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古着の多様な可能性を提案!環境に優しい「渋谷ファッションウイーク」開催


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12 つくる責任つかう責任
古着の多様な可能性を提案!環境に優しい「渋谷ファッションウイーク」開催

街をランウェイに見立てた路上ファッションショー「SHIBUYA RUNWAY」をはじめとした「渋谷ファッションウイーク 2024 秋」が10月19 日(土)〜10月20日(日)に開催されました。今回、22回目を迎えたこちらのイベントは「DIVERSE SUSTAINABILITY(多様なサステナビリティ)」をコンセプトに、多様性や循環型社会について考えるきっかけを渋谷から発信。誰にとっても身近な存在のファッションを通じ、環境に優しい社会を実現していくために私たちができることを考える場となりました。

1年以内に60%以上の衣料品が捨てられている?ファッション業界の課題とは

環境省が発表しているデータによると、ファッション業界における温室効果ガス(GHG)排出量は合計12億トンのCO2に相当。どのくらい多いのかというと、国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量を排出しているそうです。そんな中、国内のアパレル市場規模はバブル期に比べ小さくなっているものの、衣料品の供給量は20億点から40億点へ倍増している状況。さらに、1年で供給される衣服は約82万トンで、その9割に当たる量が1年で手放されています。この手放された衣服の2/3(60%以上)は廃棄されており、リユース・リサイクルされずに焼却・埋め立てされているのです。
このデータが示すとおり、ファッションは環境にとても多くの負荷を与えてしまっています。こうした現状を踏まえて、「渋谷ファッションウイーク 2024 秋」では様々な角度からファッションの可能性についてメッセージを届けました。

著名人の私物に新しい価値を与える「THE VINTAGE」

イベントの代名詞でもある「SHIBUYA RUNWAY」ではふたつのコンテンツを展開。
まず、「THE VINTAGE」では、“想いをつなぐ・継承”をテーマに、著名人が愛用していた私物を、スタイリスト山崎 早苗さんがその人のイメージに合わせてコーディネート。70〜90年代のヴィンテージスタイルを取り入れたスタイリングを披露しました。

まず、2022年3月に開催された渋谷ファッションウイークのモデルとしてメインビジュアルを務めた水曜日のカンパネラの詩羽さん。彼女の私物からよみがえったスタイルは、90年代のトレンドを組み合わせたファッションとなりました。

次に、古着が大好きだと公言している「さらば青春の光」の森田哲矢さん。明るいイエローのTシャツがとても印象的で、オシャレ芸人として有名なだけあり、シンプルながらもインパクトのあるコーディネートを見ることが出来ました。

最後にタレントのMEGUMIさんのアイテムは、グリーンのタイトスカートに黄色のタイツが芯のある女性らしくご本人の特徴を表現していました。白いレースワンピースもブーツと合わせることでクールな印象がMEGUMIさんらしいスタイリングでした。

これだけではなく、連携企画として西武渋谷店に出現した「THE POP-UP」では、著名人が実際に使用していたアイテムを販売。同じエリアには「STUDIO SUPER CHEESE」が「東急プラザ原宿 ハラカド」から出張出店し、プロカメラマンによる撮影やお酒も楽しめるスペースが登場しました。

この企画とコラボレーションをしたアートディレクター千原徹也さんは、「THE POP-UPの初日は開店前から行列で朝からものすごい争奪戦でした。ぜひ多くの人に著名人の方が撮影やコンサートで使ったものを身につけて、新しいファッションにトライしてほしい」と語っていました。

左・実行委員長 大西 賢治氏/ 中央・千原 徹也氏/ 右・株式会社FASHION X 代表取締役 畠山 怜之氏

駅員さんの制服が最新のファッションに蘇る「THE INCUBATION」

イベントのもう一つの目玉「THE INCUBATION」では、16年ぶりの制服リニューアルを控えた東急電鉄株式会社の制服のシャツを、服飾学校の学生たちがリメイクし、独自のアイディアを表現することに挑戦。地球資源の有効活用も実現するこのショーでは、若いクリエーターたちが直前まで切磋琢磨し本番を迎えました。

東京モード学園 内田 未空さん「Be yourselves」

自分らしさはひとつではないをコンセプトに進化し続ける私たちを表現しています。自分の中に存在する様々な自分自身を受け入れることを後押しするルックです。

バンタンデザイン研究所 西 結衣花さん「17歳」

17歳の頃の冨永 愛さん(モデル)の制服スタイルからインスパイアされたデザイン。着崩しやルーズソックスが女子高生らしさを表しています。企業の制服から高校生の制服へ生まれ変わる循環がここにありました。

東京モード学園 漆原 幹人さん「Sky」

駅員さんの青いシャツから空をイメージしたロングコートをリメイク。ふわりと揺れるチュールがまるで空をまとっているかのような印象です。人と自然との融合も表現された一着でした。

これらはランウェイの一部ですが、総勢15名の学生による迫力のショーに集まってきた観客たちからは盛大な拍手が起こりました。

着ないけど捨てられない服を回収する「株式会社FASHION X」の取り組み

今回のショーについて「THE INCUBATION」のパートナーである株式会社FASHION Xの代表取締役 畠山 怜之さんは、「仕事柄、普段から服飾学校と関わることが多いですが、複数の学校からデザイナーが集まって、それぞれのアイディアを持ち寄ることで多種多様な表現が生まれてきたことが嬉しかったです。」と話していました。
また今後の活動としては、「眠った価値を呼び覚ます」をミッションに古着のリメイク・アップサイクルに取り組む企業として、古着の回収量を増やし、新しく価値を生み出せるものをどんどん世の中に送り出していきたいとのことでした。株式会社FASHION Xでは、各地に設置されている回収BOXにより、古着を無料で回収しています。回収したものは、販売をしたり、クリエーターの方々へ無償で提供し、リメイク作品を製作したりしています。子供服は児童養護施設への寄付も行っているそうです。

一度使われた服やアクセサリーなどからサステナビリティを実現した「渋谷ファッションウイーク 2024 秋」。すでにアパレル大手のUNIQLO・GU、ZARAなどでは古着の回収をしていますが、まだ当たり前になっていないのが現状です。生産者側が作り過ぎないというのももちろん必要ですが、消費者側も計画的な購入や保管の仕方、リユース・リメイクといった手放し方を選ぶことができます。このような行動が自然環境に与える悪い影響をできるかぎり抑え、衣類の原材料となる化学物質やごみを減らしていくことに繋がるでしょう。自分で選択できるからこそ、SDGs目標12の「つくる責任、つかう責任」を意識して、ファッション業界の抱える課題に対して小さなことから次の行動を変えてみてはいかがでしょうか。


執筆/フリーライター 北原沙季