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ルレ・エ・シャトー×ユネスコが始動!|レフェルヴェソンス生江史伸シェフがユネスコと描く、日本の海の未来


この記事に該当する目標
11 住み続けられるまちづくりを 12 つくる責任つかう責任 13 気候変動に具体的な対策を 14 海の豊かさを守ろう 15 陸の豊かさも守ろう 17 パートナーシップで目標を達成しよう
ルレ・エ・シャトー×ユネスコが始動!|レフェルヴェソンス生江史伸シェフがユネスコと描く、日本の海の未来

世界各地で異常気象や生物多様性の喪失が深刻なフェーズに入ったと報じられる中、「自分たちに何ができるのか」という問いは、もはや他人事ではなくなっています。
特に私たちの生活に密接に関わる「食」の分野では、単なる「美味しさ」の追求を超え、いかにして地球環境を再生し、次世代へ豊かな海と土壌を繋いでいくかを多くのシェフが追求しています。
そんな中、2026年2月3日、パリから非常にインパクトのあるニュースが飛び込んできました。世界最高峰のホスピタリティ組織「ルレ・エ・シャトー」と、ユネスコ(UNESCO)がタッグを組み、美食を通じて地球を守る「4つの具体的アクション」を始動させたのです。
「ルレ・エ・シャトー」は、1954年にフランスで誕生した、世界65カ国580軒の独立系ホテル・レストランが加盟するコレクションです 。現在、世界65カ国に580もの独立系ホテル・レストランが加盟するこの組織は 、世界最高峰の料理とサービスを象徴する存在として世界で知られています。すべての施設が卓越したおもてなしという揺るぎない価値観で結ばれ、地域の職人や生産者と共に、その土地ならではの文化的・美食的・環境的遺産を大切に育んでいます。

©️SUJÁN

そんなルレ・エ・シャトーが今回発表したプロジェクトでは、ミシュランの星を冠するトップシェフたちが、厨房を飛び出して海や森へと向かい、プロジェクトのテーマである「生きとし生けるものとの調和」を目指し活動します。
これは2024年にユネスコと結んだ戦略的パートナーシップの継続的な取り組みの重要なステップとなります。世界遺産や生物圏保護区などユネスコが指定する地域と、世界をリードする著名なシェフ、そして無形文化遺産がひとつに集結し、生物多様性の保護と気候変動対策に力を注ぎます。ルレ・エ・シャトー会長のロラン・ガルディニエ氏は「著名な4人のシェフたちは、私たちの取り組みである、地球上のすべての命と調和のとれた持続可能な開発を体現しています」と新プロジェクトへの期待を語ります。

このプロジェクトの源流:マウロ・コラグレコ氏の情熱

振り返れば、ルレ・エ・シャトーの副会長であり、ルレ・エ・シャトー加盟施設である南フランス マントンのレストラン「ミラズール」のオーナーシェフであるマウロ・コラグレコ氏が取り組みを発案しました。

2022年にユネスコの生物多様性親善大使に任命されたコラグレコ氏は、自身の料理に深い環境意識を吹き込んできました。「ミラズール」は、世界で初めて「プラスチックフリー」認証を取得し、B Corp認証を持つ店として初の三つ星レストランにも輝くほど自ら世界の最先端で社会に変化をもたらせるよう活動しているシェフの1人です。

「私は、料理には世界を変える力があると信じています。それは単に味を生み出す作業ではなく、共に生きること、意味のある瞬間を創り出すことです。何よりも重要となるのは、命を養い、生物と調和する食糧システムを再構築することです」 — マウロ・コラグレコ氏

今回は、日本のプロジェクトを筆頭に、世界で始動する美食の最前線を、現地のリーダーたちの熱いコメントと共にお届けします。

【日本】海洋生態系の再生と「人と漁業の新しい関わり」
レストラン「レフェルヴェソンス」× ユネスコ世界遺産:奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島

©️Nathalie Cantacuzino

2021年に世界自然遺産に登録されたこの地域は、琉球列島の4つの島々にまたがります。大陸からの分離・結合の歴史を経て育まれた独自の生態系を有し、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコといった国際的な絶滅危惧種や多くの固有種が生息する、世界屈指の生物多様性のホットスポットです。
そんな土地の恵みを守るため、東京のレストラン「レフェルヴェソンス」を率いる生江史伸シェフは、この貴重な地域で、海と人との持続可能な関わり方を再定義しようとしています。

彼は地域社会との連携として、環境省や瀬戸内町、地域コミュニティと協力し、生物多様性の保全と地域の知恵を守る活動を進めています。一つとして、生態系を直接観察できる「素潜りでのスピアフィッシング(ほこ突き漁)」といった環境負荷の低い選択的な漁法を記録し、責任ある資源管理の実践例として発信しています。

