プランティオ・芹澤CEOに聞く「アーバンファーミング」ロケ編 新内眞衣さんが「The Edible Park OTEMACHI by grow」を訪問!
パーソナリティの新内眞衣さんとともにSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。2月18日の放送では、前週に続いてプランティオ株式会社の代表取締役CEO、芹澤孝悦さんをゲストに招き、さらに「アーバンファーミング」を深掘りした。“座学”で学んだ前回の知識を携え、今回はスタジオを飛び出して東京・大手町にある「The Edible Park OTEMACHI by grow」を訪問。先進的でSDGsにもつながる取り組みに、新内さんは感心しっぱなしだった。
大手町でロケを敢行
前回は“座学”で「アーバンファーミング」の基本など知識を深めた新内さんだが、そのイメージをより明確にするべくロケへ出発。芹澤さんと、ニッポン放送のある東京・有楽町からほど近いオフィス街、大手町の「The Edible Park OTEMACHI by grow」に赴いた。同所は、プランティオ株式会社が展開するアグリテインメント(アグリカルチャー×エンターテインメント)プラットフォーム「grow」がプロデュースした都市農園で、実際の取り組みを見て、その本質を体験することとなった。
新内 「ということで、私は今『アーバンファーミング』を体験すべく、大手町ビル屋上のSky LABの中にありますシェアリング型のコミュニティIoT農園『The Edie Park OTEMACHI by grow』に来ています。ここは9階建てのビルで、今、入口の扉が目の前にあります。早速、ここから入ろうと思うのですが…何やら『QRコードをかざしてください』みたいな表示がありますね。芹澤さん、これはどうやって入るのでしょうか」
芹澤 「ここは、大手町・丸の内・有楽町エリアの方なら大体の方が使っている『丸の内ポイント』というアプリがありまして、それを持っている方なら誰でもQRコードを出してかざすと中に入れる屋上になっています」
新内 「あっ、これで鍵が開くってことですね」
芹澤 「はい、開きます」
アプリを使って入口の扉を開けた2人。新内さんは「うわっ、すごーい! 広々とした屋上ですね」と、その広がりのある空間に思わず声を上げた。
DX化で「アーバンファーミング」をより身近に
「持続可能な食と農をアグリテインメントな世界へ」をビジョンに、家庭のベランダやビルの屋上、マンションなどの屋内で「アーバンファーミング」を行うための「農」をDX化した次世代型アグリテインメントプラットフォーム「grow」を展開するプランティオ株式会社。この「The Edible Park OTEMACHI by grow」は、それを具現化したスペースで、「都会に新しいコモンズを」をコンセプトに、みんなで創る、食べられる農園としてオープンした。
新内 「まずは、入って左手に行ってみます。最初にあるモニターには何が映し出されているんですか」
芹澤 「これはクライメートクロックと言います。5年と170日って表示されていますが、これは地球規模であと1.5度、気温が上昇してしまうと気候危機が、人類が後戻りできなくなるっていうことをカウントダウンするカウンターです」
新内 「『SDGs』で取り扱っている問題ですね」
芹澤 「ですよね。カウントダウンを心に留めてもらってから中に入ってもらえると嬉しいです」
新内 「では、早速中に入っていきましょう」
芹澤 「ここでは、僕らの『grow』というアプリをダウンロードしていただきます。地図で近くの農園が探せるんですよ」
新内 「あっ、はい。現在位置情報を表示すれば、すぐそこに出てくる形ですね」
芹澤 「そうですね。で、アプリをダウンロードして、地図を見て、農園を探す」
新内 「はい」
芹澤 「で、その農園のフォローするQRコードをスキャンしていただくと、誰でも農園に入ることができます」
