世界海洋デーにシェフと考える、過剰搾取される海洋資源への取り組み
この記事に該当する目標
6月8日は世界海洋デーです。2024年にFAOが発表した調査によると、1980年代後半以来、世界の水生動物の捕獲漁業生産量は年間8,600万トンから9,400万トンの間で変動しています。
2021年には、生物学的に持続可能な水準内の海洋漁業資源の割合は、2019年と比較して2.3%低い62.3%に減少しました。ただし、生産量を考慮すると、FAOが監視している資源からの2021年の漁獲の推定76.9%が生物学的に持続可能な資源からのものであり、これは世界平均の62.3%よりも大幅に高い数字となりました。過剰漁業が問題視されている中、漁業管理が資源の回復と漁獲の増加を促進することが必要です。
そこで今回は、2009年より海洋環境保護団体「エシック・オーシャン (Ethic Ocean)」と共に海洋資源保全に向けた活動を続けてきたルレ・エ・シャトーが、世界中のレストランのお客様ならびにシェフたちに、過剰搾取されている海洋資源の使用と提供をやめる必要性を呼びかけるキャンペーンを展開しました。日本からは「ジ・ウザテラス」が、世界海洋デーの6月8日から8月末にかけて、絶滅危惧種レッドリストの食材を使用しない期間限定メニューの販売しています。
今年の世界海洋デーは、「生物多様性のSOS」を訴える
何十年にもわたり、世界中で多くの努力がなされてきたものの、2024年依然としてこの課題は深刻なままです。この動きをさらに加速するべく、ルレ・エ・シャトーがエシック・オーシャンと共に「生物多様性に関するSOS(#SOSforbiodiversity)」キャンペーンをスタートしました。
世界最高峰と賞賛されるルレ・エ・シャトーのシェフ代表兼副会長を務めるマウロ・コラグレコ氏は、世界で初めてキッチンからプラスチックの使用を完全になくしたシェフとしても知られています。自身の消費習慣における問題を認識し、それを改善することに責任を感じており、生物多様性に関わるSOSのメッセージを発信し続けています。
ルレ・エ・シャトーでは取り組みの一環として、うなぎをはじめ、絶滅危惧種レッドリストに記載される全ての種をメニューから外すことを目標に掲げています。また、シェフたちには、特別メニューやディナーの企画を呼び掛けています。6月8日の世界海洋デーを祝した期間限定のベジタリアンメニューの提供や、課題認識を高めるために、料理教室やエコ認定を受けた養殖場の訪問など、生物多様性のSOSを訴えるさまざまなキャンペーンを世界各地で展開しています。
日本からは沖縄県読谷村に位置する「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」が、海洋資源の保全に取り組むため、絶滅危惧種レッドリスト・イエローリストに該当しない地元食材を使用した4品の特別なコースを期間限定で提供しています。低温調理した真鯛とだしで仕上げたリゾットやメインの沖縄県産養殖ヒラメのグリルに、自家農園で採れた無農薬野菜やハーブを使用しています。さらに、地元の玄米味噌や海藻類、サトウキビ酢など、地元の特産品を取り入れ、4品の鮮やかなプレートに、沖縄の豊かな自然と海への敬意、そして調和を表現しています。
そのほかにもウザテラスでは、資源と美しい海を守るため、生物多様性を維持する活動を続けています。減少の一途を辿るサンゴ礁の再生活動やウミガメの放流、ビーチクリーン活動など、地域と一体となった取り組みにより自然との調和を目指しています。
2009年にはルレ・エ・ シャトーがメニューからクロマグロを除外し、その結果大西洋と地中海におけるクロマグロ資源量の保護に貢献しました。このことからも、SDGs目標12である「つくる責任、つかう責任」について、シェフ及び地域が継続的に発信及び連携することが、海洋資源に対する保護活動において何より重要であると言えます。
世界海洋デーに発信をする生物多様性のSOSは、私たちにとっても身近な「食」について再度考える良いきっかけとなります。時間をかけて解決しなくてはいけない問題だからこそ、限りある豊かな海洋資源に向き合うシェフたちと共に消費者である私たちもこの課題があることをまず認識することが解決に向けた第一歩になるのではないでしょうか。