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パイナップルがランドセルに!?SDGsな新世代ランドセルとは


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12 つくる責任つかう責任
パイナップルがランドセルに!?SDGsな新世代ランドセルとは

真新しいランドセルを背負って登校する、初々しい新一年生の姿を目にする季節ですね。実はこのランドセル、日本独自の文化だってことをご存知でしたか? 昔と比べると今のランドセルって格段にオシャレで機能的になっていますよね。
海外では、数年前にハリウッド女優が赤いランドセルを愛用していたことで注目されて以降、大人のファッションアイテムとして人気です。

そんなランドセルに昨今、新しい動きが出てきています。今回はSDGsの観点からみたランドセルの変化についてなど、ランドセルを深堀りしてみましょう。

ランドセルの歴史や語源って知ってる?

ランドセルのルーツは江戸時代末期、軍用としてオランダから入ってきた布製の背嚢(はいのう)、いわゆるバックパックとされています。オランダ語で「ransel(ランセル)」といい、それが訛って「ランドセル」といわれるようになりました。

通学用カバンとして使われはじめたのは明治時代で、学習院初等科がはじまりとされています。ただし本革ということもあって当時は高級品で、持てたのは都市部の富裕層のみでした。全国的にランドセルが普及したのは昭和30年以降になってからです。

ランドセルに代わる「通学用リュック」を無償配布する自治体が急増

「ラン活」という言葉まで生まれるほど、ランドセル市場は堅調に拡大しています。購入価格は年々上昇傾向にあり、20年前は3~4万円だった相場が、現在は6~7万円にもなっています!

そんななか、家計の負担軽減を目的に、ランドセルと同程度の機能や耐久性を備えた「通学用リュックサック」を新入生に向けて無償配布する自治体が増えてきています。例えば、富山県立山町、山形県村山市、長野県駒ヶ根市、岡山県備前市などが実施しています。

この「通学用リュックサック」は、アウトドアメーカーのモンベル製で、耐久性に優れた水濡れにも強いナイロン素材を使用しています。タブレットを収納する背面ポケット付きで、重量約930グラムと一般的な皮革製のランドセルに比べて軽量なのが特徴です。

画像出典:mont・bell「富山県立山町とモンベルがコラボ 通学用バックパック「わんパック」を開発

また「TATEYAMA TOWN」や「BIZEN CITY」など、それぞれ自治体のロゴ入りで、駒ヶ根市のリュックには「KOMAGANE CITY」の文字と共に、中央アルプス・宝剣岳と天竜川のデザインが施されています。このオリジナル感が、ちょっといいですよね。

なお立山町などでは、配布のリュックは使用強制するものではなく、各自購入した一般的なランドセルのどちらも使用してよいとしています。

漁網やパイナップルの葉の繊維を利用した「SDGsなランドセル」が登場

近年、SDGsな新世代ランドセルもいろいろ登場しています。鞄の生産量日本一の兵庫県豊岡市で作られているのは、廃棄された“漁網”を再生した生地で作られた「スクールリュックUMI」です。ほかの素材もリサイクル素材を使用していて、ランドセル全体の60%が再生素材で作られています。

CHIKYU株式会社の「地球NASAランドセル®WWFモデル」は、ペットボトルを再利用して出来た人口皮革「コードレ®」を本体生地としたランドセルです。子どもたちが再生素材を身近に感じることができ、売上の一部はWWFジャパンの環境保全活動の支援にもつながっています。

ランドセルトップブランドのセイバンからは今年2月、パイナップルの葉の繊維を加工して作ったランドセル「パイナセル」が登場しました。本革や人工皮革のランドセルにはない、個性的な素材と風合いが特徴のヴィーガンレザーランドセルとなっています。

ランドセルリメイクが大人気!ランドセルのサブスクもスタート

職人さんの手づくりランドセルが人気の老舗鞄メーカー土屋鞄では、2022年からランドセルのリメイクサービスが始まりました。6年間の思い出がつまったランドセルは、ミニチュアランドセルやペンケース、キーチャームなどに仕立て直しされ、家族で使える新たなアイテムとしてよみがえります。

画像出典:「土屋鞄」リリース

また、“ラン活”の新しいかたちとして、ランドセルのサブスクサービス「RandS(ランズ)」をスタートしたのがRANDS株式会社です。約250種類のランドセルから選び放題で、料金は2プランを用意。ランドセルをシェアすることで、大量生産や大量廃棄を減らし地球環境に役立てたいという想いがあります。

クローゼットの奥で眠っているランドセル、ありませんか?

化学メーカーのクラレでは、2004年から、使い終わったランドセルをアフガニスタンの子ども達に贈る「ランドセルは海を越えて」キャンペーンを実施しています。2023年までの累計で20万個以上のランドセルが海を渡っていったそうです。

その活動を紹介した写真家・内堀タケシさんの写真絵本「ランドセルは海を越えて」を読んでみましたが、丈夫なランドセルはカバンとしてだけでなく、現地では机の代わりにも使われていると知って涙がこみ上げてきました。紛争が続く国の子どもたちの未来を支えている日本の「ランドセル」。この機会に改めて、選び方や再利用の仕方を考えてみてはいかがでしょうか。


執筆/フリーライター こだまゆき