新内 「うわ、簡単!」
芹澤 「2メートル以内に入ると位置情報が反応して、解錠ボタンが出現します」
新内 「はい」
芹澤 「その解錠ボタンを押していただくと、しばらくして鍵が開きます」
新内 「あっ、開いた!」
芹澤 「すると、フィールドインしましたっていう通知が野菜栽培をしているみんなにいくっていう仕組みです」
新内 「そうなんですね。うわっ、すごい! 植物が植えられていて」
芹澤 「そうですね。『Edible Park』なので、この植栽は全部食べられるものなんです」
新内 「えぇっ!」
芹澤 「レモンとかカボスとかすだちとか」
新内 「すごい! こんなきれいに整理整頓されていて」
芹澤 「ちなみに、どこに何が植わっているのかっていうのも、このアプリを開いていただくと分かります」
新内 「あっ、ほんとだ!」
芹澤 「例えば小松菜は…」
新内 「これですかね!? 右側にある」
芹澤 「そうですね。あと129日で収穫期です…とか、そういうのが全部AIで見られる感じですね」
新内 「イチゴも!」
芹澤 「イチゴもあります」
新内 「スプラウトもある」
芹澤 「これらの野菜から『水やりしてください』といった通知がくる仕組みです」
新内 「水やりしてくださいみたいな通知がいったら、行かなきゃ、行かなきゃみたいな感じで」
芹澤 「そうですね」
芹澤さんによると、日本では区画貸しの農園が多く、世界的に見るとそれは異色。こうしたコモンズ(地域の共有財産を共同で管理・保守する共同体を指す言葉)としてシェアする形がスタンダードなのだという。
農園のシェアを可能にするIoTセンサー
芹澤 「(“コモンズ”を実現するには)誰が、どこで、どんなお手入れをしたのかが、みんなで共有できる仕組みが必要で、そのためにこのIoTセンサーが役に立つんです」
新内 「あっ、これ“座学”で勉強したものですね。今、目の前にあるこの白いものがIoTセンサーということですか」
芹澤 「はい、そうですね」
新内 「こんなにコンパクトなんですか」
芹澤 「コンパクトですよね」
新内 「センサーの部分は手のひらサイズで、土に埋める部分は…12、3センチぐらいですかね」
芹澤 「ですね。で、ここに土壌の温度計と水分計と外気温計と外湿度計、それと日照センサーとカメラ、イメージセンサーがついている。世界で初めて6つの機能が1 つになっているセンサーです」
新内 「すごいですね。これってスタートボタンとかがあるわけではなくて、もう刺したらそのまま」
芹澤 「そうです。BluetoothとWi-Fiが入っているので、Wi-Fiを拾ってデータを自動的に上げるっていう仕組みです」
新内 「なるほど」
芹澤 「ちょっと、この農園に切り替えますね。現段階の時刻の気温などの推移とセンサーからのデータをマッチングして、何をしなきゃいけないのかを割り出します。で、今出てきましたよね」
新内 「はい」
芹澤 「未読バッチ12って書いてありますよね。これは、この農園で今できるお手入れが12個あるってことなんですよ」
新内 「えっ、すごい!」
芹澤 「さらに進めると、次の計算のプロセスが走るので、何をどうしましょうっていうのがガイドで出ます。例えば、白菜がもう収穫期に入った…と。これは小玉の白菜なので、もう収穫できるんです」
新内 「本当だ。生い繁ってる」
芹澤 「そして、収穫方法を見るとアドバイス&ヒントというのが書いてあります。そして『収穫したよー』って写真を撮る。そうすると、収穫したことが全員に伝わる仕組みです」
新内 「すごい! すごいしか言えてなくて、すみません…」
芹澤 「日本中の皆さん、野菜を栽培している人たちの営みがフィー ドで見られるんですよ。農園ごとに、こういうコミュニティがあって、『今日、僕収穫しに行きますね』とか『じゃあ、ちょっと水やり、明日お願いできますか?』とか、そういうやりとりがこの中でできるんです。『ちょっと収穫期なんで採ってきました』とか『みんなで料理しましょう』とか」
