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京都に和太鼓パフォーマンス専用劇場『DRUM TAO THEATER KYOTO』が誕生――地域経済の発展と伝統の継承を両立させるエンタメの新たな試み


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11 住み続けられるまちづくりを
京都に和太鼓パフォーマンス専用劇場『DRUM TAO THEATER KYOTO』が誕生――地域経済の発展と伝統の継承を両立させるエンタメの新たな試み

京都に新しいエンターテインメント施設『DRUM TAO THEATER KYOTO』が2026年4月9日(木)に誕生します。世界31カ国での公演・観客動員数1,000万人を誇る和太鼓パフォーマンス集団「DRUM TAO」の常設専用劇場として、ノンバーバルのパフォーマンスが連日展開されます。

京都の夜を彩る、世界を魅了した和太鼓パフォーマンス

『DRUM TAO THEATER KYOTO』は、京都駅に隣接し、地下道で直結する複合商業施設・京都アバンティの9階に誕生した和太鼓パフォーマンスの常設劇場です。海外でも人気が高く、世界500以上の都市で公演を展開してきた「DRUM TAO」の専用劇場で、インバウンド需要の高まりと、京都において夜に観光できる場所の不足を解消すべく誕生しました。
この事業は野村不動産とタオ・エンターテインメントが設立したNRE&TAOエンターテインメントパートナーズ合同会社を中心に、JTBコミュニケーションデザインと野村不動産コマースが連携して展開されています。4月9日の開業に先立ち、メディア向けに内覧会が行われました。

(写真右から)内覧会に登壇した鵜沼孝之氏(野村不動産コマース株式会社代表取締役社長)、コシノジュンコ氏(デザイナー)、藤高郁夫氏(DRUM TAO代表取締役社長)

公開された15分間のパフォーマンスでは、和太鼓のみならず、篠笛や三味線、箏といった多彩な日本の伝統楽器が組み合わされていました。体の内側にまで響くような太鼓の音とともに、巨大なビジョンには迫力ある映像が映し出されます。そこにコシノジュンコ氏が手がけた重厚な衣装が加わり、視覚的にも非常に密度の高いステージとなっていました。激しい動きと、ふとした瞬間に訪れる静寂。その対比が非常に美しく、息をのむような没入感のあるパフォーマンスが披露されました。

公演は各日二部公演となっており、時間帯によって変化する2つの演目を用意。19時開演の「響-HIBIKI-」は、観客と出演者が一体となるようなエネルギッシュなライブショー、21時開演の「夢-YUME-」は、幻想的な世界観に没入するナイトパフォーマンスステージです。公演時間は約40〜45分。コンパクトながら濃密な体験を提供し、終演後には周辺での食事や移動もしやすい時間設定となっています。

職人と共同制作、専用劇場ならではの特別な体験空間

このプロジェクトには、京都の観光課題のひとつ「夜の観光コンテンツの不足」を解消するという意図が込められています。これまで、京都の夜は寺社仏閣の拝観時間が終わってしまうと観光客を受け入れられるようなアクティビティが非常に少ない状況にありました。

同シアターの支配人を務める野村不動産コマースの鵜沼孝之代表取締役社長は、内覧会のあいさつの中で「京都における需給のバランスを考えると、夜のアクティビティに対する需要は旺盛であるにもかかわらず、それを受け止める供給が不足しているのが現状です。行政も『時間と場所の分散』を推進していますが、この劇場が夜の観光を担うことで、オーバーツーリズムの解消に向けた一つの役割を果たせると考えています」と京都の夜に新しい観光のスタイルを提案し、課題の解消を図っていると話しました。

さらに、「これからの街づくりは、単に古いものを壊して新しいものを作るのではなく、その土地が持つ歴史や文化に『体験価値』を積み上げていくことが重要だと考えています。京都の素晴らしい伝統技術や地元の職人の方々と深く連携し、和太鼓という文化を現代の消費サイクルに乗せていく。そうした循環を作ることで、伝統を次世代へとつなぐ持続可能なモデルを、この専用劇場から発信していきたい」とし、この試みをモデルケースとして、地域経済の循環や都市活力の持続に寄与していきたいと語りました。

