「デジタル疲れ」の時代に見直したい紙の価値 ー テクノロジーとの融合で開封率74.3%を実現するパーソナライズDM
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日々、私たちのスマートフォンやPCに流れ込んでくる膨大な情報の波。メールやSNS広告があふれる中で、「デジタル疲れ」を感じている方も少なくないのではないでしょうか。本当に大切なメッセージが、情報の渦に埋もれてしまっている。これは、情報を送る側にとっても、受け取る私たちにとっても、持続可能なコミュニケーションのあり方とは言えないかもしれません。
今回は、そんな時代だからこそ見直したい「紙」の価値と、テクノロジーとの融合がもたらす新しい可能性について考えてみたいと思います。これは、単なるマーケティングの話ではなく、つかう責任とつくる責任(SDGs目標12)にもつながる、未来のコミュニケーションのヒントです。
なぜ今、改めて「紙」なのか?
デジタル広告の効果は、時に私たちが思うほど高くないのかもしれません。2024年の調査によると、メール広告の開封率は20.9%、バナー広告に至ってはクリック率がわずか7.9%でした(※1)。たくさんの情報が送られても、その多くは誰の目にも触れずに消えていっているのが現実です。
その一方で、驚くべき数字を示しているのが、個人宛に届く紙のダイレクトメール(DM)です。同じ調査で、本人宛DMの開封率は74.3%、そして何らかの行動につながった割合は20.8%にも上ります(※1)。


なぜ、これほどの差が生まれるのでしょうか。英国の調査によれば、紙のDMは家庭内で平均8.6日間も保管され、1通あたり133秒もの接触時間が生まれるとされています(※2)。デジタル情報が一瞬で消費されるスクリーンの中の世界とは対照的に、手触りのある「モノ」として届く紙は、私たちの五感に訴えかけ、「長く、深く」関わる時間を作り出してくれるのです。さらに、宛名付きDMの31%がWebサイトへの訪問や商品の購入といった具体的な行動につながるという分析結果もあります(※3)。
これは、無駄な情報を大量にばらまくのではなく、本当に必要としている人に、確かな方法で情報を届けることの重要性を示唆しています。まさに、持続可能な消費と生産のパターンを確保する「つくる責任つかう責任」の考え方にも通じるのではないでしょうか。
【事例】テクノロジーが変える「紙」の役割
ここでご紹介したいのが、クラウド会計ソフトなどを提供するフリー株式会社の事例です。同社は、デジタルだけではアプローチしきれない顧客層に対し、紙のDMを活用しました。
しかし、それは昔ながらのDMではありません。ラクスルの「バリアブル印刷」という技術を使い、DM一枚一枚の宛名やQRコード、さらにはテキストや数字の一部まで顧客ごとに内容を変えた「パーソナライズDM」を送ったのです。
結果は目覚ましいものでした。既存顧客向けのアンケート施策で、反応率は従来の2〜3倍に向上。さらに、個別のQRコードから誰が反応してくれたかをデータで分析し、次の施策改善へとつなげることができました。
フリー株式会社の広川幸秀氏は、その手応えをこう語ります。「SNS広告やWeb広告はコンマ数秒しか見てもらえないことが多いですが、DMはモノとして届く特性上、見てもらえる時間が長い。お客様の手元に確実に“届けきる”ことができる、唯一のチャネルだと思います」。
データとテクノロジーという、まさに産業と技術革新の基盤(SDGs目標9)が、古くからある「紙」というメディアに新しい命を吹き込み、企業と顧客の間に信頼関係という名の新しい橋を架けたのです。
AI時代に私たちが選ぶコミュニケーション
ラクスルでは、こうした新しいコミュニケーションを支える仕組みを提供しています。


・CRM連携と宛名差し込み:Salesforceなどの顧客管理システムと連携し、一人ひとりに最適化されたDMを効率的に作成。
・効果測定機能:顧客ごとのQRコードで行動を可視化し、開封直後の通知でタイムリーな営業も可能に。
・豊富なDMラインナップ:シンプルな手紙風からギフト付きまで、目的に合わせた施策を提案。
ラクスル執行役員の木下治紀氏は、「データとテクノロジーを活用したパーソナライズDMを通じて、企業と顧客の新しい関係構築を支援していきます」と語ります。
デジタル情報が氾濫するAI時代だからこそ、物理的な手触りや、自分だけに向けられたという特別感が、人の心を動かすのかもしれません。テクノロジーは、効率化や自動化のためだけにあるのではありません。人の温もりや想いを、より確かに届けるためにこそ、活用されるべきではないでしょうか。
<今日からできるアクション>
・届いたDMを観察してみる:ポストに届いたDMを、すぐに捨てずに一度開いてみてください。自分向けにどんな工夫がされているか、どんな情報が心に響くか、少しだけ意識してみましょう。
・不要な情報の整理:もし不要なDMが届き続けるなら、発送元に連絡して停止の手続きを。無駄な資源を使わないことも、私たちにできる大切なアクションです。
・職場のコミュニケーションを見直す:もしあなたがビジネスに携わっているなら、顧客への情報伝達方法を一度見直してみませんか。デジタル一辺倒ではなく、オフラインの温かいコミュニケーションを取り入れることで、新しい関係が生まれるかもしれません。
まずは、身の回りの「紙」の情報にもう一度目を向けて、その価値を再発見することから始めてみませんか。その小さな気づきが、より豊かで持続可能なコミュニケーションの第一歩になるはずです。


※1:「DMメディア実態調査2024」(発行:一般社団法人日本ダイレクトメール協会研究開発委員会)
※2:JICMAIL Q4 2024 Mail Matters
※3:Royal Mail Marketreach「The Value of Mail in Uncertain Times」