新内 「なんてすてきな循環!」
芹澤 「そうですね。そして、最後は“食べるイベント”もあります。シェフとか飲食店のオーナー権限の方には、ここにプラスボタンが出るので、イベントを立ち上げることができます。そして『アーバンファーマー』がこの野菜を持っていって食べることができるんです」
新内 「すごーい」
芹澤 「当日、シェフの方々と一緒にここに来て、野菜を採って、お店に行くんですね。“育てて食べる”がシームレスにできるガイドシステムです」
新内 「もう、本当に『野菜を植えて、育てて、食べて、みんなで共有できる』っていうのが、これだけでできるんですね」
「アーバンファーミング」とSDGs
芹澤 「そうです。ちょっとSDGsっぽい話もすると、このガイドは種とりまでガイドしてくるんですよ」
新内 「種とりなんて私、調べたことないです」
芹澤 「なかなか調べないですよね。『シェアシード』っていいまして、“ペイイットフォワード”の精神で、ご利用者さんが育てた種を人にあげようっていう、そういう取り組みです。誰でも、これはとっていっていい。そのかわり、種まで育てて、また次の人に“ペイイットフォワード”してくださいっていう取り組みなんです」
新内 「素敵ですね。これって勝手に植えていいんですか? 空いているところに」
芹澤 「先程のコミュニティで『そろそろ春だけど、どうします?』『じゃあ、 ちょっと1回、農園に集まって、みんなで会議しようか』とか」
新内 「そういうコミュニケーションが生まれるんですね」
芹澤 「そうですね。まあ、コミュニティ上だけで完結してしまう時もありますけど」
新内 「協力し合って、この農園を守っているっていう感じなんですね」
芹澤 「はい。そして、種を紡ぐところまでやる。なぜなら、日本の種の自給率は10%未満といわれていまして」
新内 「そんなに低いんですね」
芹澤 「ライセンスは持っているけれど、種の量産は全部海外に振っているんですよ。なので、いざ何か有事があって輸入が止まった時に、野菜の種がないと困りますよね」
新内 「困りますね」
芹澤 「なので、僕らは中央集権的ではなく、各農園に種をマイクロに紡ぐことで、安心、安全を担保しているんです」
新内 「持続可能だ! これこそ『SDGs』ですね」
芹澤 「そうですね。もう1つだけ、持続可能なSDGs的なところのお話で言うと…これ、なんだと思いますか」
新内 「大きめの木の箱がありますけど」
芹澤 「そうですね。ちょっと中を開けてみましょうか」
新内 「いいんですか」
芹澤 「はい…これは堆肥なんです。皇居の近くの落ち葉をみんなで拾ってきて、ここに入れているんですよ。それと、ビルから出る生ゴミ、ここのご利用者さんのご家庭から出る生ゴミもご家庭で1次発酵…『コンポスティング』っていうんですけど、それをしていただいて、2次発酵、3次発酵をここでやっています。日本の肥料の自給率は0%なんです」
新内 「0%!」
芹澤 「この国は“農耕民族日本人”だったんですけど、もう今や種の自給率も、肥料の自給率も極めて低い」
新内 「はい」
芹澤 「じゃあ、何かあった時にどうやって生きていくんだという話なんです」
新内 「確かに」
芹澤 「僕らは楽しく、アクションしながら、実は持続可能な営みに直結している部分を描いている。僕らは楽しいことこそが最も持続可能だと思っているんです。先ほどのガイドシステムに従って野菜を育てる。そうすると、実はここで、どれくらいCO2削減に貢献しているかとかが分かる。あと、覚えていますか? 入口で『丸の内ポイントアプリ』をかざしましたよね」
新内 「はい」
芹澤 「そこにポイントも貯まっています」
新内 「一石何鳥なんですか!」
芹澤 「(笑)そのポイントは、街で使えます。ここだったらスターバックスさんとかがあるので、コーヒーと交換するとか。もう、ここまでいくとなんとなく分かると思うんですけど、実は僕らは農業だけの一択ではない、オルタナティブなフードシステムをつくっているんです」
