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気軽な一言がストレスの原因に。知らぬ間に人を傷つけるマイクロアグレッション


この記事に該当する目標
5 ジェンダー平等を実現しよう 10 人や国の不平等をなくそう 16 平和と公正をすべての人に
気軽な一言がストレスの原因に。知らぬ間に人を傷つけるマイクロアグレッション

ブラハラという言葉を聞いたことがありますか?ブラッドハラスメントの略で、血液型によって性格を決められ、嫌な思いをすることです。科学的根拠が証明されていないにも関わらず、生まれ持った先天的なことで人格を判断され、不快な思いを経験した人もいるのではないでしょうか。このように人種、地域性、職業、性別、国籍、障害、宗教、血液型などによって差別的な言動をすることをマイクロアグレッションといいます。マイクロ(小さな)アグレッション(攻撃)は、攻撃をした本人が意図的ではなく、無意識であることが多く、それを受けた側は指摘しにくいのが特徴です。

チリツモで大変なことになってしまうマイクロアグレッション

日常で無視されがちなマイクロアグレッションですが、事例はたくさんあります。
例えば、
・大阪出身だから面白いんでしょう
・見た目ではゲイと気づかなかった
・白人だからイケメンだね
・黒人だから足が速いんでしょう
・(大柄な人に対して)それだけで食事は足りるの?
・(見た目が外国人っぽい人に対して)日本語上手ですね、お箸の使い方上手ですね
・女性医師が看護師に間違われる
このような言動を受けた側は、自分は受け入れられていないという認識を持ち、疎外感を感じることがあります。それが積み重なってストレスとなり、精神的に追い詰められてしまうこともあるでしょう。反対に誰しもが攻撃する側になってしまう可能性もあります。それは、個人の責任ではなく、育ってきた環境や社会の中で無意識に根付いてしまう価値観が大きな要因。そのため、まずは自分の中にそのような先入観や偏見が元々あるものだと自覚することが大切です。

マイクロアグレッションを多角的な視点で見てみよう

SDGs目標の「16-b持続可能な開発のために、差別のない法律や政策をすすめ、実施する。」にも定められていますが、お互いにコミュニケーションの相手を尊重する意識を持つことで、サステナブルで健康的な社会への一端を担えるということにもなります。

画像引用:unicef SDGs CLUB
一方、別の視点では、マイクロアグレッションが認知の歪みを悪化させる可能性もあるとアメリカの社会心理学者ジョナサン・ハイトが論じています。認知の歪みとは、同じ事実でも受け止め方によって結果が異なるというものです。例えば、朝、同僚の態度がいつもと違うなと感じた時に、心に余裕がある場合は、何かあったのかなと心配できますが、逆に疲れやストレスが溜まっている場合は、自分にだけ意地悪をしているんじゃないかと思い込んでしまうようなことがあります。いわゆるマイナス思考に陥ってしまう状態です。
そもそも、マイクロアグレッションの発想は主観的で感情的な側面が強いもの。言動の裏を読み過ぎてしまい、相手が差別的な人であると決めつけてしまうことは認知の歪みの一つだという意見もあります。

ラベリング理論を理解することで解決に1歩近づく?

多方面からの見方がある中で、マイクロアグレッションによる問題提起とSDGsの目指す方針が共通するポイントは、みんな人それぞれの個性やバックグラウンドを持っていることを前提として、それを尊重する意識を持つことです。
1960年代に社会学者ハワード・ベッカーが提唱した「ラベリング理論」には、マイクロアグレッションを克服するためのヒントがあります。ラベリングとは、自分自身や相手に対してとあるイメージを植え付けることで、実際にそうなっていってしまう現象のことです。例えば、自分では気づいていなかったのに友人たちから「あなたって人見知りだよね」と言われると、どんどん初対面の人が苦手になっていくということがあります。また、親から「あなたは勉強が全然できない」と言われ続ける子どもは、だんだん好きだった教科の勉強もしなくなっていきます。人から言われるセルフイメージが、本当の性質になってしまうのです。
相手が自分と同じくらい尊い存在だと思う気持ちがあれば、自分の色眼鏡でラベルを貼ることも少なくなっていくでしょう。そして、ラベリングされた側もこのことを知っていればそれを鵜呑みにすることなく、自分のことを冷静に理解することができます。
小さな攻撃は、何気ない日常の中にいくつも転がっています。すでに攻撃した、された人もたくさんいることでしょう。いつでも誰でも遭遇する危険性のあるものだからこそ、家族内、職場、友人など様々な対人関係でマイクロアグレッションを意識していく必要があります。まずは、マイクロアグレッションやラベリングといった知識が一般的に広がり、企業研修や接遇の場で標準化されていくことを期待しています。