Getty ImagesとGLAADが提携して「トランスジェンダーガイドライン」発表
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近年では、プライドパレードなどを通して、LGBTQ+の人々の声を上げる活動が活発し、2015年には、渋谷区で全国初となる同性パートナーシップ条例が可決されたことなどにより、日本でも広くLGBTQ+の存在が認知されてきました。
ゲッティイメージズ(Getty Images)の検索データによると、LGBTQ+を描いたビジュアルの検索数は、「トランスジェンダー」が129%増、「クィア」が212%増、「ノンバイナリー」が334%増と、ビジュアルの多様化も進んでいることが分かります。
日本でもLGBTQ+コミュニティに対する理解が深まってきていますが、欧米諸国に比べると法の整備も遅れていて、まだまだトランスジェンダーが住みやすい環境が整っているとは言い切れないのが現状です。
なかなか目に見えてこないLGBTQ+の存在をどのように可視化するべきなのか―。そこで、世界最大級のデジタルコンテンツカンパニーであるゲッティイメージズとGLAAD(※)が提携して、「敬意を持ってトランスジェンダーの人々の真の姿とインターセクショナル(交差的)な多様性を描く写真や映像を作成するため」のガイドライン『トランスジェンダーの人々の描写』を発表しました。
※GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation)とは
アメリカ国内において、メディアにおけるLGBTQの人々のポジティブな描写を推奨する活動を行っている非政府組織。1990年からは 公平で正確かつ広く影響を与えたメディアを讃えることを目的とした 「GLAADメディア賞」を創設するなど、LGBTQコミュニティにおいて世界をリードし続けています。
このガイドラインでは、トランスジェンダーやノンバイナリーといった用語の定義を記載しつつ、ビジュアル撮影のコンセプトを決めるときに“リアリティ”に沿っているかを確認する方法や、使うべきでない表現を紹介しています。
例えば、トランスジェンダーのコミュニティをビジュアル撮影する際に、トランスジェンダーであるという側面のみが強くビジュアルで出ているものは、トランスジェンダーの人々の真の姿を現しているとは言えません。ジェンダー・アイデンティティはあくまでその人の一面として、家族や友人、職業など、日常生活においてトランスジェンダーの人々の多様性を十分に示すことが重要だとしています。
また、そのビジュアルには民族、年齢、階級、宗教、能力、体のサイズ、文化、性的指向など「インターセクショナル」(交差的)なアイデンティティをもつトランスジェンダーの人々が描かれているか、という点も重要なチェックポイント。GLAADのトランスジェンダー・レプリゼンテーション・ディレクターであるニック・アダムスは、現在存在するビジュアルは、そういった多様性が十分に反映されておらず、ステレオタイプやシンボルに強く寄ってしまっていると指摘しています。
今回の取り組みについて、ゲッティイメージズのガイ・メリルは、「多くの人が差別や偏見に直面しているLGBTQ+コミュニティでは、リアリティのあるイメージでつながりを持つことが重要です」としたうえで、「ゲッティイメージズが行なっているVisual GPSの調査では、日本の調査対象のうち73%が、『2つ以上の性別が存在することを受け入れるべきだ』と答えており、世界全体の調査結果(67%)よりも高い結果となっています。広告や商業イメージの世界では、トランスジェンダーの人々はほとんど存在しません。 我々はその空白を一緒に埋めたいと思っています」と語っています。
ゲッティイメージズやiStock (ゲッティイメージズが運営しているストックフォトサービス)にビジュアルを提供しているフォトグラファーが、このガイドラインに沿って適切なビジュアルを作ることで、トランスジェンダーの人々のリアルな姿がストックフォトを通して描かれることになります。
ゲッティイメージズは、今後もビジュアルを通してLGBTQ+に対するステレオタイプを打破していく取り組みを展開していくとのこと。東京レインボープライド2021を目前に、”見えない”多様性の描き方について考えてみませんか。