渋谷ファッションウィーク実行委員会が、「Tokyo Creative Salon 2025」に参画し、多様なカルチャーや価値観を持った人々で交錯する街、渋谷からファッションを発信するイベント「渋谷ファッションウィーク 2025 春」を開催しました。
「渋谷ファッションウィーク」はコロナ禍にもオンラインで実施され、2014年3月の初開催以来、毎年春と秋の開催を重ね今回で23回目。今春は開催以降初の試みとなる”渋谷の街全体を舞台にしたカルチャーフェス”として行われ、約100店舗の渋谷の人気ショップ、期間限定ポップアップショップが参加する特別なショッピング体験、アーティストコラボレーションによるシティドレッシングや、休館中(オーチャードホールを除く)の Bunkamura をはじめとする街なかでのアート展示、街の各所で展開されるライブ企画など、渋谷を盛り上げる多様なコンテンツを展開しました。
開催期間は3月13日(木)~3月23日(日)の11日間。イベント2日目の3月14日(金)には、メディア向けのラウンドテーブルが行われ、今回のコンセプトや概要、今後の展望などが語られました。
インバウンドの多い渋谷の目指すべき姿

イベント冒頭には、渋谷ファッションウィーク実行委員長であり、渋谷道玄坂商店街振興組合理事長の大西賢治氏が登壇。最近の渋谷の特徴として、海外からの観光客が非常に多いこと、そして開発のための工事が多いことを挙げました。また2014年から続く「渋谷ファッションウィーク」については、「年に2回も開催できるというのはやはりこの渋谷という街に力があるから」だと話し、渋谷が行きたい街1位に選ばれたこともアピールしていました。
実際に東京都産業労働局が発表している「国・地域別外国人旅行者行動特性調査」でも、インバウンド旅行客が最も多く訪れる街は渋谷。「インバウンドも受け入れて、安心安全に楽しめる街を目指したい」と渋谷の街の目指す姿を語りました。
改めて渋谷をファッションの聖地に
続いて、渋谷ファッションウィーククリエイティブディレクターの田中ヒロ氏が登壇。
「1番の目玉は、と聞かれることがあるが、今回はフェスそのものが目玉、と答えたい」と話します。

イベントのミッションには「渋谷をFASHION(トレンド)の聖地に」を掲げ、「渋谷はもはや若者の街じゃないと言われることもあるが、改めて渋谷をファッションの聖地にしたい」とコメント。
また、ミッションと並ぶビジョンは、「渋谷の街を舞台に世界的なCULTURE FESをつくる」だと言い、「渋谷ファッションウィークを2028年にはアジア・世界を代表する人気イベントCULTURE FESにすることを目指している」と語りました。
このビジョンを構成する要素にはSUSTAINABLEがあり、渋谷の街から新しく、持統可能なカルチャーが継続的に生まれていくためのつながりをつくることも目指しているそう。少し意外かもしれませんが、渋谷ファッションウィークは実は「サステナブル」を早い時期から意識し、企画運営していたイベントです。
「渋谷ファッションウィーク」のコンセプトは、cluture(文化)と同じラテン語のcolere(コレレ)を語源にもつcultivate(耕す) 。CULTURE FESを行ううえで、さまざまなものが混ざり合わさった、MIXTURE状態を作り出すことができる土壌が必要、ということでこのコンセプトを掲げたといいます。
“余白”や、”目的なくこられる場所”から生まれるものこそおもしろい
イベントの最後は、田中ヒロ氏をモデレーターとして、アートディレクター/れもんらいふ代表の千原徹也氏、渋谷ファッションウィークの会場のひとつである西武渋谷店の販売促進部長飯田和広氏が、「渋谷を舞台に世界的なCULTURE FESをつくるために」をテーマにクロストークを展開。
まず田中氏からの「渋谷の今と昔をどう捉えているか」という質問に、京都出身だという千原氏は「渋谷は憧れの場所であり、今は「ありがとう渋谷 (ARIGATO SHIBUYA)」という気持ちがある」と言いながらも、「昔は小さなショップを目指して街にでてきていたけど、今は商業的な街になりすぎているのではという懸念もある」とコメント。埼玉出身だという飯田氏も「昔は憧れだったけど、今は大きな施設が多くなっていて難しい局面でもある」と千原氏に同意しました。

続けて、「そんな渋谷からトレンドやカルチャーが生まれるためにCULTIVATEした方が良いことは?」と聞かれると、千原氏は「場づくり」だと言い、「昔はクラブがSNSのような役割をもっていて、そこにトレンドや情報が集まっていた。(この先も)効率良すぎる街になってはいけないと思う。色んな人がくるからこそ生まれるものもあるので、何時から何をする、と決めすぎない方がおもしろい。余白があったほうが良くて、人が集まればまずはいいかなと思う。」と話しました。
飯田氏も「余白というのは本当に大事で、大きな商業施設をつくっている立場ではあるけれども、目的なくこられる場所をつくりたいという風に思っている」と、いわゆる”ふらっと”こられる場所の大切さを伝えていました。
最後に田中氏が、(渋谷ファッションウィークが世界を代表するCULTURE FESになることを目指す)2028年渋谷にどんな街であってほしいかと尋ねると、飯田氏は「たとえば別々の商業施設が同じ広告をだすなどして街に一体感をつくり、渋谷を、パリ、ニューヨークに並ぶような国際都市にしたいという夢がある」と語りました。千原氏は「必ずしも大きなことをやろうとしなくても良くて、スモールビジネスの、それぞれの質が高いとおもしろい、となる。そうすると自然と国際都市化して、より良い街になっていくのでは」と話していました。
転換点を迎えているとも言える渋谷の街。より魅力的な街にしていくために、なにを目指すべきなのか。ファッションの力を使って、それを考える機会をくれる、渋谷ファッションウィークから今後も目が離せません。
執筆/フリーライター Yuki Katagiri