スポーツをすべての⼈へ。駒沢オリンピック公園総合運動場が⽬指すSDGs、デフリンピックに向けた“インクルーシブスポーツ”の可能性とは
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2年間の改修工事による休館を経て、新たにリニューアルオープンした駒沢オリンピック公園総合運動場体育館。7月6日に開催された駒沢体育館リニューアルオープンイベント&東京2020大会メモリアルデーイベントでは、東京2020オリンピックで活躍したメダリストによるデモンストレーションや3×3エキシビジョンマッチの開催、アーティストのミニライブ、気軽に参加できるスポーツ体験コーナーなど多彩なプログラムが展開されました。
待望のリニューアルを経てついに完成!


子どもから大人まで、多くの人々がスポーツを楽しむ場として親しまれてきた駒沢オリンピック公園総合運動場体育館。1964年の東京オリンピックでは、バレーボール、ホッケー、レスリングの競技がこの駒沢公園敷地で実施され、この体育館で行われたレスリングでは、日本人選手が金メダル5個、銅メダル1個を獲得するなど、目覚ましい活躍と、多くの感動を届けてきました。
7月6日に開催されたリニューアルイベントでは、駒沢オリンピック公園総合運動場体育館が歩んできた歴史とそのレガシーを継承し、オープニングセレモニーをはじめ、地元団体や学生によるステージパフォーマンス、東京2020大会で活躍したアスリートによるスポーツ体験コーナーも設置され、今後のさらなる発展を象徴するような数々のプログラムや取り組みが展開されました。
来場者には、子どもから高齢者、さらには車椅子をご利用の方まで、障がいの有無を問わず、誰もが実際に身体を動かしながらスポーツの魅力を体感できる機会が提供され、施設の新たなスタートにふさわしい一日となりました。




また、体育館内には、1964年の東京オリンピックに関する資料を集めた「東京オリンピックメモリアルギャラリー」が常設されており、当時の日本選手団の公式ユニフォームや大会ポスターなどの貴重な展示品を通じて、スポーツが持つ歴史的・文化的価値を改めて体感することができます。
主催者である東京都スポーツ文化事業団 駒沢オリンピック公園総合運動場担当者は、リニューアルによって今後のスポーツ振興や地域の憩いの場として広く利用されることに期待を寄せています。筆者が近年の主な取り組みについて尋ねたところ、次のように話してくれました。
「『3×3(バスケットボール )KOMAZAWA CUP』は年々参加者が増えており、地域に根付いた事業になりつつあります。普段交流できないチームと対戦できてよかった、有名選手に会えてうれしかった、次回も絶対に参加したいといった嬉しい声を多くいただきました。また『防災フェスタ』では、地域の皆様をはじめ多くの来場者に、安全・安心なまちづくりに寄与する事業を展開しています。」
東京都スポーツ文化事業団は、すべての人が安心してスポーツを楽しめる環境づくりを目指し、スポーツ選手が快適に競技できる施設運営にも力を入れています。
また、今回リニューアルされたことで、SDGsの観点からも配慮された次世代型施設として注目を集めています。自然の対流を活かした空調システムの導入や、限られたスペースを有効活用した太陽光発電設備の設置、東京2020大会の競技会場となった東京アクアティクスセンターの観客席のリユース、さらに車椅子席の増設など、東京2020アクセシビリティ・ガイドラインを指針とし、障がいの有無にかかわらず誰もが楽しめるインクルーシブかつ持続可能な体育館へと進化を遂げています。
11月には駒沢オリンピック公園総合運動場が「東京2025デフリンピック」の陸上競技、ハンドボール、バレーボールの会場に




リニューアルイベント当日には、2025年11月に開催される「東京2025デフリンピック」の競技を体験できるブースも登場しました。デフ陸上の模擬体験では、スタートランプと呼ばれるスタート合図を光で伝える装置が用いられ、子どもたちが興味津々に楽しんでいる様子を伺えました。
「デフリンピック」とは、4年毎に、夏季大会と冬季大会がそれぞれ開催される、きこえない・きこえにくい人のための国際スポーツ大会です。競技においては、国際手話のほか、スタートランプや旗などを使った視覚による情報保障が特徴です。
2025年11月15日(土)〜26日(水)の12日間で開催される「東京2025デフリンピック」は、陸上競技やバレーボールなど全21競技が実施される予定で、本大会は、1924年にフランス・パリで第1回大会が開催されてから100周年の記念すべき大会であり、日本では初めての開催になります。
「東京2025デフリンピック」の担当者に、今回リニューアルされた体育館について話を聞きました。
「リニューアルオープン後の館内は、新たに段差解消機が設置されるなど、人に優しい施設だと感じています。机上で描いていたものを実際の現場に重ねると、想定外の課題にあたることもありますが、デフアスリートが力を存分に発揮できる、そして全ての人がデフリンピックを楽しめる大会になるよう、今後も準備を進めてまいります。」
駒沢オリンピック公園総合運動場は、陸上、ハンドボール、バレーボールの競技会場として使用され、東京大会の新たな舞台となります。そのほか、東京都スポーツ文化事業団が管理している東京体育館、東京武道館、東京アクアティクスセンターの3施設も、開会式や卓球、柔道、空手、水泳の競技会場として使用される予定です。さらに、東京都スポーツ文化事業団の公式マスコットキャラクター「SUSIE(スージー)」も、デフリンピック応援隊の一員として、各種イベントや情報発信を通じて、大会を盛り上げていくとのこと。
8月7日には、デフリンピック開幕までちょうど100日前となることを記念したイベント『TOKYO FORWARD 2025「東京2025デフリンピック 100 Days To Go!」』が開催され、世界各国から集うデフアスリートたちによる熱戦を目前に、さらなる気運の高まりが見られました。
すべての人が楽しむ場所へ。“インクルーシブスポーツ”の可能性に注目
リニューアルされた駒沢オリンピック公園総合運動場体育館は、年齢や性別、障がいの有無、体力の違いに関係なく、誰もがスポーツを楽しめる“インクルーシブスポーツ”の場として、これからさらに進化していきます。
今後もさまざまなイベントが決定しており、10月13日(月・祝)には「スポーツの日記念イベント」、12月6日(土)には小学生対象のバスケットボール大会「3×3 KOMAZAWA CUP」、そして来年3月1日(日)には、地元の消防・警察と連携して実施する、防災・減災をテーマとした「防災フェスタ」が開催予定です。
スポーツを通じて地域とつながり、人と人が出会える場所として、新しくなった体育館がどんな風に活用されていくのか、これからも目が離せません。
取材・執筆/市岡彩香






