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日本の家は「裸にカイロ」?!IGES藤野純一氏に聞く住宅の断熱リフォームとSDGs


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 13 気候変動に具体的な対策を
日本の家は「裸にカイロ」?!IGES藤野純一氏に聞く住宅の断熱リフォームとSDGs

当WEBメディアと連携し、パーソナリティの新内眞衣さんとともに未来の地球をより良くするための17の持続可能な開発目標からなるSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。「土田晃之 日曜のへそ」内にて生放送で届けられている同プログラムでは、専門家のインタビューや企業の取り組み紹介など、さまざまな視点からSDGsを深掘りしている。12月7日の放送回は「住宅の断熱リフォームにまつわるSDGs」がテーマ。公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の藤野純一さんに内田雄基アナウンサーが話を聞いた。

年の瀬を迎え、寒さも増してきたこの頃。内田アナは土田さん、新内さんに「家で過ごしていても、寒さで目が覚めるなんてことが人によってはあるんじゃないかという季節になってきましたが…お2人は寒さに対して、家の中で対策とかされていますか」と切り出した。

土田 「まだしていないかな。寒いですけど、まだ例年よりは寒くないですね」

新内 「うちもです。うちのマンション、わりと熱が逃げにくいのか」

土田 「高級マンションだ!」

新内 「そんなことはないですよ(笑)。ただ、朝日が当たると、窓際がめっちゃ暖かい」

土田 「日も入るいい物件だ」

新内 「いやいや・・・」

冗談も交えながらやり取りする3人だが、実は新内さんが口にした「熱が逃げにくい」というのが、まさに今回のテーマでありキーワード。「住宅の断熱リフォームにまつわるSDGs」について学ぶべく、内田アナがある専門家のもとを訪れた。

内田 「ここからはこの方にお話をうかがっていきます。公益財団法人地球環境戦略研究機関、IGES(アイジェス)の藤野純一先生です。よろしくお願いします」

藤野 「よろしくお願いします。お誕生日おめでとうございます」

内田 「ありがとうございます。私が今日(12月7日)、誕生日というのを直前に知って…ありがとうございます。藤野先生の第一声をお聞きいただいた皆さん、よくお分かりかと思いますけど、とても明るい方です」

藤野 「いえいえ(笑)。まあ、一応関西人…関西弁は、もうあまり喋れないですけど」

内田 「ご出身はどちらなんですか」

藤野 「大阪の吹田です」

内田 「もう、がっつり関西人っていう(笑)」

藤野 「いやあ…はい、頑張ります(笑)」

内田 「ご出身は関西ということですけれども、この地球環境戦略研究機関 、IGESというのは神奈川県にあるんですよね」

藤野 「そうですね。葉山に本部があり、いろんなところで研究者が集まって、気候変動のこととか生物多様性、資源循環とか、研究や実際のアクションをどうやったらできるか、みたいなことを200人ぐらいで頑張ってやっております」

IGESは1998年3月に設立。地球環境問題に焦点を当て、国際機関、各国政府、地方自治体などと連携して、さまざまな取り組み、発信を行っている。

内田 「その中で藤野先生はどういったことを研究されているんですか」

藤野 「もともとは気候変動の取り組み、『どうやったらCO2が減るかな』みたいなことの取り組みをずっとやっていました。あと、もう一つは気候変動の取り組みだけだと、なかなか皆さんやるのが大変なので、『じゃあ合わせて何かいいことがないかな』『SDGsの問題も同時に解決できないかな』っていうシナジーの取り組みを仲間とやっております」

内田 「エネルギーだけじゃなく、その周りのことも含めて研究されているということですね。なんでも、先週までCOP30に出席されていたとか」

藤野 「そうですね。COP30でブラジルに行っておりました」

COP30とは、1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」(UNFCCC)に基づく第30回締約国会議のこと。11月10~21日にブラジル北部の港湾都市・ベレンで開催された。

内田 「ブラジルから帰ってきて、すぐインタビューに応じていただいているという形で、ありがとうございます。COPには20年前から参加されているんですよね」

藤野 「そうなんです。2005年のCOP11から毎回毎回、皆勤賞みたいな感じで(笑)」

内田 「実際、20年間で環境の変化は大きかったですよね」

藤野 「そうですね。まず、気温が上がってしまった。日本も暑くなっていますよね。北海道とか東北とかって、エアコンがなくても全然暮らせていた。それが2年前ぐらいからかな…北海道でみんながエアコンを買って、青森でも今エアコンが売れているっていいます」

内田 「青森でエアコンが売れる…なんだかなあ、って感じがしますね」

藤野 「なんだかなあ…ですよね」

住宅の断熱とSDGsのつながり

そんな中で近年注目度が高まっているのが、住宅の断熱性向上。エネルギー効率の上昇やCO2の排出削減といったSDGsの観点だけでなく、「断熱」は生活のさまざまな面に大きな影響を与えるテーマだという。

