• トップ
  • 記事一覧
  • 歩くチャリティーで社会を変える 楽しむことが支援になる『サンタパレード東京2025』
SHOW CASE

歩くチャリティーで社会を変える 楽しむことが支援になる『サンタパレード東京2025』


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を 10 人や国の不平等をなくそう 17 パートナーシップで目標を達成しよう
歩くチャリティーで社会を変える 楽しむことが支援になる『サンタパレード東京2025』

渋谷から原宿へ続く街並みが、約2,600名のサンタクロースの鮮やかな赤に染まりました。代々木公園をメイン会場に11月16日に開催された『サンタパレード東京2025』は、病気とたたかう子どもたちにクリスマスプレゼントを届けるチャリティーイベント。今年はEXILE TETSUYAさんとマーク・パンサーさんがスペシャルアンバサダーとして参加。会場一帯が温かな空気に包まれたイベントの様子をレポートします。

サンタの一歩が子どもたちへ届く

「サンタパレード東京」は、参加費の一部が入院中の子どもたちへのクリスマスプレゼントとして活用されるチャリティーイベントです。2009年に大阪、2018年に東京でスタートし、これまで延べ2万2,000人以上の子どもたちへ支援を届けてきました。今年は東京会場が11月16日に開催され、12月7日には大阪会場での開催を予定しています。

今回の東京開催では、慶應義塾大学病院、国立成育医療研究センター、東京都立小児総合医療センターなど、合計9つの小児医療機関が寄付先に選ばれました。

主催は一般社団法人OSAKAあかるクラブ。企画は「サンタパレード学生会議」が担っており、学生たちが主体となってイベント企画やSNS運用、プレゼント準備などを担当しています。「支援を特別な行為ではなく、楽しさの中から生まれるものへ」という想いのもと、多くの若い力がイベントを支えています。

イベント当日は、スペシャルアンバサダーのひとりであるマーク・パンサーさんによるウェルカムステージからスタート。音楽にダンスパフォーマンスもあり、会場を一気に盛り上げました。

そして、EXILE TETSUYAさんも登壇。初参加となるTETSUYAさんは、「たくさんの笑顔とHAPPYを子どもたちに届けられるよう、全力サンタとして盛り上げていきたい」とコメント。参加者へ大きく手を振りながら声をかけ、熱気を高めました。

続くチャリティー贈呈式では、学生会議のメンバーから医療機関へプレゼントボックスを手渡し、会場からは大きな拍手が送られました。

学生代表からは、「街の雰囲気を直接感じられない子どもたちにもプレゼントを通して温かさを届けたい、その思いからサンタパレードは始まりました」と語り、イベントの原点にある願いを伝えてくれました。

対して東京都立小児総合医療センターの山岸敬幸院長は、「笑顔には免疫を高める効果があります。皆さんの笑顔が、子どもたちの大きな力になります」と述べ、外の世界を感じる機会が少ない子どもたちにとって、この活動が精神的な支えになることを伝えました。

さらに、順天堂医院の東海林宏道先生も、「人によっては長期に入院している子どもも多く、季節のイベントに触れられないことが少なくありません。そうした中で、このような贈り物はとても大きな励みになります」と感謝の言葉を寄せていました。

渋谷・原宿を赤く染めたパレード

そして、約2,600名のサンタクロースのパレードが代々木公園からスタート。グループごとに分かれて、ケヤキ並木を抜け、神宮前交差点、渋谷MODI前へとゆっくり歩いていきます。

当日集まっていたのは、老若男女、年齢層もさまざまな人たち。家族連れ、カップル、友人同士、ベビーカーを押す人、サンタの衣装を着せた愛犬と一緒の人、そして白杖を持って参加する視覚障害のある方の姿もありました。沿道には多くの人々の注目が集まり、手を振ったり写真を撮ったりと、街全体が温かなムードに。

サンタの衣装をまとい同じ方向へ歩く光景は、立場や背景の違いを越え、参加者全員がひとつの目的でつながる一体感を生み出していました。

また、メッセージボードを掲げて歩く人もいて、「サンタになって子どもたちをおうえんしよう!」「TOKYO SANTA PARADE きみもサンタになれるよ!!」といった言葉が沿道の人々にも届き、やさしさが広がっていく瞬間が見られました。

マーク・パンサーさん、TETSUYAさんらはサウンドカーに乗り込み、パレードを後方からさらに熱く盛り立てました。

パレードを終えた参加者は再び代々木公園に戻り、塗り絵や写真撮影、協賛ブースを楽しむなど、思い思いの時間を過ごしました。会場中央にはメッセージツリーが設置され、参加者はカードに病気と闘う子どもたちへの言葉を書き、ひとつずつ飾り付けていきます。

「応援してます! はやくよくなってください」
「元気になって、たくさんの笑顔があふれますように」

ツリーは参加者の想いで次第に色づき、あたたかい雰囲気に包まれていました。これらのカードは後日、医療機関や海外の支援先へ届けられる予定です。

今回のイベントで特に印象的だったのは、パレード運営の中心を学生が担っていること。受付、進行、会場誘導、プレゼントの準備など、多岐にわたる業務を若い世代が主体的に支えていました。

学生のひとりは、「楽しむことが支援になる場を、自分たちの手でつくりたい」と話し、支援を日常の文化として広げていこうとする意志を感じさせる姿がとても印象に残りました。

SDGsで見る「サンタパレード」の意義

「サンタパレード東京」は、SDGsの価値を市民レベルで体現する取り組みでもあります。

まずSDGs 3「すべての人に健康と福祉を」。病院にいるなどで季節を感じることが難しい子どもたちに、笑顔とつながりを届けることは精神的な支えになり、回復へ向かう力にもつながります。

つづいてSDGs 10「不平等の解消」。医療的ケアが必要で外出できない子どもたちが、社会からの温かいメッセージを受け取れることは、不平等を埋める一歩に。

そしてSDGs 17「パートナーシップ」。学生、企業、市民、自治体、アーティストが協力し、支援の輪をつくるこのイベントは、持続可能な仕組みを生み出す好例といえるでしょう。

パレード後は、アンバサダーの2人がメッセージツリーの前に再登壇し、子どもたちへあらためて想いを届けました。

TETSUYAさんは、「こんなに大きなパレードにまず驚きました。同じ格好をして、同じ方向へ歩くだけで、こんなにも笑顔があふれるんだと感じました。病院にいてクリスマスや季節の楽しみを感じられない子どもたちがたくさんいると聞き、みんなの力を合わせて笑顔を届けられたらと思います。応援しています。」と語りました。

マーク・パンサーさんも、「真冬や真夏にもパレードをしてきましたが、今日は天気もよくて本当に気持ちよかった。みんなで笑顔になって、全員でサンタになって、子どもたちに勇気を届けたいです。けっして一人ではなく、みんなで一緒に見守っています。」と温かな言葉を寄せました。

『サンタパレード東京』は、病気と闘う子どもたちのために歩くという小さな一歩が、確かな支援として社会に循環していくイベント。楽しむことと社会貢献が両立する、まさに持続可能な参加型チャリティーの未来を示すイベントとなりました。


執筆 / フリーライター 小見山友子