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10月は”中性脂肪月間”!食欲の秋〜飲み会続きの冬に知りたい中性脂肪撃退法と万能成分”フィッシュオイル”


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を
10月は”中性脂肪月間”!食欲の秋〜飲み会続きの冬に知りたい中性脂肪撃退法と万能成分”フィッシュオイル”

食欲の秋と言われるこの時期は旬の味覚が多く、ついつい食べ過ぎてしまいがち。また年末が近づくにつれてイベントなども多くなり、脂っこい食事やアルコールの摂取量も増えてきます。

ここで気になるのが中性脂肪。中性脂肪は、基準値を上回ると肥満や生活習慣病、動脈硬化といった危険な症状を引き起こす可能性があります。ところが反対に基準値を大きく下回ってしまってもエネルギー不足に陥り疲れやすくなるうえ、体力の回復が遅くなる原因にもなるので、とにかく減らせばいいというわけでもありません。

そこで今回は、静岡県立総合病院リサーチサポートセンターの田中清先生に、これからの時期気になる中性脂肪のメカニズムに加え、増えてしまった数値を正常値に戻すための対策や知っておきたい栄養素「フィッシュオイル」について教えていただきました。

これからの時期は特に注意!ケーキなどの甘いものやアルコールが中性脂肪を増やす原因に

中性脂肪と聞くと、肥満やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病のイメージが強く、健康に悪影響を与えると思われる方もいるでしょう。実際に中性脂肪は、数値が高過ぎると生活習慣病のリスクにつながり動脈硬化を促進する恐れがあり危険です。しかし一方で体を動かすエネルギー源としても重要な役割を担っており、適切な数値を維持することで人が健康的に生きていくために欠かせない成分でもあります。 
では、そんな中性脂肪の数値を適切に維持するためにはどうすればよいのでしょうか。

中性脂肪が増える主な原因は、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣にありますが、その中でも見直したいのが食事の内容。ご飯やパン、麺類、お菓子などの炭水化物が中心の食事を摂ると食後に血糖値が急上昇します。この時、血糖値を下げるために膵臓からインスリンというホルモンが多量に分泌されます。インスリンの働きによって血糖値は下がりますが、多量にインスリンが分泌されると、インスリンは中性脂肪の合成を促進するため、中性脂肪がどんどん増えてしまいます。なかでも数値を上昇させる二大要因と言われているのが甘いものとアルコール。砂糖(ショ糖)はブドウ糖と果糖が結合した二糖類。お米やパンなどのデンプン(多糖類)と比べ吸収が非常に速いため、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)がより早く上昇します。また、中性脂肪はアルコールを摂取することによって高くなるという性質を持っています。これは肝臓でアルコールを分解するときに、中性脂肪の合成を促す作用が起こることが原因といわれています。アルコールはそれ自体が高エネルギーであることはもちろん、酔うと食欲を抑えにくくなり過食へつながりやすいことも注意ポイントです。

また、旬の食材の一つであるフルーツにも実は中性脂肪を高めるリスクがあります。栄養素が高いことから、果物を野菜と同じようなものと考え、積極的に摂り入れている人は多いです。しかし緑色の野菜やトマトはエネルギーが低く、たくさん食べても血糖値や中性脂肪を上昇させることがほとんど無い一方、果糖(単糖)により甘みを出している果物は、吸収が非常に早く血糖値や中性脂肪を上昇させる働きがあります。フルーツの栄養素が高いことは事実ですが、食べ過ぎには注意が必要です。

そしてもう一つ注意したいのは、「揚げ物や脂っこい食事さえ避ければ中性脂肪が下がる」といった思い込み。もちろん脂っこい食事は健康に良くないですが、脂質を減らしただけでは残念ながら中性脂肪は下がりません。中性脂肪を上げる一番の理由は、脂質そのものではなく、炭水化物、アルコール、カロリーの過剰摂取です。まずは摂取量を見直すことが一番大切といえます。

中性脂肪を増やさないために!注目の「フィッシュオイル」

中性脂肪を減らす為には、食生活の見直しや定期的な運動によって体内の筋肉量を増やして基礎代謝量を上げるなど、体内に余分なエネルギー源を溜め込まないことが必要になります。しかし、仕事や付き合いなどもあり、生活習慣を大きく見直すことが難しい人もいるかもしれません。

そこでおすすめしたいのが「フィッシュオイル」。フィッシュオイルは、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)の脂肪酸が主成分となる青魚から抽出した油のことで、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧の低下や中性脂肪を減らすなどの作用を持ち、生活習慣病予防に効果があると言われているものです。イワシ、アジ、サンマ、サバ、マグロなどの青魚に多く含まれるこの成分は、体内で生成できないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。フィッシュオイルに含まれるEPAは血液をサラサラにするだけでなく、血中の中性脂肪の上昇を抑える効果があります。さらに、EPAは脂質の代謝に作用して、脂肪を燃焼しやすい体質に変えることができます。

