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サステナビリティ最前線:トッテナムから学ぶスポーツ界の新たな取り組み


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7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
サステナビリティ最前線:トッテナムから学ぶスポーツ界の新たな取り組み

近年スポーツ界でもサステナビリティへの取り組みが注目を集めています。特にサッカー界ではその動きが顕著です。日本財団と公益財団法人 日本プロサッカーリーグ(以下Jリーグ)の共催でサステナビリティカンファレンスが開催されました。
環境への取り組みで4年連続1位に輝いたイングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーをゲストに迎え、日本と海外のサッカークラブの環境への取り組みの違いや、他のスポーツ種目での取り組みについて議論が交わされました。

Jリーグ、30周年を機にサステナビリティ部を設立

Jリーグチェアマンの野々村芳和氏

Jリーグチェアマンの野々村芳和氏はJリーグがこれまで地域密着型の活動を展開してきたことを説明しました。2018年からは地域企業と連携し地域課題の解決に取り組んでいます。昨年の30周年を機にサステナビリティ部を設立。サッカーが当たり前に行われている風景を守る活動にも注力しているといいます。

日本財団の笹川順平専務理事は「HEROs Sportsmanship for the Future」の活動を紹介しました。HEROsはアスリートの社会貢献を推進する取り組みで、最近では能登半島地震の被災地で子どもたちを励ます活動が行われました。またHEROsは「HEROs PLEDGE」として、スポーツにおけるプラスチックごみの半減を目指しています。

トッテナム・ホットスパー、環境への包括的アプローチ

左からJリーグ執行役員でサステナビリティ領域担当の辻井隆行氏/トッテナム・ホットスパー Executive Directorのドナ・マリア・カレン氏

トッテナム・ホットスパーのChief Revenue Officerであるライアン・ノリス氏とExecutive Directorのドナ・マリア・カレン氏は、クラブの環境への取り組みについて詳しく説明しました。同クラブは国連の「Race to Zero」枠組みに署名し、2030年までにCO2排出量半減、2040年までにネットゼロを目指しています。

具体的には以下のような取り組みが紹介されました。

1.スタジアムとトレーニングセンターを100%再生可能エネルギーで運営
2.スタジアムでのプラスチック製ストローやカトラリーの使用禁止
3.選手やクラブメンバーへのサステナビリティ教育

セッションの後半ではJリーグ執行役員でサステナビリティ領域担当の辻井隆行氏がインタビュアーを務め、活発なQ&Aが展開されました。

コストに関する質問に対して、カレン氏は環境に配慮した運営への移行には高いコストがかかることを認めつつも、長期的な視点で環境への取り組みを進めることの重要性を説きました。
また日本のサッカー界へのアドバイスとして、カレン氏は組織のトップが率先して行動することと、具体的な目標設定の重要性を挙げました。これらの助言は、日本のスポーツ組織にとって貴重な指針となるでしょう。

サステナビリティとビジネスの融合を語る

トッテナム・ホットスパーのダニエル・レヴィ会長とアンジェ・ポステコグルー監督が、Jリーグ特任理事の夫馬賢治氏の進行のもと、サステナビリティとビジネスの関係について語りました。

レヴィ会長は最もグリーンなクラブを目指す姿勢を強調し、環境への取り組みがクラブの社会的責任を果たすだけでなく、ビジネス面でも大きな利点があると説明しました。具体的には、環境配慮型の施策が質の高いスポンサーの獲得につながり、グローバルなリーチを拡大する機会になっているとのこと。
またポステコグルー監督は、サッカーが社会で重要な役割を果たし、人々を結びつける力があると強調しました。

「正しいことをしたかった」というレヴィ会長の言葉が、クラブの根本的な姿勢を表しています。この事例は、環境への取り組みが社会的責任とビジネス成功の両立につながることを示し、スポーツ界全体のサステナビリティ推進に示唆を与えています。

日本のプロスポーツチームのサステナビリティへの取り組み

元競泳日本代表でSDGs in Sports代表の井本直歩子氏

元競泳日本代表でSDGs in Sports代表の井本直歩子氏は、日本のスポーツ界でのサステナビリティ事例を紹介。阪神タイガースは球場に太陽光パネルを設置し、ナイター照明をLED化。西武ライオンズは2024年7月からベルーナドームでCO2排出量ゼロを目指しています。また、バスケットボール、バレーボール、スキーなどでも環境対策が進んでいます。

またJリーグ執行役員でサステナビリティ担当の辻井隆行氏は、サッカーが気候変動の影響を強く受けることを指摘。2018年以降に気候変動や熱中症リスクで試合中止が増加し、選手のパフォーマンスにも悪影響があります。これに対応するため、Jリーグは昨年サステナビリティ部を設立。2023年には全公式戦を再生可能エネルギーで運営するなどの成果を上げています。今後もサステナビリティを意識した活動を展開する方針です。

トッテナムの未来ビジョン:サッカーを超えたエンターテインメント

トッテナム・ホットスパーのChief Revenue Officerであるライアン・ノリス氏

トッテナム・ホットスパーのChief Revenue Officerであるライアン・ノリス氏と公益社団法人日本プロサッカーリーグ「Jリーグ」特任理事 夫馬賢治氏がスポーツにおけるサステナビリティとビジネスの融合について語りました。

ノリス氏はサステナビリティがブランドの重要な一部であり、ファンのニーズに応えるものだと強調。クラブは環境問題に取り組むパートナーを求め、具体的な目標設定と成果の公表を重視しています。さらにサッカー以外のエンターテインメント要素を取り入れ、ファンベースの拡大を目指すという今後の展望も示されました。

ノリス氏は常にイノベーションを続け、型にはまらない考え方を追求するというクラブの姿勢を強調し、サステナビリティとビジネスの両立に向けた取り組みを続けていく意向を示しました。

スポーツ界全体でサステナビリティへの意識が高まる

今回のカンファレンスを通じて日本のスポーツ界全体でサステナビリティへの取り組みが加速していることが明らかになりました。特にサッカー界では、Jリーグを中心に具体的な行動が始まっています。
気候変動がスポーツ界にも大きな影響を与える中、トッテナム・ホットスパーの包括的なアプローチは日本のチームにとって貴重な指針となるでしょう。

皆さんも応援しているスポーツチームのサステナビリティへの取り組みを調べてみてはいかがでしょうか。私たちファンの意識と行動がスポーツ界全体のサステナビリティ推進の大きな力となるはずです。

アイキャッチ画像 左からトッテナム・ホットスパーのダニエル・レヴィ会長/アンジェ・ポステコグルー監督/Jリーグ特任理事の夫馬賢治氏


執筆/Shinichi Tsukada