「知られざるグラスフェッドの魅力。親子で楽しめる持続可能な食のかたち」
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私たちが日々手に取る乳製品。毎日口にする身近な存在でありながら、日本では酪農の現場を間近で見る機会はほとんどなく、バターや牛乳を「どこで、どのようにつくられているか」まで意識して選ぶ人は、まだ約4割にとどまっています。
そんななか、ニュージーランド発の乳業メーカー・フォンテラジャパンが開いたのは、親子で楽しめる「グラスフェッドってなに?親子で体験バターボード教室」。見た目の華やかさやシェアできる楽しさで話題の“バターボード作り”を通じて、食の背景にある自然やサステナビリティを、親子で一緒に学び、体験する場となりました。
まだ知られていない乳製品の選択肢


ニュージーランド最大規模の酪農協同組合であり、世界有数の乳業メーカーであるフォンテラは、環境に配慮した酪農を基盤に、グローバルに事業を展開しています。
そんな同社が今回注目したのは、グラスフェッド(放牧酪農)の魅力をまだ知らない日本の消費者が多いという現状でした。


フォンテラジャパンが20〜60代の男女500人を対象に行った調査では、乳製品を選ぶ際に「どこで、どのようにつくられているか」を意識している人は約4割にとどまり、多くの人が生産方法まで考慮していないことがわかりました。野菜や果物では産地や栽培方法を気にする一方、乳製品では生育環境や持続可能性への意識が十分に広がっていないことが浮き彫りになったのです。


そこで同社は、日本の家庭に「新しい選択肢」を届けたいとの思いから、この親子イベントを開催しました。
親子でシェアする食と学びの時間


イベントでは、SNSを通して広まった”バターボード”という新しい食べ方を体験。親子が一緒に手を動かしながら、「牛が牧草を食べてのびのびと育つとどんなメリットがあるの?」「国産バターとの違いは?」といった問いに触れ、放牧酪農やグラスフェッドバターの栄養価、自然環境とのつながりを楽しく学ぶことができました。


こうした学びの背景にあるのが、ニュージーランドをはじめ世界で広がる“グラスフェッド酪農”の取り組みです。牛を牧草地で放牧するスタイルは、輸入穀物に依存せずに牛を育てることから、輸送に伴うCO2排出を減らし、気候変動対策(SDGs目標13)にも貢献します。また、牧草地を維持することは土壌の健全化や生物多様性の保全につながり、「陸の豊かさを守る」(目標15)取り組みとも重なります。さらに、自然のリズムに沿った持続可能な食料生産は、将来的に安定的な食の供給を支えることから「飢餓をゼロに」(目標2)という視点でも重要です。


バターという日常的な食品を通じて、自然や環境への思いをそっと育む機会となりました。
シェフの視点と企業の想い


本イベントには講師として、名古屋市の人気ベーカリー「ブーランジェリーAvec(アヴェック)」オーナーシェフの上村昭博さんも登壇。日々グラスフェッドバターを使う上村さんは、「口に入れた瞬間に溶けるような軽さや、すっきりとした後味が魅力。濃い黄色はパンや焼き菓子に使うと見た目も美しく仕上がります」と、プロならではの視点を語りました。グラスフェッドは環境に貢献するだけでなく、料理の表現を広げる素材でもあるのです。


また、フォンテラジャパンの菊地紀子さんは、ニュージーランドのグラスフェッド(牧草飼育)の魅力を紹介。「牛が大自然の中で自由に歩き、牧草を食べて育つことで“自然のおいしさ”が生まれる。栄養価も高く、成長ホルモンを使わないことや抗生物質の使用が限定的である点も、安心・安全、そして動物福祉の面で意義があります」と語りました。
家庭の食卓から、未来への一歩に


子どもたちが具材を自由に選んでデコレーションを楽しむ姿や、創造的にユニークさを競ったりと色彩豊かな一皿を完成させる姿は食育といった堅苦しさは感じられず、参加した親子からは「ぜひ家でもまた作りたい」との声もあがりました。


食卓を囲みながら「どうやって育てられた牛から生まれたバターなのか」を話題にできること自体が、未来につながる小さな一歩になるのかもしれません。


知れば知るほど理想的な酪農のかたちといえるグラスフェッド製品。まずは家庭で気軽に、バターボードを作ってシェアしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
執筆/フリーライター シナダユイ






