チョコレートの未利用資源「カカオハスク」がランウェイへ
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世界的デザイナーと国民的チョコレート菓子が示すアップサイクルの可能性
食品産業から排出される未利用資源が、ファッションの世界で再利用され、サステナブルなモノづくりの新たな可能性が提示されました。
2025年10月14日(火)、長年愛され続けている「きのこの山」の発売50周年を記念し、世界的デザイナーのコシノジュンコ氏と株式会社 明治との異色なコラボレーションによるファッションイベント「JUNKO KOSHINO きのコレ 2026 S/S COLLECTION」が開催されました。
このショーは、単なるコレクションの発表に留まらず、資源循環(サーキュラーエコノミー)と創造性を融合させ、持続可能なファッションの未来を提示する革新的な取り組みとなりました。本レポートでは、この異色コラボレーションを、SDGsの観点から紐解きます。
カカオハスクから生まれるサステナブル素材
今回のコレクションの特徴は、チョコレート製造過程で排出されるカカオ豆の未活用部分を活かした「アップサイクル」した素材を使用した点です。これは、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に直結する、現代社会における重要な課題への挑戦と言えます。大量生産・大量消費の時代の中で、年間約51.0万トンの洋服が廃棄されるという課題も存在するファッション業界 にとって、素材開発における資源循環への貢献は喫緊のテーマです。
ショーで披露された特別衣装には、明治がサステナブルアクションの一環として取り組んでいる、カカオの未活用部位である「カカオハスク」をアップサイクルした素材が使用されました。この素材は、チョコレートを製造するときに取り除かれるカカオ豆の皮の部分、カカオハスクを用いた合成皮革(ひかく)の生地で、食品の未利用資源がファッションという非食品分野で活用される可能性を見出しました。
これは、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を体現する、新たな技術革新と言えるでしょう。


「食べられるモード」の提案
コシノ氏は、カカオハスクというサステナブルな素材を用いながら、国民的チョコレート菓子「きのこの山」のユニークなシルエットや普遍的な存在感からインスピレーションを受け、その遊び心と芸術性を融合させてデザインを行ったそうです。
コシノ氏は、お菓子とのコラボレーションや、きのこをイメージしたショーは「生まれて初めて」の挑戦であったと明かし、「初めてだからこそ、イメージが湧きました。やってみたことがないことって自由な発想でできるので、いいチャンスでした」と語っています。


今回の挑戦を通じて、カカオハスクというサステナブルな素材を用いた「食べられるモード」という新しいファッションの形が提案されました。これは、ファッションが単なる流行の追従ではなく、環境や社会に対するメッセージを伝えるプラットフォームとなり得ることを示しています。
イベントの様子
ファッションショーは、カカオハスク素材を用いた「きのコレファッションショー」と、コシノ氏のブランドコレクション「JUNKO KOSHINO ブランドコレクション ファッションショー」の二部構成で展開されました。
フィナーレでは、モデルたちとともにコシノ氏が颯爽と登場し、サプライズゲストとして「きのこの山50周年アンバサダー」の俳優、森崎ウィン氏がコシノ氏をエスコートしました 。
ショー後のトークセッションでは、コシノ氏と森崎氏が、以前から「ミャンマー観光親善大使」という共通の縁があったものの、この日が初対面であったことが明かされ、森崎氏は「ミャンマー繋がりだけでなく明治さんを通して繋がることができ、素敵なご縁になりました!」と、喜びを語りました。
さらに、トークセッションでは、国民的な論争に決着をつける「きのこの山・たけのこの里 どっち派判定AI 「MOTHER」」による診断企画も行われ、コシノ氏がまさかの「たけのこの里派」と診断され、会場は大きな賑わいを見せました 。


コシノ氏は今回のコレクションの経験から、「たけのこも不思議な形をしているので、たけのこの里50周年でも遊び心のあるコレクション制作に挑戦したいです」と、将来への意欲的な展望も示しました。
広がるアップサイクルの輪
イベントの最後には、コラボレーション企画として、コシノ氏自身をモチーフにしたキャラクター「JUNKO KINOKO」がデザインされたオリジナルTシャツが、抽選で500名にプレゼントされるキャンペーンが発表されました。


この記念Tシャツにもサステナビリティの要素が盛り込まれています。
Tシャツの生地は、カカオハスクを用いて染められており、消費者が日常的に着用するアイテムを通じて、アップサイクルのメッセージを伝える役割を担っています。
この異色のコラボレーションは、食品メーカーの持つ環境配慮への真摯な取り組みと、世界的デザイナーの卓越した創造性が融合することで、未利用資源のアップサイクルというSDGsのメッセージを、より魅力的かつ広範に伝えることに成功しました。
ファッション、食、そしてサステナビリティの境界を超えたこの協業は、企業とクリエイターが共創する未来志向のモノづくりの新たな可能性を示す、価値ある事例となったのではないでしょうか。






