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研究で終わらせない防災へ。山梨県が動かす、自治体連携の“政策実装”モデル


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も 11 住み続けられるまちづくりを 17 パートナーシップで目標を達成しよう
研究で終わらせない防災へ。山梨県が動かす、自治体連携の“政策実装”モデル

社会課題の解決では、「必要性がある」ことと「実際に動く仕組みになる」ことの間に、大きな距離があることも少なくありません。防災もそのひとつです。課題認識や研究成果があっても、制度や訓練、現場オペレーションに落とし込むには多くの調整が必要です。

山梨県は7月2日、内閣府(防災担当)、観光庁、新潟県、長野県、静岡県とともに、「大規模災害時における外国人観光客の超広域避難具体化研究会」を立ち上げました。今回のポイントは、新しい議論を始めたこと以上に、これまでの研究成果を“実装フェーズ”へ進めた点にあります。

中央日本4県の研究成果を、国レベルの具体策へ

山梨県知事の長崎幸太郎氏によると、山梨県は2024年から、関係省庁の協力を得ながら新潟県、長野県、静岡県とともに「外国人観光客の超広域避難に関する研究会」を立ち上げ、対応策を検討してきました。そして2025年9月には研究成果を取りまとめています。今回の研究会は、その成果を踏まえた“次のステップ”として設けられたものです。

ここが重要です。社会課題への対応は、調査や提言で止まることが多い一方で、今回は「では、誰が、どこで、どう動くのか」という具体化へ踏み込んでいます。防災分野でよく言われるのは、マニュアルがあることと、実際に運用できることは別だということ。今回の研究会は、そのギャップを埋めようとする動きといえます。

参加主体の広さが、“実効性”をつくっていく

研究会の構成員には、山梨県、内閣府(防災担当)、観光庁、新潟県、長野県、静岡県が名を連ねています。さらに、富士山噴火時を想定したワーキンググループには、外務省、関係自治体、観光・交通・インフラ関係事業者、各国大使館なども参加。省庁、自治体、民間、海外関係者が同時に関わる構図になっています。

これは、超広域避難というテーマの難しさをそのまま表しています。災害時に外国人観光客を支援するには、地域内の避難誘導だけでは足りません。広域移動、交通調整、広報、国際対応、帰国支援まで視野に入れなければならず、どれか一つの組織だけでは対応しきれないからです。
だからこそ、はじめから多主体連携で設計する必要がある。今回の枠組みは、その前提にかなり忠実です。

モデルケースは富士河口湖町。訓練まで見据えた設計へ

今回のワーキンググループでは、富士山噴火を具体的な想定災害とし、富士河口湖町をモデルケースに据えています。そこでは、外国人観光客の帰国支援に向けた課題抽出、ルートや移送方法、広報手段の整理に加え、今後は訓練の企画・実施も進めていく方針が示されました。

内閣府の森久保司氏も、住民だけでなく観光客を含めた広域避難については未着手の課題が多いとしたうえで、関係機関が密に連携し、実効性のある検討と訓練にしていきたいと述べています。政策の質を高めるのは文書だけではなく、訓練や検証を通じた改善サイクルです。モデルケースを設けて検証するやり方は、他地域へ横展開するうえでも有効でしょう。

SDGsに必要なのは、理念を動かす“仕組み”

今回の取り組みは、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を非常に具体的な形で示しています。自治体単独でも、国単独でもなく、それぞれの役割を持ち寄って仕組みをつくる。さらにその成果を、ひとつの地域の話で終わらせず、全国に広がるモデルへ育てようとしている点にも意義があります。

加えて、災害に強い地域づくりという意味では目標11「住み続けられるまちづくりを」、観光の持続可能性という意味では目標8「働きがいも経済成長も」にも接続するテーマです。観光客が安心して訪れられる地域であることは、平時の観光振興にも直結します。防災への投資は、非常時のためだけではなく、地域の信頼と持続可能性を育てる基盤でもあるということです。

研究成果をまとめることは大事です。ただ、それ以上に難しく、価値があるのは、それを社会のオペレーションへ変えること。今回の山梨県の取り組みは、自治体発の知見を、国と現場を巻き込みながら実装していく一つのモデルとして注目されそうです。