フィッシュオイルを魚から直接摂り入れる場合は、「1日にサバ缶1缶」が目安といわれることが多いですが、そのほかスーパーやコンビニで手軽に購入できる食品でオススメなのが「しめ鯖」。しめ鯖は、加熱をしていないのでオメガ3の酸化や損失が無いため効率的に摂取ができます。加えて酢飯のお酢によって、たんぱく質の吸収をしやすくなるので、高齢者の方でも胃腸に負担をかけずに摂取できおすすめです。魚や油を必要量摂ることが難しかったり、そもそも苦手だという方は、手軽に摂れるサプリメントで補うことも一つの方法です。

中性脂肪を抑えるだけじゃない!冬季うつの抑制や脳機能の活性などの嬉しい効果も

中性脂肪の増加による動脈硬化や脂質異常といった生活習慣病の改善に役立つ成分として、特定保健用食品や機能性表示食品にも利用されているフィッシュオイルですが、実は中性脂肪の上昇を抑えるだけでなく、日照時間の短さが原因のひとつにある「冬季うつ」や、脳機能の活性にも効果があります。

冬になると気分が落ち込む、外に出る気が起きない、なかなか眠気が覚めない、こういった不調に心当たりはないでしょうか。この症状は季節性感情障害(冬季うつ)と呼ばれる、季節性のうつ症状の可能性が高いです。気分の落ち込みといった部分では一般的なうつ症状と違いはありませんが、一般的なうつ症状の場合は、食欲低下、睡眠不足、体重減少などの傾向がみられる一方、「冬季うつ」は、反対に食欲向上、過眠、体重増加の傾向があります。
冬季うつの原因は、秋冬の日照時間の短さが関係しているといわれています。精神を安定させる働きのある脳神経伝達物質「セロトニン」が不足すると、感情のコントロールがとりにくくなったり、不安定になったりして気分が落ち込みやすくなります。そのセロトニンの合成に関わっているのがビタミンD。ビタミンDは、食物からの摂取だけでなく、皮膚から紫外線を浴びることでも合成されます。その為、日照時間が長い夏は十分に合成できる反面、日照時間が短い冬はビタミンDが不足しがちになり、併せてセロトニンレベルも低下してしまいます。また、体内で合成されたセロトニンは、細胞膜のセロトニン受容体に合致することで初めて作用します。この細胞膜が硬くなってしまうと、セロトニンとうまく結合ができず、十分な作用が難しいといわれています。フィッシュオイルに含まれるDHAという有効成分には細胞膜を柔軟にする働きがあり、これにより流動性が高まり、セロトニンを増やすことが期待できます。

さらに、フィッシュオイルに含まれるDHAやEPAは、「脳神経の再生」「神経の保護」「情報伝達の潤滑油」「脳細胞の活性化」など認知機能を維持する効果も期待されています。赤血球中のヘモグロビンは、脳内に酸素を運ぶ役割を担っており、このオキシヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン)の量はEPA・DHA濃度が上昇することで増加するため、EPAとDHAを摂取することで脳細胞の活性化に繋がります。
特に海馬のDHA量が頭の良さに関わっているといわれており、脳の栄養素とも呼ばれています。 脳には、有害なものが外部から入らないようにするフィルターのようなものがあり、脳内に入れる成分と入れない成分を選別しています。 DHAは通過することができる成分で、神経伝達物質の量を増やし、情報伝達の能力を向上させる働きがあります。神経伝達や情報伝達をスムーズにすることで「学習能力」「記憶力」「判断力」「集中力」が向上すると考えられています。ヘモグロビンそのものが増加する、というよりも、もともと持っているヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの量が増えた、という報告があります。

フィッシュオイルの存在は多くの人にとってまだあまり身近なものではないかもしれませんが、こうして見ていくと非常に魅力的なものに感じます。
(ただし注意点として、これはどんな栄養素にも当てはまりますが、効果を期待してフィッシュオイルを摂りすぎてしまうと、「血液がサラサラになりすぎて出血が止まらなくなる」など、体に悪影響を与えてしまう可能性がありますのであくまでも適切な量を摂るようにしましょう。)

私たち一人一人が健康的な食生活を意識し、生活習慣病などの原因に直接アプローチすることは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に直接的に貢献します。
また今回の場合は、フィッシュオイルで青魚を積極的に摂り入れると、結果的に肉の消費を減らすことにつながります。これにより、温室効果ガス排出、土地や水の使用など、畜産業の環境負荷を減少させることができ、間接的に気候変動への対策=目標13「気候変動に具体的な対策を」にもつながるといえるかもしれません。

10月は最も血中中性脂肪が高まるという研究結果が出ていることも踏まえ、一般社団法人中性脂肪学会が「中性脂肪月間」と定め、健康を促進する活動を行っている期間です。この機会に中性脂肪について、そしてフィッシュオイルについても少し意識してみてくださいね。

・監修者

静岡県立総合病院リサーチサポートセンター 臨床研究部長
田中清(たなか きよし)氏

フリーライター・Yuki Katagiri