内田 「今ちょうど暮らしのお話が出たんですけれども、今回は藤野先生に『住宅の断熱リフォーム』についてお話をうかがっていこうと思います。まず、住宅の断熱とSDGsにどういったつながりがあるのか教えていただいてもよろしいですか」

藤野 「まず熱を絶つので、エネルギーの消費量が少なくなって、目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』に効きますね。さらに、エネルギーを使わなくて済むということになるとCO2が出なくなるので、まさに目標13『気候変動に具体的な対策を』の具体的な対策になります」

内田 「なるほど」

藤野 「そして、断熱することで、冬は寒くないけど、夏も暑くなりすぎず快適になる。温度の変化が少なくなる。そういった、皆さんの健康にとってメリットがある空間をつくれるので、目標3『すべての人に健康と福祉を』につながっていくんです」

内田 「断熱の工事という部分でも…」

藤野 「そうなんです。地元の工務店さんでも、よく勉強している方はそういう家をつくれるんですね。 例えば、弘前市だと5つの工務店さんが協力して『eco住研ひろさき』っていうグループをつくって、断熱気密の家を売っているんです。地元の人でつくってもらったほうが、継続して家の健康、メンテナンスを見てもらえる。つまり、目標8の『働きがいも経済成長も』だったり目標9の『産業と技術革新の基盤をつくろう』だったりが、地元から、地域からできるんです」

内田 「これができることによって、事業、産業が広がっていく」

藤野 「そうですね」

内田 「まさにシナジー」

藤野 「そうです! そうです!」

内田 「『断熱』の周りに、いろんなものが動いているということですね」

「断熱」と日本人の我慢強さ

内田 「ここからは具体的にお話をうかがっていければと思いますが、まず最初に挙げていただきました目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』ということなんですけど、この観点について、より具体的に教えていただいてもよろしいですか」

藤野 「日本の住宅って断熱性が低くて、そうするとエネルギーの消費効率も悪いんです。だから熱が漏れちゃっているんですよね」

内田 「それは、日本自体がもともと(気候的に)住みやすい国だったからっていうことなんですか」

藤野 「それもあるし、断熱の技術も昔はなかったわけです。断熱という技術ができてから観点がガラッと変わって、魔法瓶みたいな形で守ってくれることで部屋の温度を保ちやすくなったんです」

内田 「魔法瓶の水筒の中に氷を入れると冷たいまま、温かい飲み物を入れたら温かいままで長時間もつ」

藤野 「全くその通りで、その断熱性能が低い。これを例えた人がいて、日本の家って『裸にカイロ』だというんです」

内田 「裸にカイロ!」

藤野 「ちょっと捕まっちゃうね(笑)」

内田 「(笑)まあまあ、人だったらっていう話ですけど」

藤野 「つまり、局所暖房なんですよ」

内田 「昔で言ったら囲炉裏とか、辺りだけ(温かい)」

藤野 「そうなんです。それに対して断熱ってどういうことかっていうと、まずセーターを着る、暖かさを保つっていうのが1つ目。あとウインドブレーカーを着る、空気を逃さない、出入りをできる限り少なくする。今の家って強制換気というシステムがありまして、熱を漏らさないでも綺麗な空気を外から中に入れて、汚い空気を外にかえすことができるので、大丈夫なんです」

内田 「むしろ(断熱をしないのは)もったいないことをしていたということですね。でも、それこそ日本人ならではの我慢強さみたいなところから、断熱の技術というのが世界から若干遅れていた、と」

藤野 「そうなんですよ、我慢しちゃっていたんですよね。我慢しなくてよかったんです。もっといい家に住めばよかった」

内田 「もう、今はぜひ断熱にしてほしいということなんですけど、断熱の家に変わるとエネルギーもそうですけど、それに付随して気候変動や温暖化対策の観点にもいい効果がある。目標13(『気候変動に具体的な対策を』)のところにつながっていくんですよね」

藤野 「(意味合いは)2つあって、一つはエネルギーを使わないので、地球温暖化の大きな原因の二酸化炭素、特に化石燃料でエネルギーをつくったらそれが大幅に減るので、原因を絶つことができる。 もう一つが、温度が上がってしまっているということですよね。去年の1年間だけだと、150年前ぐらいに産業革命があって蒸気機関とかを動かして化石燃料をいっぱい使うようになったんですけど、そこから1.5度上がったんじゃないかっていう観測結果も出ているんです。世界で、ここは超えちゃいけないって約束した温度に、もう実はなってきているっていう…」