また、魚を育む「海中の森」である藻場の再生に取り組み、海洋生態系の回復に積極的に貢献しています。生江史伸シェフは自身のネットワークを通して、他のシェフや一般消費者に対しても、生態系の自然資源を搾取したり過剰に活用したりせず、自然資源の再生に貢献する方法として、持続可能な食材を意識的に選ぶよう呼びかけています。
このプロジェクトについて「ルレ・エ・シャトーのメンバーとして、ユネスコのコミットメントを共有することは、文化遺産と自然環境の両方を守る方法について深く理解する素晴らしい機会になっている」 と語っています。

 【南アフリカ】在来種・固定種の保護と継承
レストラン「FYN」× コーゲルベルグ生物圏保護区、ケープ植物区保護世界遺産

©fyn

南アフリカ初の生物圏保護区(1998年登録)であり、世界六大植物区の一つ「ケープ植物区」の核心部に位置するコーゲルベルグ生物圏保護区。非常に高い固有種率を誇る「フィンボス(Fynbos)」と呼ばれる低木植生が特徴で、植物の多様性において世界で最も重要な地域の一つとされています。
この地域でも新たなプロジェクトが始動します。ルレ・エ・シャトー加盟レストランである「FYN」のピーター・テンペルホフ シェフは、この地域特有の在来種・固定種を料理に取り入れ、その価値を伝えています。
彼は、コーゲルバーグ生物圏保護区およびケープ植物区保護ユネスコ世界遺産で収穫する食材を自身の料理に取り入れ、特に在来種・固定種にフォーカスしています。生物多様性を守り支えるため、「FYN」の自社農場において在来種の種を蒔いて野菜を栽培し、生態学的な重要性を啓発しています。また地域資源の不適切な採取や乱獲のような違法採取の防止にも努めています。

【フランス】農業遺産の継承と無形文化遺産の保護
「メゾン・ピック」× ユネスコ無形文化遺産

©Epicurian

フランスは「フランスの美食(ガストロノミー)」が無形文化遺産に登録されているなど、食文化の継承に極めて高い意識を持つ国です。ドローム県やアルデッシュ県は豊かな農業遺産を有し、代々受け継がれてきた伝統技術が今も息づいています。
ルレ・エ・シャトー加盟レストラン「メゾン・ピック」のシェフであり、世界的に評価されているアンヌ=ソフィー・ピックシェフは彼女の地元であるドローム県とアルデッシュ県でプロジェクトを発表しました。どちらも有機農業が盛んな地域として知られていますが、彼女はこのプロジェクトを通じて、地元産の食材を使い、地域の農業遺産を広く世界へ訴求しようとしています。
取り組みの中心は、彼女の曽祖母の家であり家族の歴史の証でもある「オーベルジュ・デュ・パン」です。2003年に祖父アンドレ・ピックの葡萄畑をビオディナミ農法に転換したことを皮切りに、古代品種の野菜栽培を通じて、農業と野生の生物多様性のつながりを深めています。長期的な視点では、この取り組みがきっかけとなり、この地域がユネスコの新たな指定地域となる可能性も見据えた、極めて野心的な挑戦です。

【アメリカ】食育とコミュニティ支援のイノベーション
「イレブン・マディソン・パーク」× シャンプレーン・アディロンダック生物圏保護区

©Eleven Madison Park

ニューヨーク州とバーモント州にまたがるこの保護区は、シャンプレーン湖、アディロンダック山地、グリーン山地を擁する、米国東部最大の保護地域の一つです。森林や湿地が広がる豊かな自然の中に多くの人々が暮らしており、自然環境と社会の調和的な発展を目指す拠点となっています。ルレ・エ・シャトー加盟レストラン「イレブン・マディソン・パーク」のダニエル・ハムシェフは、地元生産者や先住民と協力し、地域に根ざした食の未来を模索します。
彼は、地元地域の生産者や先住民と協力し、シャンプレーン・アディロンダック生物圏保護区内で食材を調達しています。また、生物圏保護区の関係者らと共同で「フード・フューチャーズ・ラボ」を立ち上げ、菜食料理や生物多様性に関する教育を推進しています。そんな地元地域の伝統的な知識を記録し、プロジェクトの成果をケーススタディとして世界に向けて発信も行っています。

美食が人類に寄り添い、地球を支える力になる。私たちが毎日何を選び、何を食べるか。その一歩が、未来の海や森を守る力になります。これらのプロジェクトは、単に美味しい一皿を提供することではなく、生物と調和する食糧システムを再構築するための挑戦です。
環境省自然環境局 前田尚大氏は「食は、生物多様性から人類への贈りものです。食を通して、より多くのみなさんに自然環境の大切さとその価値を知ってもらうことができるでしょう」とこれからの食との向き合い方について話します。より多くの人が自身が生活するこの地球に配慮した選択を積極的に選んでいくことを願います。