新内 「オルタナティブ」
芹澤 「はい、代替可能な。世界では、これを『グリーンフードインフラ』っていうのですが、環境にも良いし、持続可能だし、安心安全な『食』と『農』に自分たちでも担保できるっていうアクセスをつくっているんです」
新内 「なるほど」
芹澤 「僕らがやり続けると、これがやがてインフラになる」
新内 「もう、素敵なサイクルすぎるんですけど。今、実際に何か体験できるものとかってありますか」
芹澤 「じゃあ、何か収穫してみましょうか」
新内 「いいんですか!?」
芹澤 「いいですよ。白菜が収穫期ですって出たので、白菜を収穫してみましょうか。白菜は、このあと結球するんですけど、これは結球をあまりしない小玉のタイプです。なので、端っこからちぎっちゃって大丈夫です」
新内 「えっ、端っこから」
芹澤 「はい、どうぞ」
新内 「収穫、初体験です!」
芹澤 「もうちょっと根元めからいった方がいいですよ。はい、そんな感じで」
新内 「これを…」
芹澤 「あっ、上手ですね! いいですねえ」
新内 「切れました!!」
芹澤 「で、これをくるくる巻いて…段々しなやかになってくる。食べ方としては、例えば浅漬けとか」
新内 「わぁ、おいしそう! いや、新鮮ですね。収穫って幼稚園ぐらいからやっていない気がするので、野菜の鮮度とかを肌で感じることができますし、体験に勝るものはないですね、やっぱり」
芹澤 「そうですね」
「アーバンファーミング」浸透へ“種をまく”
実際に体験して「アーバンファーミング」の喜び、醍醐味を知った新内さんは、最後に番組恒例の質問、「今私たち(リスナー)ができること=未来への提言」を芹澤さんに聞いた。
芹澤 「そもそも野菜を育てて食べるっていうこと自体、土と種さえあれば誰でもできるんですよね。育てる楽しさ、食べる喜びって、昔からいうんですけど、都会にいると結構、それを忘れてしまう。でも、本当にすぐできるアクションという意味では、もう是非、家のベランダとか、どこでもいいんですけど、種をまいてもらえればなと思います」
新内 「ありがとうございます。そうですね。それこそITの技術を使いながら、手伝ってもらいながら、今できることを私も探したいなと思います。ちなみに、こちらの農園を体験したいっていう方はどうしたらいいのでしょうか」
芹澤 「『The Edible Park OTEMACHI』もしくは『grow』で検索していただくと、アプリのダウンロードやサイトの案内があるので、どなたでも無料で来られます」
新内 「あっ、そうなんですね」
芹澤 「はい。誰でも『アーバンファーミング』はできます」
新内 「ありがとうございます! 皆さんも、是非チェックしてください。先週、今週のゲスト、プランティオ株式会社の芹澤孝悦さんでした。ありがとうございました!」
芹澤 「ありがとうございました!」
今回「アーバンファーミング」を座学や実際の現場で知り、体験した新内さんは「こういう体験できる仕組みがあるっていうことは、その一歩を踏み出しやすいし、体験に勝るものはないなって心の底から思いました。一人で踏み出すのって、なかなか勇気がいること。でも、コミュニティがあって、仲間がいて、こういう場があってっていうと、やっぱり踏み出しやすいですよね」と、新たな“学び”を得る機会の重要性に改めて気付かされた様子。さらに「普段、野菜たちが当たり前のように並んでいることが、実は当たり前ではないんだなっていうのを心底感じました。収穫するにしても、今は冬で寒いですし、夏は暑い。『食べるは生きる』っていいますけど、必要不可欠なものが当たり前に手に入っているっていうことをもう一回ちゃんと考え直して、生活も、この番組もやっていかなければと思いました。伝わっているか分からないですけど、個人的にはすごく熱がこもっています」と思いを込めてリスナーに語り掛けた。