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健やかな暮らしを支える栄養の力ー水分とミネラル補給で熱中症から体を守ろう


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3 すべての人に健康と福祉を
健やかな暮らしを支える栄養の力ー水分とミネラル補給で熱中症から体を守ろう

2025年は過去最高の暑さとも言われるほど、厳しい暑さが続きました。9月になり、少し気温は落ち着きましたが、30度を超える暑い日も依然として多く、まだまだ油断はできません。

熱中症対策として水分補給を心がけている方は多いと思いますが、それだけでは十分とはいえません。特に、汗とともに失われるミネラルを適切に補うことは、熱中症対策として欠かせない重要なポイントです。ミネラルを補給せずに水分だけを摂っていると、体内の電解質バランスが崩れ、水分の吸収が妨げられることもあります。その結果、「なんとなくだるい」「疲れが抜けにくい」「頭がぼんやりする」といった、暑い時期特有の体調不良につながる恐れがあります。

今回は、熱中症対策の基本を改めて確認するとともに、管理栄養士の横川さんにミネラル摂取の重要性や、熱中症対策に欠かせないミネラル、そしてそれらを含む食材を使った熱中症対策におすすめのレシピを伺いました。ピークは過ぎたもののまだ暑い日の多いこの時期、改めて熱中症対策を正しく理解して、健やかに秋を迎えましょう。

知っているようで知らない?「熱中症」について改めておさらい

近年、気温の上昇とともに重症化や搬送事例が増えている「熱中症」。実際、総務省消防庁の発表によると、2024年5-9月の間に熱中症で救急搬送された人は9万7,578人と過去最多となり、死亡者数も120人に上りました。※1
こうしたデータからも、熱中症が命に関わる深刻なリスクであることがわかります。

熱中症とは、高温多湿な環境下で長時間過ごすことにより、体温調節機能が正常に働かなくなり、体内に熱が蓄積される状態のこと。気温や湿度が高い環境下で激しい運動を行うと、体内で生じた熱を効率的に逃がしにくくなり、体温が上昇しやすくなります。さらに、発汗によって体内の水分や電解質が失われると、血流が低下し、体表からの放熱が妨げられることがあります。結果として、体内に熱がこもり、体温がさらに上昇してしまう可能性があります。

脳をはじめとする重要な臓器は、体温が37℃以下のときに最も安定して働きますが、体温が上がることでその機能が低下します。さらに、汗によって体内の水分が失われると、筋肉や脳、肝臓、腎臓などに十分な血液が行き渡らなくなり、筋肉のけいれんや意識障害、臓器の働きの低下を招く可能性もあります。

※1出典元:総務省報道資料「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000974432.pdf)

熱中症対策のカギ“ミネラル”を積極的に摂ろう

熱中症を引き起こす要因には、私たちの「環境」「からだ」「行動」の3つの要素が関係しています。※2  日差しを避け、室内であっても温度や湿度などの管理をしっかり行うこと、急に暑いところに行き長時間過ごすようなことはせず、徐々に暑さに体を慣らしていくこと、水分・ミネラルの補給や、休憩を必ずとることなど、熱中症対策として必要なことはさまざまありますが、今回はそのうちの、“ミネラル補給”について詳しく見ていきます。

ミネラルは、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミンと並ぶ五大栄養素の一つで、体内の水分バランスの維持、神経や筋肉など、体の機能を正常に保つために欠かせない栄養素です。健康を保つ上で必要とされる「必須ミネラル」は16種類あり、体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。熱中症対策としておすすめのミネラルは、体内の水分バランスやミネラルバランスをサポートする「ナトリウム」、細胞内の水分調整、筋肉の収縮に働く「カリウム」、エネルギー代謝や体温調節をサポートする「マグネシウム」の3つです。

ナトリウムは、水分バランスや血圧の調整、筋肉の収縮や神経の伝達に欠かせないミネラルで、塩・しょうゆ・みそなどの調味料のほか、ハム、ウインナー、練りもの製品、漬物などの加工食品にも多く含まれています。また、スポーツドリンクや経口補水液などの飲料にも含まれているため、暑い時期は水だけでなく、ナトリウムを含む飲み物を取り入れることが効果的です。カリウムは、体内の水分バランスを保ち、筋肉や神経の正常な働きを支える重要なミネラルです。カリウムはバナナ、えだまめ、ズッキーニ、トマトなど、さまざまな野菜や果物に含まれており、普段の食事で補うことができます。ただし、水に溶けやすく、茹でる際に煮汁が流れ出てしまうことがあるので、効率良く取りたい場合は、茹で汁を捨てずにスープなどに活用することも一つの方法です。マグネシウムは、骨の構成成分であるだけでなく、300種類以上の酵素の働きを助け、エネルギーの生産や、筋肉の収縮、神経伝達、体温・血圧の調整など、様々な身体機能に関与しています。マグネシウムは、ゴマやアーモンドなど種実類、干しひじきなどの海藻類、大豆や小豆などの豆類、糸引き納豆や油揚げなどの大豆加工食品、玄米などに含まれています。

※2 参考元:環境省「熱中症予防情報サイト」(https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php)

管理栄養士横川さんに聞く、旬食材を使った熱中症対策におすすめのレシピ

熱中症の対策として取り入れたい食材が、まだもう少し旬が続く「夏野菜」。トマトやきゅうり、なすなどの夏野菜には、熱中症対策に欠かせない水分やカリウム、マグネシウムが豊富に含まれています。

そのうちの一つ、トマトを使った、暑い日にも手軽に取り入れられるメニューが「冷やしトマトと豆腐のお味噌汁」。冷たいままだと爽やかな涼しさを感じられ、温めれば冷房で冷えた体にじんわりと染み渡る優しい味わいになります。

<冷やしトマトと豆腐のお味噌汁>

【材 料】 1人分
・トマト 1/2個(80g)   ・絹豆腐 1/2丁(160g)
・わかめ(茹で)30g       ・みょうが 適量
<調味料 A>
・だし汁 220ml       ・味噌 大さじ½

味噌汁は、汗とともに失われやすい塩分や水分、さらにはカリウムやマグネシウムなどのミネラルを効率よく補える優れたメニューです。加えて具材にトマトや豆腐、わかめなどを組み合わせることで、夏の暑さで乱れがちな体のバランスを整える手助けにもなります。やさしい味わいで、食欲が落ちた日にも無理なく取り入れやすいのも魅力です。

【作り方】 調理時間5分
①     だし汁と味噌をよく混ぜ、冷蔵庫で冷やしておく
②     トマトは4等分のくし形に切り、さらに半分に切る。絹豆腐は約1.5cm角に切り、わかめは2cmほどに切る。みょうがは輪切りにする
③     器にトマト、豆腐、わかめを入れて軽く和え、①を注ぎ、みょうがをのせる

【温めて食べる場合】
•だし汁にトマトと豆腐を入れ、電子レンジ(600W)で約2分温める。
•味噌を溶き入れ、わかめとみょうがをトッピングする。

※メニュー・写真提供元:管理栄養士/横川仁美さん

こうしたメニューを取り入れながら、水分補給だけでなくミネラルの摂取などを意識して、9月になったからと油断せず、引き続きしっかりと熱中症対策をしてきましょう。

smile I you代表/管理栄養士
横川 仁美(よこかわ ひとみ)氏

管理栄養士資格取得後、保健指導や電話相談を通じて2000人以上の健康カウンセリングを実施。現在は食専門ライター兼料理研究家としてコラム執筆やレシピ監修、企業や飲食店向けのメニュー開発に加え、健康事業のサポートにも力を入れている。

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執筆/フリーライター Yuki Katagiri