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「離婚から100日間再婚禁止」規定が廃止!嫡出推定制度はどう変わるのか


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5 ジェンダー平等を実現しよう
「離婚から100日間再婚禁止」規定が廃止!嫡出推定制度はどう変わるのか

令和6年4月1日から「嫡出推定制度」の改正民法が施行されるのをご存知ですか?これによって「無戸籍者問題」の解消が見込めるといわれています。明治時代にできた嫡出推定制度が、令和のいま、改正によって何がどう変わるのか、理解を深めてみましょう。

法律上の親子関係決定のルール「嫡出推定」って?

婚姻関係にある男女の間に生まれた子を「嫡出子(ちゃくしゅつし)」といいます。一方で、結婚していない男女から生まれた子を「非嫡出子」といいます。どちらもあまり聞き慣れない言葉ですよね。

民法では、法律上の親子関係を早い段階で安定させ、子の利益を図るために「嫡出推定」という規定を設けています。夫婦が婚姻関係にある間に妻が懐胎した子は夫の子、すなわち嫡出子と推定する制度です。

わかりやすく言うと、「結婚している女性から生まれた子は、夫の子ですよね」と推定し、父子関係を確定するということです。DNA鑑定がなかった明治時代では、血縁上の母子関係は出産で明らかですが、父と子の関係は必ずしも明確ではありません。

「無国籍者問題」と「離婚後300日問題」の関係

「嫡出推定制度」の改正前は、婚姻成立日から200日を経過した日より後に生まれた子、または、離婚など婚姻の解消日から300日以内に生まれた子は、(前)夫との間の子どもであると「推定」することになっていました。

しかし世の中には、何らかの事情で出生届が出されないケースがあります。例えば、元夫から暴力などのDV被害を受けていた場合です。元夫の子どもとして扱われることを避けるため、母親が出生届をためらって提出しないことがあります。その結果、戸籍に記載されない子が存在する問題が起きています。それが「無国籍者問題」です。

戸籍がない=本籍地が存在しないため、住民票を取得できず、免許証やパスポートを持つことができません。選挙権も行使できませんし、遺産相続もできなくなります。これらは深刻な人権問題です。実は、出生届が出ていない理由の大半が「離婚後300日問題」だといわれています。

「嫡出推定制度」の改正ポイントとは?

そして今回、「嫡出推定制度」は、次のように改正されることになりました。

婚姻の成立した日から200日以内に生まれた子についても、夫の子と推定することとし、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子については、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫の子と推定する。

つまり、母が再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子として出生届けができるようになったのです。

嫡出否認の訴えについても改正されます。今までは、嫡出否認は夫側からのみで、妻側から夫と子の間の法律上の親子関係を争う手段はありませんでした。

今後は子や母からも嫡出否認の訴えを起こせるようになり、訴えを起こすことができる期間も1年から3年に伸長されます。
この改正法は原則として、施行日の令和6年4月1日以後に生まれる子に適用されます。しかし、改正法の施行前から存在している無国籍者の救済を図るため、令和6年4月1日から1年間に限り、それより前に生まれた子や母も嫡出否認の訴えを提起できることになっています。

また、男性は離婚後すぐに再婚できるのに対して、女性は離婚後100日間再婚することができませんでした。今回の民法改正で、その再婚禁止期間も撤廃されます。これは嫡出推定の制度改正によって、法律上、父親が重複する可能性がなくなるからです。

日本の「親権制度」にもようやく動きが

1979年公開の映画『クレイマー、クレイマー』は、ニューヨークのマンハッタンを舞台に、7歳のひとり息子・ビリーの親権を争う夫婦の姿を描いた名作です。
当時のアメリカは、離婚すると夫婦どちらか一方しか親権を持つことができない「単独親権」最後の時代でした。その後、離婚後も両親が共に子を育てる「共同親権」の概念が生まれ、現在はほぼすべての州で共同親権が定着しています。

ドイツやフランス、カナダ、オーストラリアなどの先進各国でも、離婚後は「単独親権」だけではなく「共同親権」を認めており、多くの先進各国で一般的なのは「共同親権」です。

日本はというと、親権を2人の親が共同で持つことができるのは婚姻中に限られ、離婚すると「単独親権」しか認められていない数少ない国のひとつです。しかし「共同親権」の導入が長年検討されてきており、今年1月にはついに民法改正の要綱案が示されました。

共同親権には、定期的な面会交流が必要であったり、教育方針などに対立が起こった場合スムーズな意思決定ができないこと、DVや虐待があった場合への懸念など、デメリットも考えられます。

そもそも「親権」とは、成年に達しない子の利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権利・義務のことです。120年以上前の民法で定められた「嫡出推定制度」も“子の利益を図るため”だったことを考えれば、いつの時代も一番大切なのは、やはり、子どもの最善の利益といえるでしょう。


執筆/フリーライター こだまゆき