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若者が「自分事」として考える!東京都の悪質商法被害防止の取り組み


この記事に該当する目標
4 質の高い教育をみんなに 16 平和と公正をすべての人に
若者が「自分事」として考える!東京都の悪質商法被害防止の取り組み

2022年4月、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。 これにより、18歳・19歳の若者は親など法定代理人の同意なく、クレジットカードの作成やローンの契約、アパートの賃貸契約などが一人でできるようになりました。これは若者の自己決定権を尊重する社会的な一歩ですが、同時に、未成年者であることを理由に契約を取り消せる「未成年者取消権」という保護を失うことでもあります。

制度変更からまもなく4年が経過しようとする今、若者を取り巻く消費生活の現状はどうなっているのでしょうか。そして、トラブルを未然に防ぐために、行政や社会はどのような手を差し伸べているのでしょうか。

本記事では、東京都が展開する「若者向け悪質商法被害防止キャンペーン」と「CMシナリオ・動画コンテスト」。「SDGs MAGAZINE」は、これらの取り組みを、公開された最新データと受賞作品の内容に基づき、紹介します。


データが示す「若者消費」のリスクの現状

東京都消費生活総合センターの発表によると、令和6年度、都および都内区市町村に寄せられた29歳以下(若者)からの消費生活相談件数は約16,000件にのぼります。これは相談全体の12.6%を占める数字です。

デジタルネイティブ世代は情報リテラシーが高いと思われがちですが、相談の現場では、SNSの広告やインフルエンサーの投稿をきっかけとしたトラブルが目立ちます。特に、若者の関心が高い「美容」や「暮らし」の分野で、契約トラブルが顕著な増加傾向にあります。

若者の相談が半数を占める「美容医療」

特筆すべきは「美容医療」に関する相談の急増です。 令和5年度の相談件数は1,878件でしたが、令和6年度には3,168件へと大幅に増加しました。さらにこのうち29歳以下の若者が占める割合が50.1%に達しています。美容医療トラブルの実に半数が、若者によって占められているという事実があります。

「通い放題」「〇か月無料」などの広告をきっかけにクリニックを訪れたところ、「この価格は今日だけ」と急かされ、高額なローンを組んでしまう。その後、「予約が取れない」「解約できない」といったトラブルや、クリニックの倒産によって通えなくなり、返金を受けられないという相談が多数寄せられています。

2.8倍に急増した「鍵の解錠サービス」

また、「鍵の解錠サービス」や「害虫駆除」などのレスキュー商法も増加しています。 「鍵をなくして家に入れない」「部屋に虫が出た」といった緊急時に、慌ててネット検索を行い、検索結果の上位に表示された「980円〜」といった格安料金の業者に依頼したところ、来訪後に「特殊な作業が必要」などと言われ、最終的に数万円から十万円単位の高額請求を受けるケースもあります。 特に鍵の解錠サービスに関する若者からの相談件数は、令和5年度の109件から令和6年度の306件へと約2.8倍に激増しています。

こうした現状は、SDGsのゴール16「平和と公正をすべての人に」の観点からも看過できない課題です。知識や経験の差につけ込む不公正な取引から若者を守ることは、健全な市場を維持するための社会的責任と言えます。


「パートナーシップ」で届ける被害防止の取り組み

行政からの注意喚起を当事者である若者に届けるためにも、東京都は、1月から3月にかけて実施する「若者向け悪質商法被害防止キャンペーン」において、若者に関心の高いコンテンツを活用したアプローチも行っています。

キャンペーンの一環で放映する啓発動画に、若者層に支持されるVTuberグループ「ホロスターズ」所属の花咲みやびさんを起用しました。YouTubeやSNSを通じて、若者が陥りやすい商法の手口や、相談窓口「188」の存在を分かりやすく解説しています。

また、キャンペーンキャラクターの「ボク、カモかも…。」等と「怪しいと気づかなければ悪質商法の思うツボ」というキャッチコピーを載せたポスターやリーフレットを、都内の高校や大学、ネットカフェ、ボウリング場などに掲示・配布しています。 リーフレットでは、「1日5万円稼げる」といった言葉で誘い契約をさせ、仕事に必要があるとして商品やサービスを購入させたり金銭を支払わせるサイドビジネス商法や、商品の購入やサービスの契約をして販売組織の会員になり、友人等を勧誘して入会させると紹介料がもらえるマルチ商法などの手口を4コマ漫画で紹介しており、日常の中に潜むリスクを可視化しています。


若者が描く、若者を守るシナリオ

2025年6月2日、東京都は若者自ら消費者トラブルについて考える機会を提供し、消費者トラブルに巻き込まれることを防止するため、「STOP! 若者の消費者トラブル CMシナリオ・動画コンテスト」の募集を開始しました 。

