2000年以上の歴史を楽しむ!伊勢が織りなす持続可能な観光
この記事に該当する目標


年の瀬を迎え、この1年を振り返る季節となりました。
毎年、多くの方が初詣に出向きますが、「朔日(ついたち)参り」を知っているでしょうか。2000年以上の歴史を有する「お伊勢さん」こと伊勢神宮では、特別な風習「朔日参り」が今もなお息づいています。これは、毎月1日、早朝の清々しい空気の中で新しい月の無事と感謝を祈る、地元の人々にとって欠かせない行事です。
今回は、この1日しか食べられない「朔日餅」や「朔日粥」といった食文化、さらには江戸時代の「御師料理」に至るまで、伊勢の伝統の根幹に迫ります。ただ観光に留まらない、文化の持続性や地域循環に貢献するサステナブルな旅のあり方を伊勢の歴史と文化から楽しく深掘りします。
神職に聞く20年に一度の大引っ越し「式年遷宮」
今回、株式会社CoCoRoが主催する「伊勢歴史と伝統が息づく、食と祈りの文化体験」プロジェクトでは、神職が同行し、伊勢神宮にまつわる深い話を聞くことができる特別な体験ができます。
伊勢神宮には20年ごとに神様を新しく建て替えたお宮へお遷りいただく「式年遷宮」という日本最古の儀式があります。この20年という周期は、単なる慣習ではなく、日本の文化と技術の「持続可能性」を担保するための理にかなった期間なのです。
伊勢神宮の社殿は檜の素木造りで屋根も茅葺きであるため、清々しく尊厳な姿を保つためには20年に1度造り替える必要があります。社殿を新しくし続けるこの営みは、単なる修繕ではなく、「常若(とこわか)」つまり「常に若々しい」状態を保つという神道の根幹思想に基づいています。また、宮大工、工匠などの伝統技術を次の世代に継承するためには20年が適当であるとする技術の伝承や古来より日本では20が満数で整数とみなされていたなど20年という年数には理由があるのです。20年に1度建て替えるのは社殿だけではないのです。社殿の前にある石段や、内宮への入り口である宇治橋も20年の周期で架け替えられているのです。なんと宇治橋は20年で1億人の人が歩いているそうです。
次の式年遷宮は2033年。普段、観光しているだけでは聞けない伊勢神宮にまつわる深い話を聞くことができます。そして、今回のツアーでは一般参拝よりも正殿に近い場所で参拝することができる御垣内参拝(みかきうちさんぱい)も体験しました。「御垣」とは神社のご正殿などに巡らせた玉垣(垣根)のことで、この内側を御垣内といいます。御垣内参拝は伊勢神宮の厳粛な参拝方法で、通常では入ることができない御垣内で参拝することができます。玉垣の内側へと足を踏み入れると、空気が一変したように感じられました。正殿がすぐ目の前にある空間は、身が引き締まるような静寂と尊厳に満ちており、2000年以上にわたり連綿と続いてきた「祈り」の重みを肌で感じることができ、またとない体験となりました。


早朝の4時には大行列!?おかげ横丁で「朔日粥」「朔日餅」をいただく
今回のツアー最大のハイライトは、まだ薄暗い早朝4時の「おかげ横丁」にあります。多くの人々が新しい月の平穏を祈願するため、この時間から活気が満ち溢れていました。早朝の寒さで冷えた体を温めてくれるのが、「とうふや」で提供される早朝限定の「朔日粥」です。
この朔日粥は、旬の食材をふんだんに使い、2月から12月の毎月月替わりで提供されるのが特徴です。今回は、山形県産の「つや姫」を使用した「かぶら雑炊」をいただきました。この「かぶら雑炊」の優しい塩気は、早朝の参拝で研ぎ澄まされた五感に深く響きます。さらに添えられた、鮮やかな紫色の職人が作る自家製豆腐「むらさき芋豆腐」は、芋のほのかな甘みが感じられると同時に、滑らかな舌触りが印象的です。地元の食材を大切にし、旬を味わうこれらの料理は、地域の豊かさを享受する食のサステナビリティを体現していると感じました。
地域の食文化を絶やさず継続させるための、伊勢の人々の知恵が凝縮された形なのです。


そして、旅の楽しみとして欠かせないのが2月から12月の毎月1日にしか販売されない赤福の「朔日餅」です。月によって内容が変わるこの伝統の餅は、伊勢の人々が月並みに感謝し、新しい月を清々しく迎えようとする心意気を形にしたものです。今回は商売繁盛と開運招福を祈願した縁起の良い「ゑびす餅」をいただきました。
七福神の一柱である恵比寿様が持つ幸運を招く打ち出の小槌と黄金色の小判に見立てた黒糖と柚子の2種類の味が楽しめます。実際に口にすると、黒糖の素朴で力強い甘みと、柚子の持つ爽やかな香りが絶妙なコントラストを生み出しており、早朝の参拝後の清々しい気分をさらに引き立て、まさに清々しくも縁起の良い気分を運んでくれました。


江戸時代の食事を再現!伊勢の「御師料理」
伊勢神宮への参拝が盛んだった江戸時代、全国からの参拝客の世話をしていたのが「御師(おんし)」でした。参拝客の案内や宿泊手配など旅を支える重要な役割を担っていました。かつて800軒もあった伊勢の御師邸ですが、現在でもオリジナルの建物が残っているのは「丸岡宗大夫邸」の1軒のみしか残っていません。そして、彼らが参拝客をもてなした料理が「御師料理」です。鯛などの海の幸や、山の幸をふんだんに使い、膳の構成や器の配置まで厳格に定められた格式高い食事となっています。
そんな御師料理を今も提供しているのが「料理旅館おく文」です。実際にいただいた御師料理は、「丸岡宗大夫邸」から出てきた古文書に書いてある献立を再現した享保4年(1719年)の料理です。神饌(しんせん)と呼ばれる神様への食べ物が多く使われており、鮫を干した「さめのたれ」や、江戸時代では最も貴重な食材だった「鮑」など、合計で5つの膳を味わうことができます。鮑は伊勢地方では妊娠中の女性が鮑を食べる風習も残っており、“目のキレイな子が産まれる”と言われています。こうした食材一つ一つにも、信仰や地域文化が深く結びついていました。5つのお膳に一つずつ吸い物がついています。5回お吸い物はついており、長い時間をかけてながら味わっていたそうです。
当時の調味料は塩、味噌、たまりが主であり、現代の料理と比べると塩辛く感じるそうですが、今の時代に合わせた味付けとなっていました。それぞれのお膳を口にすると、江戸時代の旅人を大切にもてなした「おもてなしの心」が凝縮されているのを感じ、まるで江戸時代にタイムスリップしているかのような時間を過ごすことができました。単に建物を残すことだけでなく、こうした食の歴史を「御師料理」という形で現代に再現し、伝えることで、当時の生活や信仰の深さを体験できます。


観光地としても人気の伊勢神宮。この特別なツアーで得られる神職の言葉や、伝統的な食文化、そして神宮の厳粛な空気は、日常では味わえない特別な体験をすることができます。この2000年の歴史に触れる旅に訪れてみてはいかが。






