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緑地保全活動を学生が体験 東京の未来を創る「里山へGO!」でつなぐバトン SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」、ゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」


この記事に該当する目標
15 陸の豊かさも守ろう 17 パートナーシップで目標を達成しよう
緑地保全活動を学生が体験 東京の未来を創る「里山へGO!」でつなぐバトン SDGsゴール15「陸の豊かさも守ろう」、ゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」

東京都が推進する100年先を見据えた緑のプロジェクト「東京グリーンビズ」。その一環として、都内各地で開催されているのが保全地域体験プログラム「里山へGO!」です。今回は、八王子滝山里山保全地域に集まった28人の中・高・大学生による活動に密着。緑地保全活動の様子や学生たちの気持ちの変化までをレポートします。

都内17カ所で広がる「里山へGO!」

今回訪れた八王子以外にも東京都内には、今なお豊かな自然が残る保全地域が点在しています。「里山へGO!」はこうした場所を舞台に、誰もが気軽に里山の自然に触れられる体験プログラムです。

その活動範囲は広く、都内51カ所の保全地域(2026年2月末時点)のうち、年間を通じて17カ所で開催されています。内容は季節や場所ごとに多岐にわたり、春の田植えや初夏の草刈り、秋の稲刈り、そして森では通年で下草刈りや落ち葉掃きなど。2025年度には、年間45回ものプログラムが企画されました。

「特定の場所だけではなく、各保全地域の特性に合わせた活動を行っています。スケジュールは地域のボランティアの活動団体さんと相談しながら、自然のサイクルに合わせて決めています」と語るのは、(公財)東京都環境公社 東京都生物多様性推進センターの角田皓平さん。

都内には多様な選択肢があるからこそ、自分の興味や居住地域に応じて、多くの人が緑のボランティアとしての一歩を踏み出しています。

里山は駅から遠い場所にあることも多いですが、本日のプログラムでは駅からの無料送迎バスが用意されています。今回はJR八王子駅付近から、学生たちはそのバスに揺られて、ワクワクした表情で活動場所へと向かいました。

「草っぱら」が「実りの地」へ

今回の活動場所、八王子滝山里山保全地域の現場でも、継続の力が自然環境の変化を生んでいました。
「13年前、活動を始めたとき、ここは一面の草っぱらだったんです」

そう語るのは、地元で活動を先導してきたNPO法人 自然環境アカデミーの野村さん。里山はかつて、薪や炭を得るための生活の場でしたが、利用されなくなると一気に荒廃します。

ここ八王子滝山里山保全地域も、20〜30年ほど放置されていましたが、10年以上の歳月をかけて木を切り、沢の水をせき止めて引き込み、今では毎年お米が収穫できる田んぼとして見事に復元されました。

「田んぼは、水がある時期と乾く時期がある特殊な環境。だからこそ、ここにしか生息できない生き物や微生物が育まれるんです。人の手を入れ続けることで、生物多様性が守られるんですよ」

続いて竹林へ向かう道中には、イノシシから栗林を守るための電気柵も設置されており、野生動物との共生という現代の里山が抱えるリアルな課題も、学生たちは目の当たりにしました。

また、道中では切り株を見ながら「樹齢の数え方」についてのレクチャーも。「真ん中から数えていくんだよ」という説明に、学生たちは興味津々。

1年で9cm 樹木の生命力を実感

森の中に入ると、保全地域活動団体の方から里山の再生に欠かせない「萌芽更新(ほうがこうしん)」という仕組みについて説明がありました。

「昔は木を切ると、その切り株からまた新しい芽が出て育つというサイクルを繰り返していました。これが『萌芽更新』です。でも今、切られずに大きくなりすぎた大木は、病気になりやすく、切っても新しい芽を出す力が弱まってしまう。だからこそ、今こうして手を入れることが大切なんです」

この「萌芽更新のサイクル」を学んだ後、学生たちは実際に樹木の調査に取り掛かりました。

グループごとに分かれ、エノキ(榎)やコナラの木の周囲を計測。12年前に112cmだった木が、計測の結果215cmまで成長していることが分かると、学生たちからは驚きの声が。

「103cmも増えてる!ということは、1年で9cm近く太くなってるってこと?」

「数学得意だから計算できた!(笑)」

そんな楽しげなやり取りが飛び交います。

木は着実に、毎年毎年、私たちの目に見えない速さで大きくなっている。その生命力を数字で実感した彼らは、自分たちで計測しそれを記したカラフルな樹名板を木に取り付けました。知らなければただの風景となっていた木々が、学生たちと繋がった存在へと変わっていきます。