応募する作品には、若者の消費者被害防止に役立つメッセージを盛り込むとともに、「東京都消費生活総合センター」の案内を入れることが要件となっています。今年度は7,295件もの応募が集まり、11月末の最終審査会を経て、優秀賞3作品、入選12作品が決定しました。 

本プロジェクトの大きな特徴は、第一線で活躍するプロフェッショナルの方がアンバサダーや審査員となっている点です。アンバサダーには、芸人・タレントのゴー☆ジャスさんが就任 。代表審査員には、タレントのなえなのさん、審査員には、声優の相羽あいなさん、演出家の野村篤史さんといった豪華な顔ぶれが並び、若者の作品を審査しました。

優秀賞に輝くと、大きな特典があります。
・プロによるCM映像化:シナリオや動画をもとに、プロが本格的なCMを制作します 。
・地上波テレビ局でのCM放送:完成したCMは「TOKYO MX」で放送されます 。
・プロの声優がナレーションを担当:ナレーションは、審査員でもある相羽あいなさんら「声のプロ」が担当します 。
・1日CMディレクター体験:制作現場の空気を肌で感じる特別な体験が用意されています。
・副賞:Amazonギフトカード5万円分贈呈 。

このコンテストの最大の意義は、教材や啓発動画の「受け手」であった若者が、「作り手」として参画している点にあるのではないでしょうか。 応募された作品には、大人が作成する内容とは一味違う、若者ならではの視点や言葉選びが反映されています。

例えば、昔話やゲームに例えてみたり、アイドルや戦隊ヒーローといった親しみやすいモチーフを使ってみたりするなど、同世代の共感を呼ぶ工夫が随所に見られます。また、契約書の隅々まで目を通すことの重要性を若者ならではの感性で表現するなど、堅くなりがちなテーマをわかりやすく見せる工夫をしています。

CMは2〜3月にYouTubeと地上波(TOKYO MX)で放映されます。若者が自らの言葉で作成したシナリオは、同世代の心に深く届くでしょう。


トラブルに遭ったときの対処法

キャンペーンやコンテストが共通して伝えているのは、「正しい知識」と「相談行動」の重要性です。万が一、不本意な契約をしてしまった場合でも、日本の法律には消費者を守るための強力な制度が存在します。

クーリング・オフ制度の活用と注意点

訪問販売や電話勧誘販売などで契約した場合、契約書面を受け取った日を含めて一定期間内であれば、無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ制度」があります。

現在は、ハガキなどの書面だけでなく、電子メールやウェブサイトの専用フォームからの通知も可能です。通知した証拠を残すため、送信メールや画面のスクリーンショットを保存しておくことが推奨されています。

【注意!通信販売にはクーリング・オフがない?】 若者の利用が多い「インターネット通販(通信販売)」には、原則としてクーリング・オフ制度が適用されません。 返品の可否や条件は、事業者が決めた特約に従うことになります。「イメージと違った」などの理由で返品できるかどうかは、サイトの利用規約や返品特約を事前によく確認する必要があります。

困ったらすぐ「188(いやや)」へ

「広告と実際の料金が違う」「エステの契約をしたが効果が感じられず中途解約したい」。 そんなトラブルに直面したら、一人で悩まずに専門家へ相談することが解決への近道です。 消費者ホットライン「188」に電話をかけると、地方公共団体が設置している身近な消費生活相談窓口を案内してくれます。 東京都消費生活総合センターでも、専門の相談員がトラブル解決のための助言を行っています。


賢い消費者への成長を支えるセーフティネット

18歳という年齢は、大人としての権利を得ると同時に、消費者としての責任を負うスタートラインでもあります。 しかし、経験不足からくる失敗を「自己責任」の一言で片付けるのではなく、社会全体で支える仕組みを機能させることが求められているのではないでしょうか。

「怪しい」と気づく知識を持つこと。 通信販売のリスクや、クーリング・オフの仕組みを正しく理解すること。 そして、困ったときには「188」へ相談できること。

これらの情報が若者たちの間に広まることは、悪質な事業者が入り込む隙をなくし、公正で持続可能な経済社会を実現することにつながるのではないでしょうか。 春からの新生活に向け、私たち一人ひとりがこうした情報を知り、周囲の若者と共有していくことが、未来の被害を防ぐ確かな力となるはずです。


【相談窓口情報】 困ったときは、ひとりで悩まず相談してください。

  • 消費者ホットライン 電話番号:188(局番なし) ※お近くの消費生活相談窓口をご案内します。 
  • 東京都消費生活総合センター 電話番号:03-3235-1155 (相談受付時間:月~土曜日 午前9時~午後5時 ※日・祝日・年末年始を除く)

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