シアターには、パフォーマンスを楽しむ客席空間だけでなく、随所にこだわりを詰め込んだ専用劇場ならではの特別な体験が用意されています。

ラウンジにはバーカウンターが設けられており、観劇前や終演後の時間にてまり寿司などのフードやドリンクを楽しむことができます。劇場の象徴的な存在となる巨大な装飾は、それぞれ京都の職人の手によるもの。巨大提灯は「小嶋商店」、巨大暖簾は「のれん中むら」との共同制作となっており、伝統や文化を体感できる空間となっています。紋をデザインしたのは「京源」紋章上繪師の波戸場承龍氏、波戸場耀鳳氏で、DRUM TAOの理念にも通ずる伝統と革新の融合を表現した意匠になっています。

劇場併設のルーフトップでは、ラウンジで購入したフードやドリンクを持ち込んでくつろぐことができます。ルーフトップからは京都タワーを臨むことができ、夜風にあたりながらくつろぎの時間を過ごすことができます。このほかギフトショップでは、公演オリジナルグッズのほか京都ならではの特産品とコラボレーションした商品も展開される予定となっています。

伝統を更新し未来につなぐ――本物だからこそ長く受け継がれる

トークセッションでは、TAOエンターテインメントの藤高郁夫代表取締役社長と、長年同集団の衣装デザインを手がけるデザイナーのコシノジュンコ氏が登壇しました。

2人の出会いは14年前。当初、和太鼓は「ふんどしに裸」という先入観を持っていたというコシノ氏ですが、実際のパフォーマンスを目にし「アスリートのようで面白い。足りないのは衣装だけ。衣装さえ変えればすごいことになる」と直感し、以来TAOの衣装を手掛け続けています。

制作された衣装は実に2,000着以上。コシノ氏は「デザインは形だけでなく、根本的に素材が良くないと。本物を着ているという感覚が演者のスイッチを入れる」と語り、今回の京都公演のために、西陣織を用いたオリジナルの生地を制作しました。

藤高社長は「コシノさんの作ってくださった衣装は、パフォーマンスで何度着用しても今なお現役で使える。重厚に見えて驚くほど軽い作りなのが素晴らしいんです」と、質の高いものづくりを絶賛。「いつか衣裳展をやりたいですね」と新たなアイデアも飛び出しました。

演出面においても、京都ならではの美意識が反映されています。藤高社長は「足し算ではなく引き算の演出。空白や和を意識し、これまでの歌舞伎や伝統芸能にはなかったような、新しい美の表現に挑戦しています」と話し、伝統を単なる保存対象とするのではなく、現代のエンターテインメントとして常にアップデートし続ける姿勢を示しました。

これを受けてコシノ氏は「TAOは本気で勝負している。だから私も本気で勝負する」と、情熱の高ぶりを言葉にします。プロフェッショナルたちの「本気」のぶつかり合いから生まれる圧巻のステージは、京都から世界へ向けた、新しい日本の文化発信の形となる予感がしました。

地域経済の発展と伝統文化の継承

内覧会後の囲み取材に応じた鵜沼社長は、「商業施設の上層階に、年間を通じて安定した動員ができる場所を作る。それによって、施設内の他のテナント様へもお客様が流れるような良い循環を生み出していきたいと考えています。京都駅直結という圧倒的なアクセシビリティを活かし、まずはこの施設を地域と共に育てていくことが目標です」と話し、この専用劇場がもたらす経済的な波及効果、いわゆる「シャワー効果」についても言及しました。

さらに、今後の展開については「ビジネスとして成り立つという実績をしっかり作ることができれば、東京や関東など、場所に関わらず積極的にアンテナを張っていきたい」と、京都を起点としたナイトエンターテインメントの普及に意欲を見せました。
インバウンド需要を主眼に置きつつも、地元住民との共生も忘れてはいません。開業から3カ月間、京都市民を対象とした同伴者1名が無料になるキャンペーンなどの施策を展開する予定とのことで、「まずは地元の方々に体験していただき、そこから生まれる高揚感や口コミが、また新たなお客様を呼ぶ。そのような健やかなサイクルを目指したい」と、地域に根ざした運営姿勢を強調します。

そして、「今回改めて京都という都市を知り、コラボレーションなどご一緒してみたい職人さんやお店などが数えきれないほどあると実感しました。そして、京都は決して古いままではなく、常に新しいものも発信し続けている場所であると感じています。私たちもその一員になれるよう頑張っていきたい」と語りました。

伝統文化を現代の消費サイクルに乗せ、地域経済と文化継承を両存させる。京都駅前に誕生した『DRUM TAO THEATER KYOTO』は、単なる劇場という枠を超え、これからの都市と文化が歩むべき持続可能な姿を提示しているのかもしれません。


執筆/ライター:宮崎新之