チームワークを生かして伐採体験

後半はいよいよ、樹木の伐採体験です。里山の循環サイクルを取り戻すため、あえて木を切り、新しい芽吹きを促す重要な作業です。
「木を倒すときは、みんなでロープを引っ張って方向を調整します。まるで運動会の綱引きみたい!」

安全を確保しながら、保全地域活動団体の方がチェーンソーで受け口を作ります。倒れる準備が整い、「せーの!」という合図が響くと、学生たちが一斉に全力でロープ引き。狙った方向へ「ドスン!」と大きな木がゆっくり倒れた瞬間、達成感にあふれる熱気に包まれました。

その後は各自、倒した木を細かく切り分ける作業に没頭。

「普段使わない肩の筋肉を使った」「ノコギリの刃が挟まって難しい」

苦戦しながらも、切った木の手触りや香りを直接感じる時間は、日常から切り離された、かけがえのない体験になったことでしょう。
活動の最後には「保全地域体験プログラム活動参加証明書」と、オリジナルの「手ぬぐい」のギフトが渡されました。

「また来たい」 芽生える当事者意識

今回、特に印象的だったのは、一人で参加する学生やリピーターも多かったことです。

「大学の環境問題の課題をきっかけに、自分で参加できる場所を探して見つけました」「趣味の盆栽で剪定が好きだから、本物の大きな木を扱ってみたかった」という大学生や、「お母さんに勧められて来たけれど、年輪の数え方を知ることができて良かった」とはにかむ中学生。

きっかけは様々ですが、参加した学生たちは一様に「また来たい」と口を揃えます。

「自分が樹名板をつけた木が来年どれくらい大きくなったか、また見に来たい」

そのひと言には、ボランティアという枠を超えた、里山に対する当事者意識の芽生えが感じられました。
こうした体験は、彼らの日常も変えていきます。

「普段は自然に触れる機会が少ないけれど、これからは街を歩くときも、ふと立ち止まって木を意識して見てしまいそう」

「人の手を入れ続けないと、大切な環境がなくなってしまうことがわかった。こうした活動の積み重ねの大切さを実感した」

そんな具体的な気づきこそが、明日からの景色を少しずつ彩り豊かなものにしていくはずです。

11年目のバトンを未来へ

保全地域体験プログラム「里山へGO!」は、2015年度から始まり、今年で11年目を迎えました。「この体験をきっかけに、継続的に活動するサポーターになったり、地元の団体に加入したりする人が増えているのが一番の成果」だと同社の宮谷優也さんは語ります。

もし、少しでも興味を持ったなら、気軽にその輪に飛び込んでみてください。

「最初は緊張したけれど、仲間と協力して木を倒したときの一体感は最高だった」「新しい知識が増えるのが純粋に楽しい」

そんな学生たちのリアルな感想の通りそこには教科書では学べない、生きた学びが待っています。

SDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」やゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」。それらは決して遠い国の言葉ではなく、八王子の里山で土に触れ、木に向き合う学生たちの手の中にありました。

100年後の東京に、豊かな緑を残すために。今日、学生たちが流した汗と笑顔は、確実に未来の土壌を豊かにし、次なる世代へとバトンを繋いでいます。

今回のプログラムのほかにも、都内には魅力的な緑のスポットやボランティア活動がたくさんあります。自分にぴったりの場所や活動を探すなら、「東京グリーンビズマップ」が便利。各地のボランティアイベント情報も随時更新されているので、ぜひチェックしてみてください。

また、東京グリーンビズのSNSでは、東京の自然の「今」や、さまざまなプロジェクトの最新情報を発信中。まずはフォローして、身近な緑の魅力に触れることから始めてみませんか。

「東京グリーンビズマップ」 https://www.tokyo-greenbizmap.metro.tokyo.lg.jp
「東京グリーンビス」公式SNS https://www.instagram.com/tokyogreenbiz/
「里山へGO!」公式サイト:https://satoyama.tokyo-biodiversity.metro.tokyo.lg.jp/ 
「東京都生物多様性推進センター」公式サイト:https://tokyo-biodiversity.metro.tokyo.lg.jp/


執筆 / フリーライター 小見山友子