「断熱」は健康にも直結

内田 「そういった、さまざまな観点で今、『断熱』が注目されているのですが、一番気になったのが目標3『すべての人に健康と福祉を』にもつながるということです」

藤野 「はい。断熱していない家に住んでいると、ヒートショックで亡くなる方が多くいるんです」

内田 「それはなぜですか」

藤野 寒い部屋、寒い脱衣所から熱いお風呂に入ると血管が伸び縮みして、心筋梗塞になったり脳梗塞になったりして、それでお風呂の中で亡くなってしまうケースが随分多いんですね」

内田 「周りの環境、温度の差で…。これが『断熱』になると、どのように変わるんですか」

藤野 「断熱すると部屋も暖かいですし、脱衣所も暖かいので、お風呂の温度をそんな上げなくても十分暖かくなります。そうすると、血圧の変化もそれほどなく、ヒートショックも起こりにくいということになります」

内田 「部屋の中の温度変化を緩やかにすれば、われわれの血圧の変化も緩やかになっていくということですね」

厚生労働省人口動態統計(2024年)によると、65歳以上の高齢者の浴槽内での溺死及び浴槽への転落による溺死・溺水の死亡者数は7,363人で、これは交通事故死亡者数(2,103人)の3.5倍。決して軽視できない数字となっている。

内田 「ヒートショックもそうですけど、夏の熱中症も高齢者の方が多く病院に運ばれているケースがありますよね」

藤野 「そうなんです。吹田市で調査されていまして、建築年数が長い古い家に長く住んでいる人…つまりお年を召した方が一番エアコンを使っていないというんです。本来、使わないと一番影響を受けやすい人が使っていない。そういう家って熱が漏れてしまうので、『お金がもったいないな』みたいになる。そういう人こそ本当はエアコン使わないといけないんです。そして、もう一つ考えていただきたいのは、ちゃんと断熱気密を良くするってことです。せめて窓の断熱はやったほうがいい」

内田 「窓の断熱?」

藤野 「そうです。窓も断熱って実はできるんですね。例えば窓をもう1個つけちゃうのが一番簡単な方法ですね。または、ダブルとかトリプルとか、一見1枚の窓なんですけど、その中に2枚、3枚入っている(複層の)窓もあるんです」

内田 「そういった窓に変えることで、断熱性は上がるんですか」

藤野 「夏も冬もですけど、家の中のエネルギーの50%以上は窓から漏れているんです。半分以上、窓から漏れている。冬とか窓を触ると冷たいじゃないですか。それって熱が漏れているというか、冷気が入ってきているんですよね。穴が開いているんです」

内田 「確かに、カーテンを閉めるだけで、少し寒くないような気がしていたんですけど、それは別に私のなんとなくの感覚ではなく、実際にそういうことなんですね」

藤野 「そこの気密も良くなると結露もしません」

内田 「朝とか結構私の家、サッシのところがビシャビシャになっていたりしますね」

藤野 「あれ、健康に良くないんですよ。結露でカビが発生するんですよね。カビが空気に蔓延していると、喘息になったり、アトピーになったりとか、アレルギーになっちゃったり」

内田 「全く別の『断熱』の空間に住むだけで、それだけの違いが出てくる」

藤野 「そうなんです。健康にもいいんです」

内田 「なるほど。この窓のリフォームは、家全体をやるよりは手軽にできるんですか」

藤野 「そうですね、まずおすすめです。地元の工務店さんに頼めば、まあサササッとやっていただけますし」

内田 「国や自治体から補助金が出る制度も窓のリフォームについてはあるということで、詳しくは『窓』『補助金』『断熱リフォーム』などのキーワードを入れて検索をしてみてください」

最大200万円の補助金を受けられる「先進的窓リノベ2025事業」という環境省による制度や、国の補助金と併せて利用できる自治体の独自の取り組みなど、そうした“お得な制度”はぜひ知っておきたいところ。制度内容は年度によって変更されるため、最新情報を確認することも大事になる。

内田 「ということで、今日はさまざま『断熱』にまつわるあれこれをうかがってきました。公益財団法人地球環境戦略研究機関、IGESの藤野純一先生でした。どうもありがとうございました」

藤野 「ありがとうございました」

インタビューを終えた内田アナは、「断熱がいかに大事かということですね」とSDGsに深くかかわるワードとして「断熱」を意識。新内さんも「温度差が心臓に良くないというお話もされていましたけど、ちゃんと考えなければいけない問題ですよね」と呼応した。

日本人の我慢強さに加え、日本の伝統的な家づくりが夏を基準に風通しの良さを重視してきたといわれるように、なかなか重視されることがなかった「断熱」の技術。内田アナは「 (日本も)暑くなっていますし、これからは我慢せずに科学の力、『断熱』を皆さん利用されてみたらいかがでしょうか。窓からのリフォームというのもありますので、ぜひ調べてみてください」と呼びかけ、地球に優しく、体にも優しい“断熱のシナジー”の広がりに期待を寄せた。