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性別によるアンコンシャス・バイアスを超えて。小学校で未来の可能性を広げる授業を実施


この記事に該当する目標
5 ジェンダー平等を実現しよう 10 人や国の不平等をなくそう
性別によるアンコンシャス・バイアスを超えて。小学校で未来の可能性を広げる授業を実施

子どもたちの何気ない会話の中で、「それは男の子の色だよ」「女の子なんだからちゃんとしなきゃ」といった言葉を耳にしたことはありませんか? あるいは、私たち大人自身が、無意識のうちにそんな言葉を投げかけてしまっているかもしれません。

「男の子はこうあるべき」「女の子はこうあるべき」。 そんな、誰もが心のどこかに持っている“当たり前”という名の「思い込み」。それが、子どもたちの無限の可能性を狭めてしまっているとしたら──。

2025年12月、東京都あきる野市のある小学校で、少し特別な授業が行われました。教科書を開くだけでは学べない、性別による「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」について見つめるための時間です。
今回は、東京都とあきる野市立前田小学校が連携して実施した性別による「無意識の思い込み」に関する授業の様子を、SDGsの視点から紐解いていきます。

誰もが持っている「見えない色眼鏡」に気づくとき

2025年12月18日あきる野市立前田小学校の教室で、5年生と6年生を対象にした公開授業が行われました 。テーマは、性別による「無意識の思い込み」 。

「アンコンシャス・バイアス」という言葉は少し難しく聞こえますが、これは決して特別なことではなく、私たちの日常生活のあらゆる場面に潜んでいます。
東京都が令和4年度・5年度に実施した調査によると、多くの児童・生徒、そして保護者や教員までもが「性別によって仕事の向き・不向きがある」と考えていることが明らかになっています 。さらに驚くべきことに、その傾向は小学生よりも高校生の方が強まるというデータもあります 。

成長するにつれて、周囲の環境や大人たちの言葉から少しずつ「社会のあたりまえ」を吸収し、いつの間にか「自分らしさ」よりも「性別らしさ」を優先するようになってしまう。
そうした現状を変え、幼少期から自分の可能性を信じられるようにとの願いを込めて、このプロジェクトは動き出しました 。

日常の「あたりまえ」を問い直す

5年生の教室で行われた授業のテーマは、「日常生活の中に潜む性別による思い込み」です 。 まだ社会に出る前の彼らにとって、性別の役割意識はどこにあるのでしょうか。授業では、クラス内で見られる身近な事例について話し合うプロセスが重視されました 。

話し合いが進むにつれ、子どもたちからは素直な言葉が次々と飛び出しました。 「ピアノを習うのは女の子だから、という思い込みがあったかも」 「男の子だから運動神経が良いと決めつけていた」

これらは、大人が聞いてもドキッとするような意見ではないでしょうか。「男の子は元気」「女の子は繊細」。そんな何気ないイメージが、実は友達の本当の姿を見る妨げになっていたかもしれない。自分たちの過去の言動を振り返り、ハッとした表情を見せる子どもたちの姿は、まさに「気づき」の瞬間でした 。

この授業のゴールは、自身の性別による決めつけに気づき、よりフラットで良好な人間関係を築くことです。
「あの子は男の子だから」「私は女の子だから」というフィルターを外し、「その人自身」を見つめること。それは、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の第一歩であると同時に、目標10「人や国の不平等をなくそう」にも通じる、多様性を認め合う心の土壌づくりと言えるでしょう。

「夢」に性別は関係ない

一方、卒業を控えた6年生のクラスでは、視点をさらに未来へと広げ、「職業に対する性別による思い込み」をテーマに授業が展開されました 。
将来、どんな大人になりたいか。どんな仕事をしたいか。 夢を描くとき、そこに「性別」という壁があってはなりません。しかし、現実には「この仕事は男性のもの」「これは女性のもの」というイメージが根強く残っていることも事実です。

授業を通じて、自分の中にある職業へのバイアスを自覚し、将来のキャリアの選択肢を広げることがこの時間の目標でした 。 授業の中では、児童から「性別や人種による差別など、あの人はこうだからと自分に決めつけがあることに気づけた」といった気づきの声や、「思い込みによって好きな仕事に就けない人がいたら味方になってあげたい」という声もあがり、彼らが作る未来が、今よりもっと優しく、自由なものであることを予感させました。

東京都が描く「2050年のビジョン」と教室のつながり

今回の授業は、東京都が推進する「2050東京戦略」の一環として行われました。この戦略が掲げる2050年代のビジョンは、「すべての「人」が輝き、一人ひとりが幸せを実感できる「成長」と「成熟」が両立した「世界で一番の都市・東京」です。

ビジョン達成に向け、東京都は3つの柱を打ち立てています。

・もっと!! ダイバーシティ:誰もが将来の夢や希望を叶え、もっと一人ひとりが輝く東京へ
・もっと!! スマート シティ:東京のポテンシャルを磨き上げ、もっと活力溢れる東京へ
・もっと!! セーフ シティ:強靭で持続可能な都市を創造し、もっと安全・安心な東京へ

柱の中でも「もっと!! ダイバーシティ」の戦略5「女性活躍」において、東京都は2035年までに「意識改革を進め、女性活躍を阻むアンコンシャス・バイアスを払拭すること」を目標として定めています。そして、そんなビジョンの実現へ向け、企業や自治体と連携して「女性活躍の輪(Women in Action)」を広げる活動や、家事・育児を家族や社会の「TEAM」として捉え直す「TEAM家事・育児」といったWEB発信など、多角的なアプローチで環境づくりを進めています。
目指すのは、「誰もが自らの生き方を性別にとらわれず選択できる」社会。
今回の授業は、こうした大きなビジョンにつながる大きな一歩となります。ライフステージを通じて誰もが持てる力を存分に発揮できる環境 を作るためには、まず子どもたちの意識から変えていくことが不可欠なのです。

私たちが、今日からできること

今回の授業が子どもたちの視野を広げるきっかけになったように 、私たちもまた、新しい知識や視点を取り入れていく必要があります。
「男の子なのに泣かないの」「女の子なんだからお手伝いして」。生活の中で、つい口にしてしまいそうな言葉を、一度飲み込み、「それって本当かな?」「性別は関係ないんじゃないかな?」と、一呼吸置いて問いかけてみる。
そんな小さな「マインドチェンジ」の積み重ねが、子どもたちの背中にある見えない重りを外し、彼らが本来持っている翼を大きく広げる手助けになるはずです。

あきる野市の小学校で得た「気づき」は、子どもたちが将来、自分の可能性を広げていくための大切な一歩となるはずです。彼らがその柔軟な感性を持ち続け、自分らしく歩めるような社会環境を整えていくこと。それが、私たち大人に託された役割ではないでしょうか。
性別に捉われない自由な選択。自分らしい生き方 。 それが当たり前の未来になるように。まずは私たち自身が、色眼鏡を外して、世界を見つめ直してみませんか?