー・環境ソリューション』の3つを柱とし、注力しています」
「未来の都市」パビリオンでは、政府が提示する「Society 5.0」をベースにして、大きな1つのストーリーを作っていますが、川崎重工もその方向性に大きく共感。神戸に本社を構える関西の企業として、また、グループビジョンを表現する場として、ぜひ参画したいと考えたそうです。
「せっかく関西で万博が行われるのであれば、私たちの未来像を何かお示ししたいと考えました。ですが、1社だけで未来社会のすべてを示すことはできません。そこで、12者が集まって構成される「未来の都市」パビリオンに着目しました。当社は、業界の垣根を越えて未来を一緒に作るという事業方針を掲げていますし、そういう観点からも方向性が一致しておりましたので、参画を決めました。参画する12者が今ある課題を解決するソリューションを表現したら、ワクワクする未来を来場者に見てもらえると思っています」
テーマは「移動本能」、それはあなたのDNAにも刻まれている?
ひとには移動することで幸せを感じる仕組みがDNAの中に存在するという研究結果や、初めての場所に移動して感じたシアワセは強く記憶されるという研究結果があります。川崎重工では、それらの研究結果を基に考えた「移動本能」をテーマに、サステナブルモビリティを展示します。
「コロナ禍があって、移動がパタッと止まった時に、完全リモートにして移動なんていらないのでは?という議論が積極的にされていました。ですが実際は、移動を伴い、会って話すことの必要性が見直され、移動して生まれる結果の価値が上がったように思います。今回の展示内容を話し合う中で、やはり移動は人類に必要不可欠なものというところにたどり着き、それを一言で表現したものが『移動本能』でした。また、私達輸送機器メーカーは、ひとの「移動本能」を満たすために様々なモビリティを生み出し、ニーズに合わせて進化させていると考えると、まさにぴったりな言葉だと思っています。」
食欲を満たすために食べ物があって食事をするという本能はきっと未来永劫、変わりません。モビリティも、移動をしたいという本能がある限りは必要だということ、そしてその本能を刺激する未来のモビリティを、今回の万博で展示します。展示に向けては、100人を超える有志メンバーで検討を始め、23年9月に組織化されて本格的に始動。極論、数十年後に輸送機器メーカーは必要なのか、という根本的なところから話し合い、より自由な移動を実現するパーソナルモビリティと、陸海空をまたぎ、より快適な移動を実現するマスモビリティという2軸での展示が決定しました。
「展示プレイスそのものを作品として、テーマを表現するという方法もあるかと思うのですが、私たちはモビリティを実物大で披露することを意識しました。今ある社会課題を解決する1つの可能性がモビリティなので、それが一番映える表現にしています」
展示するモビリティは、コンセプトモデルではあるものの、可能な限り実際のものづくりと同じメンバーで挑んでいます。航空機や鉄道車両、船舶、モーターサイクルといったグループ内の各モビリティのスペシャリストを集めて設計し、特許も取得して、決して絵空事ではない、現在から繋がっている未来を見据えたモビリティを作りました。
「パーソナルモビリティは、当社のモーターサイクルファンの期待を裏切らないものであり、かつモーターサイクルに乗っていない人でも「乗ってみたい」と共感してもらえる面白い提案をしたいと思い企画しました。モーターサイクルの良さを出しつつ、安全に楽しく乗れるモビリティということをしっかり表現したいです。マスモビリティは、公共交通機関としてより安心で快適であること。そして、誰にでも優しくて快適な移動となるような仕組みを企画しました。公共交通の事業者側でも様々な工夫がされていますが、私たちはメーカーの立場からできることをモビリティの形で表現していきたいと考えています」
未来のエネルギーはCとOとHをマネジメントすることが重要
モビリティには、温室効果ガスの排出など環境負荷に関する課題がつきまとうもの。川崎重工では、水素(H)を動力にすることで、環境に負荷をかけない移動を実現できるとして研究開発に取り組んでいます。
「当社は、約50年前に種子島宇宙センターに、ロケット燃料に使われるマイナス253℃の液化水素を貯蔵するタンクを納めた実績があり、水素に関する長年の知見やノウハウがあります。現在、世界中のインフラのベースとなっている液化天然ガスの温度は、マイナス162度。液化水素では、更に約90度低い温度に対応可能な技術開発を進めていくという事になります。
また、天然ガスと水素をブレンドして使うことも可能で、徐々に水素専用にしていくこともできます。水素をエネルギーとして活用できるようになれば、CO2削減を推進することができるようになります。
近年はゼロカーボンが推し進められ、CO2削減のためにさまざまな取り組みが行われています。そのため、CO2が悪いもので排除しなければならない、という印象を持っている人もいるのではないでしょうか。実際のところは、大気中に放出されるCO2をマネジメントしていくことが大切で、そのツールとして水素が着目されています。
「エネルギーは、CとOとHがくっついたり離れたりすることで作ることも可能で、大きく俯瞰して考えてみると、要はそれをどうマネジメントしていくかということ。今はエネルギー利用時のCO2の排出量が多すぎるので、それをなくすためにHを使っていこうというのが今の発想です。」「家庭で電気を使う時に、スイッチを入れれば使えるというのは変わらなくていいし、それがH由来かどうかはメーカー側がしっかりとコントロールすべきこと。利用者は無関心で、あまり考えなくてもいい社会を目指したいですね」
CとOとHをマネジメントするという考え方の中では、CO2も必要なもの。CO2由来の繊維など、CO2を使った製品の研究も行っているそうです。このような発想の製品は、川崎重工だけで実現できるものではありません。
新しい取り組みを具現化していく場所として、東京・羽田にソーシャルイノベーション共創拠点CO-CREATION PARK「KAWARUBA」が作られています。こちらでは企業や組織の垣根を超えて多様な人々が出会い、集うことで価値を創造し、社会実装を目指していきます。
「私たちはメーカーなので製品を出しますが、サービス事業者ではないので、駅や空港といったものは持ち合わせていません。「KAWARUBA」では、私たちと意志ある人々や団体が出会い、実装や実証の場を提供していただき作っていくことで、ともに社会に貢献していくことを狙いにしています」
川崎重工は、“そのわざを通じて国家社会に奉仕する”という創業者の理念を大切にして事業展開をしてきました。それは、創業以来、刻み込まれているDNAであり、その信念をもって社会課題を解決していくことを続けてきました。万博で描かれる未来図も、その信念を体感できるものとなっています。
「現代の子たちは、デジタル空間やアニメーションなどで表現された未来図にたくさん触れていると思います。万博では、そんな目の肥えた子たちもワクワクできるカワサキらしい未来のモビリティを実物大で展示します。技術が進めばこんなモビリティもできるようになる、という現実味のあるものを、ぜひ会場で楽しんでいただきたいです。そして、輸送機器の未来…何十年後もある意味で変わらない形で存在し続けるんだという安心感と、進化した技術をどのように使い新しい移動の楽しみを創造するか。ご自身の未来に訪れる可能性の一つを感じていただき、ワクワクしていただきたいですね」
大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」詳細はこちら
川崎重工業株式会社
コーポレートコミュニケーション総括部 大阪・関西万博推進課 課長 兼 PR部 エリア・インナー課
担当課長 村上敬祐さん
コーポレートコミュニケーション総括部 大阪・関西万博推進課 担当課長 兼 PR部 ブランド課
担当課長 天辰祐介さん